小動物飼育装置(MHU)を使用した健康長寿研究支援プラットフォーム

更新 2024年11月25日

なぜ宇宙で実験を行うのか?

小動物の宇宙飼育を通じたヒトの健康長寿に関連する研究への貢献

超高齢社会である我が国は、2025年には全人口に対する高齢者の割合が30%を超えることが予測されており、健康長寿への取組みは我が国にとって重要な施策の一つです。宇宙環境は、骨量減少、筋萎縮、内耳機能(バランス感覚)低下、免疫機能低下など、地上の高齢者や寝たきりの状態に類似した生物影響の加速的な変化を提供できると考えられるため、「きぼう」ではこれまで様々なモデル生物を用いて、地上の加齢様現象の機序解明や対策法確立等を目的として、微小重力による生体への影響に関する研究が行われてきました。

2016年度から開始した「きぼう」でのマウス飼育ミッションは、世界初の遺伝子ノックアウトマウス、中枢神経系の炎症疾患モデルマウスなどを含め、これまでマウス長期飼育後の全匹生存帰還に連続して成功すると共に、加齢様疾患などの対策法の検証や疾患関連因子の同定の研究推進など、健康長寿研究支援プラットフォームの中核としての有効性を示しています。

引き続きヒトへの還元を第一の目標と掲げ、JAXAだけが有する可変重力下でのマウス飼育環境等を最大限に活用するとともに、より先進的・省リソースでのミッション実施に向けた向上を図り、健康長寿研究支援プラットフォームとしての研究成果の蓄積を目指します。

研究アイデアから宇宙ミッションへ

本プラットフォームを活用し、マウス飼育ミッションを中心としたJAXAの生命科学・宇宙医学実験技術などによる個別化予防、先制医療などの次世代医療研究を推進し、地上での健康維持や高齢化社会への対応などの健康長寿社会形成に貢献します。これまで実施されてきた宇宙ミッションテーマは研究公募により選定されています。

本プラットフォームにおいては、民間企業による利用創出を目指しつつ、引き続き、公募テーマと国の研究機関などとの連携による利用に100%を割り当てるものとし、民間企業などからの利用要求が生じたときには民間利用へリソースを割り当てる予定です。

サービス紹介

軌道上でマウス等を長期(約30日程度)飼育し、生きたまま回収することができます。飼育ケージはマウスのストレス軽減のため個室となっており、微小重力環境下と人工重力による1g環境下でそれぞれ6匹のマウスを飼育して、ビデオカメラにより地上でライブ観察ができます。重力以外は同じ環境なので、純粋に重力の差に着目した観察が可能です。

JAXAの装置は、以下のような他国にない特徴を有しています
  1. 軌道上の微小重力環境と遠心機による人工重力環境の両方で飼育でき、両群の比較により重力の影響を詳細に調べることが可能です(ISSでの哺乳類の人工重力実験は世界初)。なお、人工重力区画は回転を停止することにより微小重力区としても利用可能です。
  2. 帰還した生存マウスは、研究者(専門家)による科学的な解析や状態の回復過程の観察等が可能です。
  3. 「きぼう」船内でのマウスは個別ケージ内での飼育により、雌雄や系統に大きな制約がありません。またモニタによりマウスの状態や行動が詳細に観察できます。

サービス紹介パンフレット

タイトル サイズ ID
"Kibo" Utilization Services #3: Introduction for Mouse Rearing in Microgravity 2020,English [ pdf: 5.3 MB] 71619
「きぼう」利用サービス紹介3・微小重力環境でのマウス飼育と回収サービス 2020年版 [ pdf: 6.9 MB] 67815

トップサイエンスを支えるJAXA独自の宇宙飼育装置

宇宙ミッションテーマと未解析サンプルの活用

プロジェクトの流れ

公募選定されたテーマ

  • 宇宙ミッションは実現性検討フェーズのものを含みます
宇宙ミッションテーマを確認  サンプルシェアテーマを確認

現在募集中のテーマ

  • 当該装置を利用するテーマは、公募時期を限定し募集しています。
  • 過去のJAXA小動物飼育ミッションにおける未解析サンプルの提供要望を常時受け付けるバイオリポジトリウェブページは こちら をご覧ください
募集中テーマを確認

宇宙生命科学統合バイオバンク「ibSLS」

宇宙ミッション実施にはテーマ選定後、十分な準備期間が必要となります。すでに実施済みミッションから得られた成果(特定組織のトランスクリプトーム解析結果など)は順次ibSLSに蓄積されており、宇宙ミッションを実施していない研究者でも、それぞれがターゲットとしている因子の宇宙での変化を予測・検討することが可能となっています。さらに、このデータは東北大学東北メディカルメガバンク(ToMMo)のコホートデータとの連携解析が可能です。

宇宙ミッション推進におけるJAXAの役割 ~装置開発とユーザーインテグレーション

研究者のアイディアから宇宙ミッションの実現へ

宇宙は地上と異なる環境のため、研究アイディアをそのまま実施することは難しく、研究者だけでは宇宙ミッションを実施するのは非常に困難です。微小重力や放射線の影響、ISS船内外のさまざまな制約や条件の下で宇宙ミッションを実現させるためには、過去の宇宙ミッションを通して豊富な経験を積んだ各分野の専門家たちのサポートが不可欠です。
JAXA小動物飼育ミッションでは、実験条件の検討や予備実験の実施等のユーザーインテグレーションを担うサイエンスチームと飼育装置や解析装置の技術開発・管理運用するエンジニアチームとが密接に連携して、宇宙ミッションを推進しています(上図:プロジェクトの流れ「宇宙ミッションテーマ」をご参照ください)。
さらに、実験計画を審査する動物実験委員会、外部有識者から構成されるアドバイザリ委員会、JAXA有人宇宙技術部門の各種審査会等のほか、ISS国際パートナーのNASAや国内外のミッション支援企業等による協力体制が宇宙ミッションを支えています。
安全かつ確実に宇宙ミッションを成功へと導くために、今後も宇宙ミッション推進におけるJAXAの役割を果たしていきます。

図:宇宙ミッション推進におけるJAXAの役割

インタビュー:ミッションを支えるスペシャリストたち

関連トピックス

研究成果(論文・表彰・研究協力等)

ミッション実施・進捗

テーマ公募・選定・プロモーション関連

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