インクリメント68期間
インクリメント68キーメッセージ
インクリメントマネージャ紹介
インクリメント68は、宇宙滞在5回目の若田宇宙飛行士をして「これまででもっともトラブルが多かった」と言わしめるほど、様々な予想外の出来事が起こりました。
しかし、地上の運用・利用チームの各メンバーと軌道上の若田宇宙飛行士が、一人一人リーダーシップを発揮しつつ、互いを思いやり「和を尊ぶ」チームワークを発揮したことにより、将来の低軌道利用や有人宇宙探査につながる大きな成果を獲得することができ、キーメッセージの「世界が認め、求める和のリーダーシップ」を実現しました。
軌道上では、シグナス補給船運用18号機(NG-18)の飛行中に片側の太陽電池パネルが開かなかったり、ISSに係留中のソユーズMS-22宇宙船(68S)およびプログレスMS-21補給船(82P)の冷媒が宇宙空間に漏洩したり、若田宇宙飛行士の船外活動中に新型太陽電池アレイを取り付けられないなどのトラブルが発生しました。 そのような中でも、国際協力ミッションを含む科学/有人宇宙技術/民間利用の三つの領域で、数多くのミッションを成功させることができました。
- 日本独自の利用技術が世界から認められた結果、国際協力ミッションとしてJAXA-NASA共同低重力ミッション「MHU-8」が開始されました。また、静電浮遊炉(ELF)では米国の実験「Round Robin」を含む7テーマが実施されました。
また、次世代に向けた教育ミッションにも、国際協力は拡がっています。アジア・太平洋地域の学生達が、自分のプログラミングでドローンロボットを操縦する「第3回きぼうロボットプログラミング競技会」や、自ら考えた実験を若田宇宙飛行士が実践する「アジアントライゼロG」を、地上から見守りました。そして「J-SSOD」ではウガンダとジンバブエの両国初の衛星が放出されました。 - これまでの線虫実験の成果をまとめ上げる「Neural Integration System」では観察と培養を並行して行い、火災安全性向上に向けて様々な固体材料の燃焼性を評価する「FLARE」では燃焼限界の酸素濃度の検証を進めています。これらは継続的に実験成果を発展させられるISSならではの科学実験です。
- 有人探査に向け、「次世代水再生実証システム」では水を再生する工程全ての実証に初めて成功しました。月面ローバ開発に向けて低重力での液体の動きを調べる「LBPGE」や、宇宙での飲料水の微生物管理法を提案する「Micro Monitor」では、ISSをテストベッドとして、探査を目指して宇宙で起こる現象や技術を確かめました。
- 「きぼう」の船外では、材料実験「ExBAS」初の試料回収に成功、「全固体電池 」のデータも獲得しました。企業が開発した生活用品を始めて搭載するなど、民間企業の皆様にも様々な形でISSを使った活動にご参加いただきました。
これら以外にも語りつくせないほど多くのミッションを達成できたのは、日本人の累計宇宙滞在日数最高記録を504日間に塗り替えたベテランの若田宇宙飛行士、素晴らしい仲間たち、そして応援してくださった皆様のおかげです。各チームメンバーの熱い思いをインクリメント中にきぼう利用ネットワークTwitterで発信してきましたが、こちら(外部サイト)でまとめてご覧いただけますので、ぜひ振り返ってみてください。
本インクリメント中に、2030年までのISS運用延長に日本が参加を表明し、アルテミス1が月を周回して無事帰還、新しく2名の宇宙飛行士候補者がJAXAの仲間に加わりました。地球低軌道利用、そして有人宇宙探査に向けた動きがますます活発化しています。
この転換点に、宇宙でのミッション拠点を使い続けていけるのは幸せなことだと感じています。これからも「世界が認め、求める」日本として宇宙分野を先導し続けるため、宇宙開発の仲間として、引き続き応援いただければ嬉しいです!
