中型曝露実験アダプタ(i-SEEP)による船外利用

更新 2023年7月18日

サービス概要

中型曝露実験アダプタ(i-SEEP)は、複数の装置を搭載でき、その装置に実験や実証の環境を提供するアダプタです。人工衛星で言えばバス機器に相当します。電源や通信などのリソースを提供することができますので、i-SEEPを利用すれば、利用者はミッション機器のみの開発で、技術実証や地球観測・宇宙観測などをより簡単に行うことができます。(iーSEEP利用のミッション例)
i-SEEPに搭載する「観測・実験装置」はISSへ船内環境で打上げられ、「きぼう」船内にてi-SEEPに取り付けられます。装置が取り付けられたi-SEEPは「きぼう」のエアロックを経由して船外へ搬出され、「きぼう」のロボットアームにより所定の「きぼう」船外実験プラットフォームのポートへ設置されます。運用中は、電力、通信(コマンド・テレメトリ・他)等のリソースを装置へ提供します。必要に応じて、「観測・実験装置」をISSから地上へ回収し、ユーザへ返却することも可能です。宇宙の曝露環境にさらされた装置を地上に回収し、現物を確認できることはi-SEEP利用の大きな特徴の一つです。
現在、i-SEEPの利用サービスはJAXAが選定した民間事業者に移管されています。

主要緒元
項目 概要
電力 28 Vdc(定格)2ch,各チャンネル最大 200W
通信 中速系

低速系

ビデオ
Ethernet: Ethernet ⅡまたはIEEE802.3 2 ch
無線LAN: IEEE802.11n アクセスポイント1台
データバス/規格:MIL-STD-1553B 2系統
USB:USB2.0 2ch
NTSC 1 ch
地上との通信 「きぼう」船外装置を全て合わせて60Mbps
排熱 400 W(公称最大)
(実験装置取り付け面の2枚のコールドプレートへの合計)
コールドプレート温度 16~40 ℃
振動環境 打上時 9.47 grms
回収時 8.29 grms
(梱包せずに直接輸送船に搭載する場合の環境、別途、典型的な梱包を行う場合の規定あり)

窓口

国内外のユーザを対象に、民間事業者による「きぼう」船外における軌道上利用サービスが提供されています。 (エンドユーザのサービス料金は事業者が設定)

要求文書/Interface Control Document

i-SEEP搭載の実験装置に対する詳細な技術要求等については、以下の文書を参照ください。

NC-5版の誤記を修正し差し替えました(2023年7月18日)Update

パンフレット/Brochure

i-SEEP利用のミッション紹介

ミッション略称 搭載機 期間(年度) 開発 利用形態※1
▼ HDTV-EF2 HTV6 2017~運用中 JAXA JAXA利用/ 有償利用
▼ GPSR-Wheel HTV6 2016 JAXA JAXA利用
▼ SOLISS HTV8 2019~2020 NICT、Sony CSL 有償利用
▼ iSIM HTV9 2020 Satlantis 有償利用
▼ LPS 非公開 2021~2022 ソニーグループ(株) 民間事業者
▼ Space AS-LiB NG-17 2022~運用中 JAXA、日立造船 JAXA利用(SPySE利用)
▼ ExBAS#1-1 NG-17 2022 JAXA、Space BD 民間事業者(SPySE利用)
▷ Smart One 非公開 非公開 非公開 民間事業者
▷ ExBAS#1-2 SpX-27 2023 JAXA、Space BD 民間事業者(SPySE利用)
▷ SeCRETS 2023年度予定 TBD ※2 民間事業者

※1 利用形態のうち、HDTV-EF2以外のJAXAの有償利用は現在行っていません。2019年4月から民間事業者としてSpace BD社による軌道上利用サービスが提供されています。
※2 スカパーJSAT株式会社、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)、次世代宇宙システム技術研究組合(NeSTRA)、株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所

