概要
JAXAが主催する、第4回「きぼう」ロボットプログラミング競技会(Kibo Robot Programming Challenge: Kibo-RPC)※1は2023年2月20日から参加者の募集をKibo-RPC参加国・地域で行い、過去最多の12か国・地域より421チーム、1685人の応募がありました(表1)。今回のKibo-RPCでは、予選会ではシミュレーション環境上で、決勝大会では実際に「きぼう」船内でドローンを動かして、ゴールに到達するまでの時間とレーザ照射の正確性を競います。各国・地域で行われた予選会では、複数設置されたターゲットのうち、目標となるターゲットが時間とともにランダムに変化するルールで、変化する順番などの条件が異なる10パターンのシミュレーションを実行し、10回分のスコアの平均値で順位を決定しました。
表1. Kibo-ABCメンバー国・地域および米国、UNOOSAからの参加状況(アルファベット順)
国・地域名 | チーム数 | 参加人数 |
オーストラリア | 3 | 19 |
バングラデシュ | 74 | 299 |
日本 | 27 | 114 |
マレーシア | 12 | 54 |
ネパール | 1 | 10 |
シンガポール | 6 | 23 |
台湾 | 29 | 140 |
タイ | 182 | 718 |
UAE | 8 | 43 |
ベトナム | 1 | 4 |
アメリカ合衆国 | 28 | 111 |
UNOOSA(国連宇宙部) | 50 | 150 |
合計 | 421 | 1685 |
各国・地域の予選について
各参加国・地域の予選期間である2023年6月末から7月中旬の間に、各国・地域の担当機関が主催する予選会が開催されました。中には大きなイベントとして予選会を行った国や地域もあり、大変盛り上がった様子が報告されています。
予選会イベントを行った国・地域からのレポートや各予選の優勝チームについて、アルファベット順で紹介します!
予選会イベントを行った国・地域からのレポートや各予選の優勝チームについて、アルファベット順で紹介します!
(1)オーストラリア
複数チームの参加応募はありましたが、残念ながら予選会用にプログラムを提出できたチームは1チームのみでした。そのため、予選会を行わず、担当機関が予選用のシミュレーション環境でプログラムを実行し、Dream Roverが正式に代表チームとなりました。
オーストラリア優勝チーム:Dream Rover
(2)バングラデシュ
バングラデシュでは担当機関が予選会用のシミュレーション環境でプログラムを実行し、Team Paragonが優勝しました。後日、優勝者を表彰するオンラインイベントが開催される予定です。
バングラデシュ優勝チーム:Team Paragon
(3)日本
日本の国内予選イベントはオンラインで開催し、学生はリモートでの参加となりました。予選会の前に、参加者のプログラムはJAXAが事前にシミュレーション環境で実施し、イベントでは平均スコアの実施結果をもとに表彰をしました。予選会終了後、オンラインのワークショップを開催し、JAXA職員、東京大学の中須賀教授やInt-Ball2開発関係者による講演を行い、Q&Aコーナーでは参加者同士での活発な議論や交流が行われました。
日本優勝チーム:Eager Hoper
(4)マレーシア
マレーシアでは予選イベントを行わず、担当機関が予選会用のシミュレーション環境でプログラムを実行しました。結果はソーシャルメディア等で発表し、優勝はZetsuboに決まりました。予選期間中にイベントを開催できなかったものの、優勝チームは、決勝イベント前にマレーシア宇宙庁(MYSA)へ招待され、施設見学をする予定です。
マレーシア優勝チーム:Zetsubo
(6)ネパール
ネパールは残念ながら、参加者の準備が整わなかったため、国内予選会は開催されませんでした。
(6)シンガポール
複数チームの参加応募はありましたが、残念ながら予選会用にプログラムを提出できたチームは1チームのみでした。そのため予選会を行わず、担当機関が予選用のシミュレーション環境でプログラムを実行し、SST 1が正式に代表チームとなりました。
シンガポール優勝チーム:SST 1
(7)台湾
台湾ではオフラインで予選イベントを開催し、独自の評価基準(プログラムのシミュレーション結果:70%、予選会当日のプレゼンテーション:20%、参加者が作成した、チームや戦略紹介のプロモーションビデオ:10%)で審査を行い、順位を決定しました。結果はFlying Unicornsが優勝しました。
台湾優勝チーム:Flying Unicorns
(8)タイ
タイでは予選イベントを行わず、担当機関が予選会用のシミュレーション環境でプログラムを実行し、結果をHPやソーシャルメディア等で発表しました。そして優勝はGalactic4に決まりました。
タイ優勝チーム:Galactic4
(9)UAE
UAEでは予選イベントを行わず、担当機関が予選会用のシミュレーション環境でプログラムを実行し、AUS-IEEE-RASが優勝しました。優勝チームの発表はISSに滞在しているUAE宇宙飛行士から行われ、激励の言葉が送られました。
UAE優勝チーム:AUS-IEEE-RAS
(10)ベトナム
ベトナムは残念ながら、参加者の準備が整わなかったため、国内予選会は不開催となりました。
(11)アメリカ合衆国
アメリカでは、担当機関が予選会用のシミュレーション環境でプログラムを実行し、予選イベントはオンラインで開催しました。イベントではスティーブン・スワンソン元宇宙飛行士から順位の発表がされ、Team Salcedoが優勝しました。
Team Salcedo
(12)UNOOSA(国連宇宙部)
今大会より新たな枠組みとして加えられたUNOOSA International Slotでは予選イベントを行わず、担当機関が予選会用のシミュレーション環境でプログラムを実行しました。その結果と各チームのプレゼン内容から、インドネシアの大学生チームORION が優勝しました。
UNOOSA優勝チーム:ORION
今回の各国・地域の予選会で優勝したチームは国際宇宙ステーション(ISS)での軌道上決勝大会への参加の切符を手にしました。軌道上決勝大会では、今回優勝した学生のプログラムをISS船内ドローンのAstrobeeに実際にインストールし、ゲームミッション完了の早さやリーク箇所の修復個数を競い合います。現在、各国・地域の代表チームはプログラムの改修を行っており、軌道上決勝大会に向けて最終チェックを行っているところです。10月頃に軌道上決勝大会が開催されますので、どのチームが優勝するのか、ぜひ彼らの勇姿を楽しみにしていてください。
また今回残念ながら決勝大会に進めなかったチームには、この機会に学んだことや経験したことを今後に活かし、様々な方面でご活躍されることを期待しています。Kibo-RPCは来年も実施する予定なので、学生の方々はぜひチャレンジしてみてください!
表2. 各国・地域代表チーム一覧(アルファベット順)
国・地域名 | 代表チーム |
オーストラリア | Dream Rover |
バングラデシュ | Team Paragon |
日本 | Eager Hoper |
マレーシア | Zetsubo |
ネパール | - |
シンガポール | SST 1 |
台湾 | Flying Unicorns |
タイ | Galactic4 |
UAE | AUS-IEEE-RAS |
ベトナム | - |
アメリカ合衆国 | Team Salcedo |
UNOOSA | ORION |
※1 Kibo-RPC
Kibo-RPCは、日米オープン・プラットフォーム・パートナーシップ・プログラム(JP-US OP3)を通じた日米協力に基づいて、アジア・太平洋地域における「きぼう」利用の促進とSDGsへの貢献(人材育成)を目的に、JAXAとNASAが協力して取り組んでいる活動です。本活動を通じて、同地域の学生に宇宙でのロボット操作やコンピュータプログラミングに関する教育機会を提供しています
関連リンク
※特に断りのない限り、画像クレジットは©JAXA