こんにちは。インクリメント68を担当します梅村さや香です。
本インクリメントのキーメッセージは「世界が認め、求める和のリーダーシップ」。このキーメッセージには二つの意味があります。
一つ目は本インクリメントで5回目の宇宙滞在に挑む若田宇宙飛行士が大切にする、一人一人がリーダーシップを発揮しつつ、互いを思いやり「和を尊ぶ」チームワークで、インクリメントに取り組むこと。
二つ目は、日本独自の利用技術(JAXA実験装置の優位性)が世界から認められたことが多くの国際協力ミッションにつながっており、それらを含む科学/有人宇宙技術/民間利用の三つの領域で成果を獲得して、将来の低軌道利用や有人宇宙探査をリードし続けるという意気込みです。
今、世界では、ISS運用延長が議論されるとともに、商業宇宙ステーション開発が始まり、将来の地球低軌道利用に向けて民間企業の参入が相次いでいます。また、月を目指すアルテミス1の打上げが迫り、月ステーションであるGatewayの開発が進み、新しい宇宙飛行士が間もなく選抜されるという、有人宇宙探査に向けた動きも活発化しています。有人宇宙開発が転換点を迎える中、日本が独自の技術で国際的に存在感を放っていることが今回実施されるミッションで象徴されています。
- 日本の静電浮遊炉(ELF)でしかできない超高温金属材料の測定を行う米国の実験「Resonance Induced Instability for Surface Tension determination」、アジアの学生が参加する「第3回きぼうロボットプログラミング競技会」や「アジアントライゼロG 2022」、ウガンダとジンバブエの両国初の衛星を放出する「きぼう」からの超小型衛星放出(J-SSOD)など、世界中のパートナーから日本が選ばれています。
- これまでの線虫実験の成果をまとめ上げる「モデル生物を用いた宇宙フライトが及ぼす加齢への影響(Neural Integration System)」や、火災安全性向上に向けて様々な固体材料の燃焼性を評価する「火災安全性向上に向けた固体材料の燃焼現象に対する重力影響の評価(FLARE)」は、継続的に実験成果を発展させられるISSならではの科学実験です。
- 月面ローバ開発に向けて低重力での液体の動きを調べる「CBEFを用いた低重力環境下における液体挙動に関するデータ取得(LBPGE)」や、宇宙での飲料水の微生物管理法を提案する「宇宙船内水環境微生物のオンボードモニタリング法の開発(Micro Monitor)」では、ISSをテストベッドとして宇宙で起こる現象や技術を確かめ、有人宇宙探査につなげていきます。
- 新薬を目指す高品質なタンパク質結晶を創る「高品質タンパク質結晶生成実験(PCG)」や、「簡易材料曝露実験ブラケット(ExBAS)」を用いた材料曝露実験などの船外実験は、JAXAからの技術移転を受けて民間企業によるサービス提供が始まっています。
数多くのミッションを達成するために、チームメンバーが奮闘する様子は、きぼう利用ネットワーク がTwitterハッシュタグ「#Inc68JAXA」で発信していきますのでぜひご確認ください。
これからも「世界が認め、求める」日本として宇宙分野を先導し続けるために、ぜひ皆さんもインクリメント68チームの一員となった気持ちで、応援していただけたら嬉しいです!
実施した利用ミッション
健康長寿研究支援プラットフォーム
超小型衛星放出プラットフォーム
船外ポート利用プラットフォーム
- 中型曝露実験アダプタ1(i-SEEP1)利用
- 中型曝露実験アダプタ2(i-SEEP2)利用
- The intelligent Space System Interface Flight Qualification Experiment【iSSIFQE】
- 小型ペイロード搭載支援装置【SPySE】
- 全固体電池軌道上実証装置【Space AS-LiB】
- 簡易材料曝露実験ブラケット【ExBAS】#1-1搭載サンプル
- 簡易材料曝露実験ブラケット【ExBAS】#1-2搭載サンプル
- 宇宙実証用ハイパースペクトルセンサ【HISUI】 *外部サイト
無容器処理技術を利用した材料研究への貢献(革新的材料研究支援プラットフォーム)
- 静電浮遊炉【ELF】利用
- 静電浮遊法を用いた鉄鋼精錬プロセスの基礎研究~高温融体の熱物性と界面現象~【Interfacial Energy】
- 新奇機能性非平衡酸化物創製に向けた高温酸化物融体のフラジリティーの起源の解明【Fragility】
- 高速炉シビアアクシデント解析のための制御棒材の共晶溶融物質の熱物性【B4C-SS eutectic】
- 熱エネルギー貯蔵材料開発に向けた非平衡溶融合金の熱物性計測【Thermal storage】
- スペースデブリ・レーザーナッジのための推進力計測実験【Laser Debris Removal】
- 過冷却液体合金の分相と多重合金球形成過程の解明【Multi shell sphere】
- Round Robin(NASA実験テーマ)
新プラットフォーム形成(細胞医療への貢献に向けた立体培養技術の有効性実証)
新プラットフォーム形成(将来有人活動の安全基盤確立に向けた宇宙火災研究(仮))
新プラットフォーム形成(新たな発想に基づく民間利用の拡大)
- 宇宙日本食、宇宙用生活用品
- KIBO宇宙放送局【The Space Sunrise Live 2023】
長期滞在・探査ミッション技術獲得
宇宙医学
科学研究促進(船外ポート利用)
科学研究促進(生命医科学)
国際協力・STEM教育
- ※実施予定の利用ミッションは、「きぼう利用戦略」の具体的取り組みの分類に基づいたマッピング(図1)を基に優先順位を定めています。