公開 2023年4月28日
JAXAと米国航空宇宙局(NASA)は、日米協力枠組み(Japan-U.S. Open Platform Partnership Program: JP-US OP3)のもと、国際宇宙ステーション(ISS)の「きぼう」日本実験棟においてJAXA-NASA共同低重力ミッション(第8回小動物飼育ミッション)を実施しました。2023年4月15日、軌道上での約30日間にわたるマウスの4つの異なる重力環境での長期飼育が完了し、その後、マウスが搭載されたドラゴン補給船運用27号機(SpX-27)が米国フロリダ沿岸に着水しました。翌4月16日にNASAケネディー宇宙センターにて、日米の研究者に帰還したマウスが引き渡されました。並行して実施された地上対照実験を含め、現在、各研究チームにて詳しいサンプル解析が行われています(日付はすべて日本時間)。
なお、研究にかかる詳細は、科学的成果として学術論文等に発表される予定です。4つの異なる重力環境でのマウスの飼育は、ISSにおいて「きぼう」のみが有する小動物人工重力研究環境を最大限に活用した世界初の結果であり、JAXAが本ミッションに先駆けて実施した1/6Gの成果に加え、新たな知見の獲得が期待されます。各研究者の研究概要はNASAホームページをご参照ください。
JAXA-NASA共同低重力ミッションとは
- ISSの利用成果最大化に向けたJP-US OP3のもと、JAXAの宇宙マウス飼育システムを用いた低重力ミッションの共同実施がNASAとの間で、2020年2月に実施合意されました。
- 0~1Gの間の予め設定された4つの異なる重力環境において同時にマウスを長期間(30日程度)飼育する計画で同年から研究調整を開始しました。JAXAは、第1回目のマウス飼育ミッション(MHHU-1)において重力影響に関し網羅的な解析を行っている研究者(研究代表者:筑波大学医学医療系 高橋智教授)の協力を得て、NASAは3名の米国研究者を選定し、日米の国際研究チームにより統合的に解析・評価を進めています。
- 本ミッションに先駆けて実施した月面重力(1/6G)での飼育ミッションでは、姿勢の保持に働く筋肉(抗重力筋)であるヒラメ筋の量的変化(萎縮)と質的変化(筋繊維タイプの速筋化)はそれぞれ異なる重力閾値によって制御されていることを世界で初めて明らかにしました。このような知見に加えて、本ミッションではJAXAがこれまで蓄積した0、 1/6、1Gのデータと合わせて、より体系的な評価が可能となります。例えば、さまざまな低重力環境下での反応閾値の変化が明らかになれば、将来の月・火星探査における有人活動の支援に向けた貴重なデータになるとともに、地上においても加齢に伴う骨格筋の機能低下のメカニズム解明に役立てられることが期待されます。