高精細ビデオカメラによる映像取得【HDTV-EF2】

自然災害の速報発信、定点観測のほか、民間利用などでの活用を目指した、「きぼう」次世代ハイビジョンカメラシステム(HDTV-EF2)は、I-SEEPに搭載された最初のペイロードの一つです。このカメラシステムは、カメラ視野方向を制御するための2軸の雲台を持ち、地上からの操作によりカメラを目的の方向に動かすことができます。
また、20倍光学ズームのハイビジョンカメラと高感度・光学5倍の4Kカメラを搭載しています。
これまでに各国の様子や、雲の動き、災害現場の撮影などを行っています。

高性能小型GPSR/Wheelユニットの軌道上実証【GPSR/Wheel】

小型衛星に搭載する市販品から構成される機器の宇宙実証を行いました。i-SEEPの初号機に搭載され、2016年度から実証が開始されました。

小型光通信実験装置【Small Optical Link for International Space Station: SOLISS】

JAXAと株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所は、JAXA宇宙探査イノベーションハブの研究提案の枠組みを利用して、将来の衛星間や地上との大容量リアルタイムデータ通信の実現を目指し、2016年より共同で研究を行ってきました。2019年10月25日に光地上局への光ダウンリンク(指向制御)を確立し、2020年3月5日には「SOLISS」と光地上局との間で波長1.5µmレーザ光による双方向光通信リンクの確立に成功しました。さらに3月11日には「SOLISS」から 100 MbpsのEthernetによる通信を用いてHD画像を光地上局で受信することに成功しました。本実証によって、今後の宇宙空間における地球周回軌道を始めとした衛星間や地上との超高速(低遅延)データ通信や、大容量リアルタイムデータ通信の実現や汎用化などが期待されます。

超小型衛星搭載用地球観測カメラ【integrated Standard Imager for Microsatellites: iSIM】

iSIMはスペインの宇宙ベンチャー企業であるSatlantis社が開発している超小型衛星搭載用の地球観測カメラです。高い解像度で地上を撮影するミッションで、筑波宇宙センターから軌道上のコンピュータへスケジュールファイルを送信し、それをiSIMが自動で読み込み、撮影。撮影された映像は筑波宇宙センターへダウンリンクされ、Satlantis社へ送られました。

LPWA無線実験装置【LPS】

ソニーグループ株式会社が、IoT向け低消費電力広域(以下、LPWA:Low Power Wide Area)通信規格のELTRES™(エルトレス)に対応した独自の衛星無線実験装置を用いて、地上のIoTデバイスから送出された電波を同実験装置で受信するミッションです。 本実験装置は、ELTRES™に対応した無線基地局を小型・省電力化し、宇宙の過酷な環境に耐えられるよう新たに開発したものです。また、地球を高速周回する低軌道衛星においても、受信安定性の確保と受信可能な端末数の最大化ができるよう専用の信号処理アルゴリズムを実装しています。

全固体電池軌道上実証装置【Space AS-LiB】

世界で初めて宇宙での全固体リチウムイオン電池の実用化に向けた実証実験です。JAXAと日立造船株式会社は、宇宙探査イノベーションハブの研究提案公募の枠組みの下、2016年から全固体リチウムイオン電池の共同開発を行ってきました。全固体リチウムイオン電池は、次世代電池の本命として注目されており、さまざまな機器への搭載が見込まれています。全固体リチウムイオン電池を用いることで温度管理が不要となるため、宇宙環境で利用する設備の小型・軽量化や低消費電力化に寄与することが可能となります。さらには、より過酷な温度環境である月・火星探査機や、月面で活動するモビリティとなるローバや観測機器等での活用が期待されます。

簡易曝露実験ブラケット【ExBAS#1-1】

研究用素材などの様々な材料を船外へ曝露する「簡易材料曝露実験ブラケット(ExBAS)」。i-SEEP利用事業者のSpaceBD社が参加団体を募り、#1-1では17個のサンプルを搭載し、約半年の曝露実験を実施しました。

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