更新 2024年3月29日
サービス概要
静電浮遊炉(Electrostatic Levitation Furnace: ELF)は、静電気力で試料を炉内で浮遊させながら、非接触で加熱、冷却することができる装置です。試料を保持する容器が不要なため、融点が2000℃を超えるような高融点材料でも、高純度を保ちながら容易に溶融することが可能です。これにより、高精度かつ広い温度領域で熱物性値(粘性、密度、表面張力)を取得することが可能です。
JAXAは地上用と「きぼう」に設置された宇宙用の静電浮遊炉を所有しており、使用する試料によって使い分けています。地上および宇宙の静電浮遊炉を用いた高精度熱物性測定の依頼を承っておりますが、一部測定できない試料等もありますので、まずはご相談ください。
装置スペック
主要緒元
浮遊炉種類 | 試料種 | 試料サイズ | 雰囲気 |
加熱 |
測定温度 | |
---|---|---|---|---|---|---|
地上用 | 静電浮遊炉 |
単体金属、合金 | φ2mm (数十mg) |
真空 (到達真空度約10-5Pa) |
炭酸ガスレーザ200W Nd:YAGレーザ500W |
300~3500℃ |
宇宙用 | 静電浮遊炉 | 酸化物が主な対象 金属、合金、半導体、絶縁体も対応可 |
φ1.5~2.1mmの球状試料 | 空気:最大2気圧(酸素濃度10%) 窒素:最大2気圧 アルゴン:最大2気圧 補足:500Paまで真空引きが可能 |
980nm半導体レーザ 最大光出力40W×4方向 |
300~3000℃ |
それぞれの装置で実施できること
浮遊炉種類 | プロセス中の物性値の取得 | |||
---|---|---|---|---|
表面張力 | 密度 | 粘性 | ||
地上用 | 静電浮遊炉 | ○ | ○ | ○ |
宇宙用 | 静電浮遊炉 | ◎ | ◎ | ◎ |
- ◎:可能/○:金属系は可能
装置紹介
- 【宇宙用装置】静電浮遊炉(Electrostatic Levitation Furnace: ELF)
- 【地上用装置】JAXA/ISAS 石川研究室「静電浮遊炉(ESL)の技術研究」をご参照ください
- 【地上用装置】高真空型静電浮遊炉
料金表
宇宙用静電浮遊炉の場合
サービス | 1種類の試料の密度、表面張力、粘性計測 | |
---|---|---|
ユーザー区分 | 国内ユーザー | 海外ユーザー |
ご利用料金 | 57.6万円 | 93万円 |
支払い条件 | 段階ごと※に前払い | 段階ごと※に前払い |
- ※ 密度、表面張力+粘性、再現性の計測ごとに前払いとなります。
地上用静電浮遊炉についてはお問い合わせください。
プロジェクトの流れ
地上用静電浮遊炉の場合
- 試料を提供いただきます。
- 地上用静電浮遊炉を用いて実験を行い、得られた物理データ(密度、表面張力、粘性)をユーザー様へ納入します。
宇宙用静電浮遊炉の場合
- 試料をISS/「きぼう」へ打ち上げ、実験運用(浮遊・溶融・分析)を行います。
- 宇宙用静電浮遊炉を用いて得られた物理データ(密度、表面張力、粘性)をユーザー様へ納入します。
募集
大学、公的研究機関等に所属する研究者を対象とした【基盤研究利用コース】は、公募時期を限定し募集しています。
詳細資料
タイトル | サイズ | ID |
---|---|---|
[Poster] Electrostatic Levitation Furnace (ELF) Nov.2019,English | [ pdf: 6.3 MB] | 72714 |
【ポスター】静電浮遊炉(ELF)を使用した高精度熱物性測定 2021年12月版 | [ pdf: 18.1 MB] | 67821 |
"Kibo" Utilization Services #2: Materials Science 2020,English | [ pdf: 6.0 MB] | 71620 |
