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「きぼう」でできること

宇宙空間というとくべつな環境を利用して行われているさまざまな実験。その成果はすでに、医療やものづくりなど、数多くの分野で実を結びはじめています

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ここから、たくさんの希望が
生まれています。

これまで「きぼう」では、生命科学や宇宙医学、地球惑星科学、天文学、物質・物理科学といった学術分野や、産業技術分野など、さまざまな実験が行われ、画期的な成果を挙げてきました。そして「きぼう」は、もっと多くの発見や問題解決に貢献できる大きな力を持っています。「きぼう」のこれまでの成果と、未来に向けた新しい試みを、5つのテーマに分けてご紹介します。

01Case

健康長寿社会を支えます。

ISS内の制振装置付きトレッドミル2でトレーニングする若田宇宙飛行士 ©JAXA/NASA

4人に1人が65歳以上の高齢者である日本では、できるだけ長く健康に日常生活を送ること、すなわち健康寿命を延ばすことが求められています。宇宙に滞在すると、健康な宇宙飛行士であっても、骨は骨粗しょう症の患者さんの約10倍、筋肉は寝たきりの人の約2倍の速さで、とても急速に弱っていきます。微小重力環境における加齢変化の加速モデルともいえるこの現象に着目した研究は、骨や筋肉など運動器が衰えるロコモティブ症候群の予防や改善に貢献できると期待されています。

また、対流や沈降が発生しない微小重力環境では、地上より高品質なタンパク質結晶ができます。その高品質な結晶を使うことで、タンパク質のより詳細な構造が分かり、医薬品の開発に役立っています。

今後は、医薬品のターゲットになる膜タンパク質の結晶化や、環境要因によって遺伝子の働きが変化するエピゲノム、組織や臓器の機能を幹細胞などを用いて回復させる再生医療など、新しい実験にも取り組んでいきます。

正常な骨(左)と骨密度が減少した骨(右)(提供:NIH)
「きぼう」で生成された高品質なタンパク質の結晶
02Case

豊かで安心・安全な暮らしを実現します。

「きぼう」の船外実験プラットフォームに搭載された地球観測用小型赤外カメラ(CIRC)によって撮影された夜間の北海道の赤外線画像。赤外線の放射率の違いから物体の温度が分かり、森林火災の検知や火山観測に使用。

地球温暖化、異常気象の頻発、それらに伴う食糧不足……。人類は今、さまざまな問題に直面しています。「きぼう」では、このような問題の解決に貢献し、豊かで安心・安全な暮らしを守るための活動も行っています。例えば、宇宙からの地球観測は、環境変動の予測や広域災害の監視に役立ちます。また、微小重力環境で植物を栽培する実験からは、台風でも倒れにくいイネの誕生などが期待されています。

ISSに搭載されているカナダのロボットアームの技術からは、手術ロボットが生まれ、医療の現場で活躍しています。「きぼう」のロボットアームも遠隔操作で細かい作業が可能な実用ロボットです。その技術は、地上での医療や介護にも応用可能です。

豊かで安心・安全な暮らしの実現への貢献を目指し、もっと多くの方にさまざまな用途や新しいアイデアで「きぼう」を使っていただけるように、手軽に宇宙実験ができる機会を提供する試みも始めています。

「きぼう」から観測したオゾンの分布。オゾン層破壊のメカニズム解明に貢献。
「きぼう」で発芽したイネ。
体を支える役割を持つ細胞壁を調査。
03Case

ものづくりで企業の競争力を高めます。

地上の静電浮遊炉で高温の試料が浮遊している様子。
宇宙では、より帯電しにくい試料での成果を期待。

「きぼう」では、重力がある地上では困難だった物質の創製や物性データの取得が可能になります。例えば、対流や沈降がない環境を利用することで、次世代高性能半導体材料の大型単結晶の生成に成功しています。お酒を熟成させ、まろやかさに寄与すると考えられている高次分子構造が変化するメカニズムを明らかにしようという実験も進行中です。

微小重力環境では、材料を容器に入れずに浮かせることもできます。その特徴を活かして、融点が非常に高い材料を浮かせたまま融かし、物性を測るという新しい技術も開発しました。この技術により、容器からの汚染や影響を受けることなく、高精度な物性測定や材料の生成も可能になります。

「きぼう」での実験で得られたデータは、新たなイノベーションや技術を生み出し、日本のものづくりの競争力を高めることに役立っていきます。

04Case

未踏の宇宙を目指します。

月の本格的な利用の想像図

月や火星などを目指した、1年を超えるような超長期の有人探査が国際的に検討されています。「きぼう」では、地上の技術を取り入れながら、さらなる長期の宇宙滞在に向けた技術開発が進められています。

例えば、小型で消費電力が少なくフィルター交換も不要な水再生システム、宇宙飛行士の遠隔医療システムや、重力がある天体でも動きやすい軽量な次世代宇宙服などです。

日本には宇宙分野以外にも、たくさんの優れた技術があります。それらの技術をさらに積極的に取り入れることで、有人宇宙探査に必要な技術を確立するとともに、国際的にも貢献していきます。

05Case

新たな知的領域を切り拓きます。

X線観測の成果をもとに描かれた、隣接する星のガスを吸い込む巨大ブラックホールの想像図
©NASA / Goddard Space Flight Center / Swift

人類は地球の重力のもとで生まれ、科学技術も“地に足をつけた”研究により発展してきました。ようやく私たちは、地球を飛び出し、重力から解放された宇宙で継続的に実験ができる施設、「きぼう」を手に入れたのです。「きぼう」では、人類の知的好奇心に根差した科学研究も行われています。

例えば、X線による全天の監視、氷の結晶が成長するメカニズムの解明など、いずれも宇宙でしかできない研究です。地表から超高層までの広範囲な大気の観測は、これまでにない新しい学問分野の構築にもつながります。高エネルギー宇宙線の加速のメカニズムや暗黒物質の正体を明らかにする観測も進められます。

「きぼう」では、科学の真理を探究し、宇宙でしかできない新たな領域を切り拓いていきます。

微小重力の特徴

生物の体が変化

重さの負荷がかからないため、筋肉や骨が弱くなります。また、免疫機能が低下するなど、生命活動に遺伝子発現レベルからのさまざまな変化が見られます。その原因や対策を調べることで、骨粗しょう症や免疫機能低下などに対する治療・予防法の確立につながります。

沈降がない

地上では重い物は沈み、軽い物は浮かびます。微小重力環境では、水と油のように比重の違う物でも均一に分散するため、規則性の高い高機能な材料を作製できる可能性があります。

熱対流がない

地上では熱せられた液体や気体は比重が軽くなり、対流が発生します。微小重力環境では比重差による対流は発生しないため、対流に邪魔されて地上ではできないような高品質なタンパク質結晶や材料組織をつくることができます。

容器なしで浮遊

地上では液体をためておくために容器が必要ですが、微小重力環境では容器を用いずに液体を浮遊させることができます。そのため容器からの汚染や影響を受けずに、物質の性質の測定や合成が可能です。