次世代水再生実証システム

更新 2024年3月29日

JWRSJEM Water Recovery System

完了
宇宙利用/実験期間 2019年 ~ 2023年
研究目的 次世代水再生システムを将来の有人宇宙探査で使用するために、小型の技術実証システムを開発し、実際に宇宙で実証実験を行うことで、地上では模擬できない微小重力環境下での各機能を確認します。
宇宙利用/実験内容 尿あるいは模擬尿を技術実証装置で処理し、飲料水品質の水に浄化再生します。水再生には、イオン交換、電気分解、電気透析の技術を使うことで、尿中の成分を分解除去します。電気分解、電気透析の処理では気泡が発生し、微小重力では気泡に浮力が作用しないため、地上での処理と異なる可能性があります。そのため、流速や電圧などを変えた実験を行い、水再生処理における重力影響を確認します。
期待される利用/研究成果 技術実証を通して得られた成果は、水再生システムの設計に活用し、ISSで使用している水再生システムより、小型、低消費電力、高再生率、メンテナンス性を向上させた次世代型水再生システムの開発につなげます。
関連トピックス
詳細

多目的実験ラック - 次世代水再生実証システム

日本独自の将来型水再生システムの実証実験として、「きぼう」に設置した多目的実験ラックに搭載できるサイズの次世代水再生実証システムを開発しました。

ISSでは、地上からの水の輸送量を減らすため、米国のシステムにより、宇宙飛行士の尿やキャビン内の空気の除湿によって回収した水を飲料水に再生しています。
JAXAでは、現在ISSで使用している水再生システムより、小型、低消費電力、高再生率、メンテナンス性を向上させた次世代型水再生システムを開発するため、先ず小型の実証システムを開発し「きぼう」日本実験棟で実証実験を行います。
低消費電力で小型・高効率の水再生システムは、将来の有人宇宙探査など、また地上では水資源が限られる干ばつ地帯や山岳地帯、被災地等へ応用することが考えられます。

宇宙で実験を行う意義

将来型水再生システムを開発する前に、小型の技術実証システムにより、実際に宇宙で実証実験を行うことで、地上では模擬できない微小重力環境下での各機能を確認します。
地上では重力があるため浮力により液体と気体は分離しますが、微小重力環境では液体の中に発生した気泡は水面に向かわず、いつまでも液体の中に留まります。また、一度機器表面に付着した気泡は表面張力によっていつまでも留まる場合もあります。
このような液中に滞在する微小な気泡(マイクロバブル)が、水処理の工程にどのような影響を与えるかを特に調査し、将来の水再生システムの開発に活用します。

動作原理

次世代水再生実証システムは、大きく3つの処理工程を経て、尿および模擬尿を飲料水品質の水に再生します。

イオン交換

カチオン交換樹脂により、尿中に含まれるマグネシウム(Mg)やカルシウム(Ca)を除去します。
MgやCaは、硬水等にも含まれ堆積物(水垢)の原因にもなるものです。MgやCaを最初の段階で除去することにより、この後の配管やフィルタの詰まりを防ぎます。

電気分解

水の電気分解により、イオン交換処理水中の有機物を分解します。高温高圧で電気分解することにより、難分解性の有機物も完全に分解することが可能です。

電気透析

前工程までに残ったイオンを除去し、飲料水に適した水を生成します。生成した水は、地球に持ち帰り成分分析などを行います。
電気透析の副産物として生成されるアルカリ水と酸性水は、イオン交換樹脂を再生するために使われます。このイオン交換樹脂の再生は自動で行われるため、装置はメンテナンスフリーとなります。

  • 図2. 次世代水再生実証システムの仕組み
  • 図3. 次世代水再生実証システムの概念図

JAXA


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