追加実験エリアで課題解決!
「きぼう」で運用されている「細胞培養装置(CBEF)」は、細胞、植物、マウスなどの生物サンプルを培養(飼育)し、無重力や放射線などの宇宙環境における生物への影響を調べるための実験装置として、とても魅力的な装置です。CBEF には遠心機による人工重力発生機が搭載されているので、軌道上で純粋な重力有無による影響の比較が可能で、さらに遠心機の設定を変更することで地球の重力以下の月や火星などの重力を模擬することもできます。 しかし細胞や種子のような小さなサンプルでは問題ありませんでしたが、より大きなサイズのサンプルになると、回転中心からの位置でかかる人工重力の差が大きくなってしまうことが課題でした。
この課題を解決するため、2019年9月に追加区画の実験エリア「細胞培養装置追加実験エリア(CBEF-L)」が打ち上げられ、CBEFの左側、細胞実験ラックのクリーンベンチ(CB)があった場所に搭載されました。2020年から「きぼう」で運用開始しています。
大型化による改善
CBEF-LはCBEFよりも半径を倍以上にした大型の遠心加速型人工重力発生機を搭載することにより重力差を緩和することができるようになりました。また、供試体搭載スペースも広くなり、マウスよりも大きな動物の飼育も可能になりました。
ユーザーニーズにこたえるさまざまな運用形態
CBEF-L の運用は、CBEF と同じように、微小重力の培養室と重力をコントロールできる人工重力発生機がついた培養室の二つで運用する形態(Configuration 1)、両方の培養室に人工重力発生機を取り付けて運用する形態(Configuration 2)、そして二つの培養室の仕切りを外して一つの培養室に変更し人工重力発生機を大型化して取り付けて運用する形態(Configuration 3)を取ることができます。さらにCBEFと並行利用することで、サンプル数を増やし、最大4種類の重力比較を同時に行う実験(例えば、無重力、地球上 1G、月上1/6G、火星上 1/3G を同時に実験するなど)が可能となります。CBEF-Lでは、CBEFにはないハイビジョン映像やイーサネットのインタフェースを供試体に提供するなどの改善も行われているため、生命科学分野の様々な研究領域のユーザーニーズを満足することが可能となり、新たな発展利用の実現が見込まれています。
CBEF-Lのコンフィギュレーションイメージ
基本仕様
項目 | 設計仕様 | |||
Configuration 1または2 | Configuration 3 | |||
培養系 | キャニスタ搭載個数 (標準中型キャニスタ) |
培養部1 | 培養部2 | 大型培養部 |
6または4 | 4 | 大型化プレートによる | ||
インキュベータ内環境制御 | 温度設定 | 15~40℃(0.1℃刻み) | ||
温度分布 | ±約1℃ ※キャニスタ発熱なしの場合 |
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湿度設定 | 20~65%RH(1%刻み) | |||
湿度分布 | ±10%RH | |||
CO2濃度設定 | 0~10%Vol(0.1%刻み) | |||
人工重力系 | 重力発生方式 | 遠心力による | ||
重力値設定 | 0.1~2G(但し、回転中心から112.5 mmの点) 注)回転数設定 15~140 rpm(1 rpm刻み) |
0.1~2G(但し、回転中心から330 mmの点) 注)回転数設定 15~82 rpm(1 rpm刻み) |
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ユーザインタフェース | ユーティリティ設定数 |
※1 CBEF外への出力は1系統 |
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ユーティリティ内訳 |
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