「きぼう」利用サービス紹介2・高融点材料の物性測定と新材料創生 2020年版 | [ pdf: 5.9 MB] | 67879 |
関連トピックス
静電浮遊炉利用テーマ
研究成果
- [プレスリリース] ガラスにならない超高温酸化物液体が持つ特異構造 ―宇宙・地上での実験と大規模理論計算・先端数学の連携による発見―(2020年6月2日)
- 世界初!地上で実現することが極めて難しい高融点酸化物の浮遊・溶融に成功!~静電浮遊炉利用実験:Fragility~(2020年3月 5日)
- 静電浮遊炉を利用して得られた各種材料の熱物性値(密度、表面張力、粘性)が公開されました(2019年9月25日)
ミッション実施・進捗
- 静電浮遊炉を利用した米国の3番目の実験を開始しました!(2023年8月18日) ※英語記事はこちら
- 静電浮遊炉を利用したThermal storage実験が終了しました!(2023年8月 2日)
- 静電浮遊炉を利用したHetero-3D実験が終わりました!(2023年5月25日)
- 静電浮遊炉を利用したMulti shell sphere実験が終わりました!(2023年3月24日)
- マグマを理解するための宇宙実験を行いました! (2022年8月24日)
- 静電浮遊炉を利用した米国の2番目の実験を開始しました!(2021年11月26日)
- ガラスの成り立ちを調べる実験が進行中!~「きぼう」の静電浮遊炉(ELF)が謎に迫ります~(2021年7月15日)
- 静電浮遊炉を利用した米国の実験が終わりました!(2021年3月22日)
- 静電浮遊炉を利用した米国の実験を開始しました!(2020年6月12日)
- 静電浮遊炉の利用実験を開始しました~高温材料の熱物性を測定します~ (2018年9月28日)
テーマ公募
- 2023年度「きぼう」での静電浮遊炉(ELF)を利用した材料研究テーマ募集【基盤研究利用コース】の選定結果について(2024年4月19日)
- 2022年度「きぼう」での静電浮遊炉(ELF)を利用した材料研究テーマ募集【基盤研究利用コース】の選定結果について(2023年3月30日)
- 2020年度「きぼう」での静電浮遊炉(ELF)を利用した材料研究テーマ募集【基盤研究利用コース】の選定結果について(2021年3月10日)
- 2019年度「きぼう」での静電浮遊炉(ELF)を利用した材料研究テーマ募集【基盤研究利用コース】の選定結果について(2020年1月20日)
- 2018年度「きぼう」を使った材料の熱物性値測定・新機能材料創成実験【基盤研究利用コース】搭載試料の募集の選定結果について (2018年10月17日)
データ公開
- 静電浮遊炉で測定した材料物性データを物質・材料研究機構(NIMS)のデータベースで公開開始(2022年12月23日)
- 高温熱物性データベース (物質・材料研究機構(NIMS))
- 分散型熱物性データベース (産業技術総合研究所(AIST))
インタビュー
- 地上では難しいガラスの研究が静電浮遊炉(ELF)で大きく前進! ~チャレンジングな研究計画を提案しよう~(NIMS 主席研究員 小原真司)
- 物性測定以外にも大きな可能性を秘めた静電浮遊炉、幅広い視点からのご提案をお待ちしています!(JAXA 主任研究開発員 織田裕久)
- 古民家を拠点に新しい繊維を開発 その可能性を「きぼう」の実験で確認!(新日本製株式会社 代表取締役 深澤 裕)
- 物質を宙に浮かべて溶かし、未知の性質を探る静電浮遊炉で新たな材料研究の明日を拓く(JAXA 主任研究開発員 猿渡 英樹)
- 宇宙だからこそ学べることがある (JAXA 技術領域リーダー 中村裕広)
ビデオ紹介
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
有人宇宙技術部門 きぼう利用センター
きぼう利用プロモーション室
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