高速炉シビアアクシデント解析のための制御棒材の共晶溶融物質の熱物性

公開 2021年7月 1日

B4C-SS eutecticThermophysical property of eutectic melting material of control rods for severe accident analyses in fast reactors

準備中
宇宙利用/実験期間 2021年 ~
研究目的 微小重力環境でステンレスとB4C(炭化ホウ素)からなる共晶合金の高温融体の熱熱物性(密度、表面張力、粘性)を測定します。
共晶合金とは:合金のうち溶けた状態から固まる際に元の成分の金属に分離する共晶反応を示す合金で、一般に元の成分金属よりも融点が低い特徴を有する。工業的な利用価値が高い。(例:はんだは錫と鉛の共晶金属。ガリウム、インジウム、錫の共晶合金である液体金属にニッケルナノ粒子を混ぜた3Dプリンタ用ガリウム合金)
宇宙利用/実験内容 ナトリウム冷却原子炉で事故が発生した場合の対策を検討するため、制御棒材料である炭化ホウ素(B4C)とその被覆材のステンレス(SUS)との共晶溶融反応の特性を知る必要があります。低B4C-SUS共晶溶融物質の密度、表面張力、粘性、比熱、熱伝導率は地上でも得られますが、高B4C濃度共晶物質は融点が高く、かつ試料の蒸発を抑制することが地上では困難ですが、「きぼう」の静電浮遊炉(ELF)利用であれば測定が可能となります。
期待される利用/研究成果 B4C-ステンレス共晶化合物液体の粘性、表面張力の温度依存性データを取得できれば、炉心損傷事故評価におけるB4C-ステンレス共晶反応に係る物理モデルを得ることが可能となります。
関連トピックス
詳細

要旨

高速炉で事故が発生した場合の対策を検討するため、制御棒材料である炭化ホウ素(B4C)とその被覆材のステンレス(SUS)との共晶溶融反応の特性を知る必要があります。低B4C-SUS共晶溶融物質の密度、表面張力、粘性、比熱、熱伝導率は地上でも得られますが、高B4C濃度共晶物質は融点が高く、かつ試料の蒸発を抑制することが地上では困難ですが、「きぼう」の静電浮遊炉(ELF)利用であれば測定が可能となります。

実験の概要

原子力発電所におけるシビアアクシデントでは、制御棒材の炭化ホウ素(B4C)が被覆材のステンレス鋼(SS)に接触して共晶溶融反応を引き起こし、その物質が炉心内に拡散すると考えられます(図1参照)。しかしながら、これまで共晶溶融反応を考慮したシビアアクシデント解析は行われていませんでした。そこで、ナトリウム冷却高速炉シビアアクシデント解析コードに、その共晶溶融反応を考慮した物理モデルを開発するため、B4C-SS共晶溶融物質の熱物性が必要となります。国内外を見てもB4C-SS共晶溶融物質の熱物性データを取得した例はありません。低B4C濃度の共晶溶融物の熱物性データは電磁浮遊法により取得できましたが、高B4C濃度共晶物質のデータは電磁浮遊法では取得できず、その液体熱物性データを取得する必要があります。

図1 軽水炉における制御棒内のB4C(図中黄色領域)とSSとの界面に形成された液相(図中赤色領域)の成長と溶融移行挙動に関する計算例
出典:原子力機構小野研究開発成果2016-17「1 福島第一原子力発電所事故の対処に係る研究開発、1-4 原子炉事故時の炉心の溶け方をスーパーコンピュータで明らかにする」

本研究では、ナトリウム冷却高速炉シビアアクシデント解析において、炭化ホウ素(B4C)とステンレス鋼(SS)の共晶溶融挙動を模擬するために必要なB4C-SS共晶溶融物質の熱物性データを取得することが目的です。得られた成果は解析コード内の熱物性データとして組み込まれ、シビアアクシデント解析に活用されます。高B4C濃度のB4C-SS共晶溶融物質を対象としているため、地上では困難な高温溶融/蒸発抑制浮遊が可能な宇宙での浮遊実験が必要となります。

期待される成果

得られたデータは世界初になるため、国内外で活用されるデータベースとして価値が高く、また、ナトリウム冷却高速炉だけでなく、既設軽水炉のシビアアクシデント解析の基本的安全データベースとして活用できるとともに、その他の新型炉概念にも適用できるため、高い波及効果が期待されます。

山野 秀将 YAMANO Hidemasa

日本原子力研究開発機構 高速炉・新型炉研究開発部門 炉設計部 次長

1996年3月広島大学大学院工学研究科移動現象工学専攻博士課程前期終了。2009年3月九州大学大学院工学研究院エネルギ―量子工学部門博士後期課程修了。1996年4月動力炉・核燃料開発事業団(現:日本原子力研究開発機構)入社。2001年9月~2002年9月フランス原子力庁カダラッシュ研究所駐在。同機構炉設計部高速炉安全設計グループリーダを経て2021年7月より現職。

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