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2022.12.16
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第3回「きぼう」ロボットプログラミング競技会 軌道上決勝大会の結果報告

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概要

2022年10月29日(土)、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、アメリカ航空宇宙局(NASA)との協力により実施した第3回「きぼう」ロボットプログラミング競技会(Kibo-RPC)の軌道上決勝大会イベントをオンライン開催しました。本イベントは、事前に収録した軌道上での競技映像を使って行われ、自国・地域からオンラインで参加した各代表チームの学生たちは、自分たちが作成したプログラムを組み込んだNASAのドローンロボット“Astrobee”が、実際に「きぼう」船内を飛行する様子を確認し、またミッション完了報告の音声メッセージに対する若田宇宙飛行士からの返答を受けとり、楽しい時間を過ごしました。

なお、本イベントの様子は、以下のJAXAチャンネルでビデオ公開していますので、是非ご覧ください。
JAXAイベントライブ配信専用チャンネル:https://youtu.be/NjOgNrPMUJsYOUTUBE

図1 競技を終えた参加学生にメッセージを送る若田宇宙飛行士(Image by NASA/JAXA)
図2 オンライン参加の様子

軌道上決勝大会(Final Round)イベントでは、2022年6月下旬から7月上旬にかけて各参加国・地域で行われた予選会を勝ち抜いた代表チームが、決勝大会用に改良したプログラムで競技に挑み、World Wide Team (WWT)を含む全10チームがスピードと正確さを競いました。(表1)

WWT制度は、Kibo-RPC参加国ではない国の学生も参加できるよう、今回の第3回大会から導入された制度です。初回となった今回は、インドネシアとチュニジアの合同チーム「Bondowoso 2 / Pinnacle」がWWT代表として本決勝大会に進出しました。

表1. 軌道上決勝大会の参加チームリスト(アルファベット順)

国・地域 チーム名
オーストラリア Dream Rover
バングラデシュ Enigma Systems
インドネシア Bondowoso 3 / Prime
日本 Space Lark
マレーシア IIUM ROBOTEAM AEROS-02
台湾 KIBO la na tsu bu KIBO /
Robology Awesome Aliens
タイ solarSystem[3]
アメリカ合衆国 CP-HSTAR
ベトナム BDMT
Worldwide team Bondowoso 2 / Pinnacle

競技会について

イベントのはじめに、解説を担当する東京大学中須賀真一教授、油井亀美也宇宙飛行士からの挨拶のほか、本イベントMCの山崎直子宇宙飛行士からの概要説明や、NASAエイムズ研究センター(ARC)のJose V Benavides氏(Astrobeeプロジェクトマネージャー)のビデオメッセージが紹介されました。
JAXA永瀨桂研究開発員よりゲームルール解説のあと、若田宇宙飛行士から競技会場となるISS 「きぼう」船内の紹介があり、軌道上決勝大会の競技が開始されました。(図3)
MC:宇宙飛行士 山崎直子
解説員:JAXA宇宙飛行士 油井亀美也
解説員・総評:東京大学 中須賀真一教授
ルール解説:JAXA研究開発員 永瀨桂
NASAのAstrobeeプロジェクトマネージャー:Jose V. Benavides氏(Image by NASA)

図3 大会の様子

競技では、ほとんどのチームがAstrobeeを最後まで飛行させて、若田宇宙飛行士にミッション完了報告をすることができました。各国・地域の予選会では、すべてのタスクをクリアできなかったチームもありましたが、決勝に向けたプログラミング修正期間に予選会での課題を修正するなど、各チームが改良を進め、最終プログラムはどれもハイレベルなプログラムとなっていました。

競技会の見どころ

チーム戦略に特色が出たのは飛行経路の選択で、飛行経路の途中にある侵入禁止エリア(KOZ:Keep Out Zone)の上下どちらを通るか、また、KOZの近くを通過する際に、KOZに当たらないギリギリの飛行経路を通るかで競技時間短縮を狙ったチームが多くいました。一方、今回のKibo-RPCでは競技時間よりもレーザ照射精度を重視した採点方法であったため、より中心にレーザが当たったタイミングで画像を記録するように、全チームがレーザ照射と画像認識のプログラミングに時間をかけていました。競技時間とレーザ照射精度のバランスを考えて戦略を立てたチームがより高い得点を得たようです。学生たちは自分のチーム紹介をした後、祈るようにAstrobeeを見つめ、一喜一憂しながら自身のプログラムでAstrobeeが「きぼう」船内を動く様子を見守りました。(図4)
図4 競技の様子

