ストレス対応で宇宙環境に身体をアジャスト!

公開 2021年12月10日
東北大学の宇留野晃准教授(東北メディカル・メガバンク機構(ToMMo))、三枝大輔客員准教授(ToMMo、現 帝京大学)、山本雅之教授(ToMMo・機構長)、および宇宙航空研究開発機構(JAXA)の芝大技術領域主幹らの研究グループは、2018年に「きぼう」日本実験棟で実施した第3回小動物飼育ミッション(MHU-3)※1 で帰還したマウスの血液や白色脂肪組織の代謝物を網羅的に測定し、脂質代謝への影響を評価しました。

  • 国際宇宙ステーション(ISS)に約1か月間滞在したマウスから微量の採血を行い、血液成分の網羅的な解析を行ったところ、血液中のリン脂質やコレステロールが上昇し、中性脂肪が低下していました。
  • 各種組織の遺伝子発現量の検討では、白色脂肪組織で中性脂肪を貯蔵させる変化が、また、肝臓では血中リン脂質を増加させる変化が生じていました。
  • これらの代謝の制御に働くNrf2の遺伝子ノックアウトマウスではこういった変化は見られず、転写因子Nrf2が宇宙環境における代謝変化に重要な役割を果たしていることが明らかになりました。
  • 今回の血液メタボローム解析結果などの研究データは、ToMMoとJAXAが連携し整備している宇宙生命科学統合バイオバンク (Integrated Biobank for Space Life Science: ibSLS ) にて公開する予定で、多くの研究者が宇宙環境による生体反応を容易に解析することが可能となります。

研究内容・今後の展望

宇宙環境における生体の代謝反応とその制御メカニズムの解明は、長期の宇宙滞在における健康維持にとって重要です。本研究の成果により、宇宙滞在は生体の脂質代謝を大きく変化させることが明らかになりました。宇宙滞在で変化したリン脂質は、血液中で脂質を輸送する仕組みであるリポタンパク質と呼ばれる粒子に多く含まれます。一方、トリアシルグリセロール(中性脂肪)は脂肪細胞に貯蔵される脂肪滴の成分です。これらの脂質代謝の変化は、宇宙環境に合わせた、臓器間の栄養の運搬やエネルギー貯蔵の調節に貢献しているものと考えます。また、本研究から、転写因子Nrf2がその脂質代謝の変化に重要な役割を果たしていることが明らかになりました。現在、世界中でNrf2を活性化させる薬剤の開発が進んでおり、その一部はすでに実用化されています。このため、これらの知見は、宇宙旅行・滞在における健康管理の向上への直接的な貢献のひとつとして期待されます。

ToMMoとJAXAは、ウェブ上の宇宙生命科学統合バイオバンク ibSLS(Integrated Biobank for Space Life Science) で、ISSの「きぼう」で得られたマウスの成果を公開しています。今回の代謝に関する成果発表にあわせて、MHU-3ミッションで得られた血液のメタボローム解析結果の検索機能も追加し、大幅な機能拡充を図り、近日公開予定です。これにより、宇宙ミッションを実施していない多くの研究者でも、宇宙環境で引き起こる生体反応を、容易に解析することが可能となります。今後も、宇宙と地上の研究をつなぐデータベースとしてこれまでのフライトミッションデータの追加や機能の拡充を予定しています。

本研究成果は、2021年12月9日に学術誌Communications Biologyのオンライン版で公開されました。

論文情報

雑誌名
Communications Biology
論文名
著者名
宇留野晃、三枝大輔、鈴木隆史、湯本茜、中村智洋、松川直美、山崎貴広、齋藤律水、田口恵子、鈴木未来子、鈴木教郎、大槻晃史、勝岡史城、菱沼英史、岡田理沙、小柴生造、富岡佳久、清水律子、白川正輝、Thomas W. Kensler、芝大、山本雅之
DOI
10.1038/s42003-021-02904-6

大学プレスリリース

 


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