宇宙ライフサイエンス研究は新たなステージへ ~宇宙生命科学統合バイオバンク「ibSLS」の公開とCell誌掲載~

公開 2020年11月26日
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、東北大学東北メディカル・メガバンク機構(ToMMo)と共同で、ibSLS(宇宙生命科学統合バイオバンク、Integrated Biobank for Space Life Science)のデータベースを構築し、公開しました。

ibSLSは、ToMMoとJAXAとの「健康長寿社会実現への貢献を目指した「きぼう」利用に係る連携協定 (2019年2月8日締結)」で得られた科学成果を含め、両機構の連携協力によって初めて実現可能な宇宙と地上の研究をつなげるためのヒト・マウス統合データベースになります。また同時に、「きぼう」利用の拡大に向け、過去のJAXA小動物飼育ミッションにおける未解析サンプルの提供要望を常時受け付けるバイオリポジトリウェブページも公開しました。これにより、より広範にかつ簡潔に、小動物飼育ミッションのサンプルや解析データを研究者に配布することが可能となります。

地上研究で蓄積された膨大なヒトデータベースとの統合解析が可能となることで、実施機会が限られる小動物飼育ミッションの研究精度向上、さらには研究成果がダイレクトにヒトでの影響・関連解析につながることが期待されます。月探査協力に関する文部科学省と米航空宇宙局(NASA)の共同宣言には、日本人宇宙飛行士の月面での活動機会を可能とするための取り決めを策定することなどが盛り込まれており、本格的な有人宇宙探査時代において小動物飼育ミッション成果からibSLSを活用した宇宙滞在における健康リスクの克服が期待されます。さらに宇宙の知見が、地上での加齢研究および高齢者の健康を守る研究等に発展することも期待されます。

初回公開版ibSLSでは、世界初となる遺伝子ノックアウトマウス飼育ミッションのトランスクリプトーム解析結果(肝臓/腎臓/大脳/脾臓/胸腺/側頭骨/下顎骨)をデータベース化したもので、宇宙で受ける生体の影響を、世界中から簡便に検索することができるようになりました。順次、他ミッションやメタボロームデータを追加していく予定です。

このibSLSにかかる説明を含む宇宙ライフサイエンス研究の総説論文について、JAXAは、NASAを中心とした国際宇宙機関と共同執筆し、日本時間 2020 年 11月 26 日に「Cell」のオンライン版で公開しました。(共同執筆総説

共同執筆総説

雑誌名
Cell
論文名
著者名
Ebrahim Afshinnekoo et. al.
掲載日:
2020年11月26日
DOI
10.1016/j.cell.2020.10.050

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