公開 2023年3月24日
2019年度「きぼう」での静電浮遊炉(ELF)を利用した材料研究テーマ募集【基盤研究利用コース】として選定された「過冷却液体合金の分相と多重合金球形成過程の解明(Multi shell sphere)※1」テーマの宇宙実験が、2023年3月に終わりました。
今回の実験において、鉄-銅合金の浮遊・溶融に成功し、その分離・凝固過程の温度変化を取得することができました。現在、正木教授率いる研究チームで実験データを基にした解析作業を行っています。今後、実験後の試料を地上で回収し鉄-銅合金の多重合金球が形成できているか確認します。
本研究は、静電浮遊炉などを利用して、比重差による対流の無い環境下で鉄-銅合金の過冷却液体の液相-液相分離を発生させ、その分離過程や凝固過程の温度変化を精密に追跡することを目的としており、過冷却状態での高精度の相図を得てシミュレーションに活用することで、新たな物質や材料の探索につながることが期待されます。
- ※1 過冷却液体合金の分相と多重合金球形成過程の解明(Multi shell sphere)
- 研究代表者正木 匡彦(芝浦工業大学 教授)
- 実験目的 微小重力下で鉄-銅合金の過冷却液体の液相-液相分離を発生させ、その分離過程や凝固過程の温度変化を精密に追跡します。
研究代表者コメント
鉄と銅という身近な金属ですが、その合金を宇宙で浮かせて融かすのは思いのほか難しく感じました。JAXAの静電浮遊炉チームの皆さんに加熱制御の仕方を工夫していただき、実験を成功裏に終了することができました。現在、温度や画像のデータをもとに解析を進めています。宇宙からの試料の帰還とその後の分析が楽しみです。
※ 特に断りのない限り、画像クレジットはJAXA