表彰:クルー・アワード

全チームの競技終了後、若田宇宙飛行士から特別賞として、クルー・アワードの発表がありました。 クルー・アワードは、ミッション最後の課題である学生の音声によるミッション完了報告で、最も心に残ったメッセージを届けたチームを若田宇宙飛行士が選び、表彰するものです。 クルー・アワードを受賞したのは、バングラデシュ代表チーム 「Enigma Systems」でした。若田宇宙飛行士からは、選考の理由として、「『人類の発展を目標としている』というメッセージに感銘を受けました。ISSでは様々な国の宇宙飛行士たちが共に生活しており、国際協力こそが宇宙開発や人類のフロンティアを広げるカギだと考えています。この気持ちを忘れず、今後のミッションでの活躍を期待しています。」とメッセージが送られました。受賞した「Enigma Systems」のチームリーダは、「昨年に引き続き、 クルー・アワードを受賞することができ、とても光栄です。チームみんなで頑張ってきたのでうれしいです。ありがとうございます。」と大変喜んでいる様子でした。(図5)
図5 クルー・アワードを受賞した「Enigma Systems」の様子

表彰:結果発表

若田宇宙飛行士によるクルー・アワードに続き、軌道上決勝大会の結果発表が行われました。見事1位に輝いたのは、台湾代表である台湾とチュニジアの合同チーム 「KIBO la na tsu bu KIBO and Robology Awesome Aliens」でした(図6)。第2位にインドネシア代表のインドネシアとチュニジアの合同チーム 「Bondowoso 3/Prime」(図7)、そして第3位に日本代表チーム 「Space Lark」(図8)が、入賞しました(表2)。表彰式ではチーム名が発表されると、これまでの努力を振り返るかのようにチームメイト同士で喜びを分かち合っていました。
図6 1位「KIBO la na tsu bu KIBO and Robology Awesome Aliens」
図7 2位「Bondowoso 3/Prime」
図8 3位「Space Lark」
今回の大会では、国を超えて協力し合うWWTのチームが1位と2位を占め、若田宇宙飛行士が クルー・アワードで述べたように、国際協力がこれからの宇宙開発の発展に大きく貢献することを、学生たちが身をもって証明しました。このイベントを通して経験したことが、参加した学生の皆さんにとって、将来の夢に向かう良い糧となることを願っています。

謝辞と予告

第3回Kibo-RPCには、オーストラリア、バングラデッシュ、インドネシア、日本、マレーシア、ネパール、ニュージーランド、シンガポール、台湾、タイ、ベトナム、アメリカの12か国・地域とWWTに応募した国・地域から、過去最多の351チーム、1431名の学生の皆様に参加いただきました。
ご参加いただいた学生の皆様、そして本イベントの開催に向けてご協力いただいた参加各国の宇宙機関や研究機関の方々に感謝を申し上げます。
第4回Kibo-RPCの開催も、予定していますので、ぜひ次回もご参加ください!

表2 軌道上決勝大会の成績一覧

横スクロールしてお読みください。
順位 国・地域 チーム名 Target1
照射
Target1
追加点
Target2
精度(mm)
Goal
到達
クリア時間
(sec)
1 台湾 KIBO la na tsu bu KIBO / Robology Awesome Aliens 30.2 280.9
2 インドネシア Bondowoso 3 / Prime × 29.8 182.3
3 日本 Space Lark 39.5 246.9
4 アメリカ合衆国 CP-HSTAR × 40.4 178.3
5 ベトナム BDMT 範囲外 221.7
6 WWT Bondowoso 2 / Pinnacle × 53.4 179.2
7 バングラデシュ Enigma Systems × 範囲外 200.9
8 オーストラリア Dream Rover × 範囲外 266.5
9 タイ solarSystem[3] × × 範囲外 247.1
10 マレーシア IIUM ROBOTEAM AEROS-02 × 範囲外 × 266.5

表3 軌道上決勝大会イベントのプログラム

No Contents
1 Opening video
2 司会者と解説員の紹介、軌道上決勝大会について
3 ビデオメッセージ(NASA ARC)
4 ルール説明
Opening Remarks by 若田宇宙飛行士
5 決勝大会(各チーム紹介と軌道上競技映像)
6 表彰式
7 優勝チームインタビュー
8 講評
9 Closing Remarks

※特に断りのない限り、画像クレジットは©JAXA