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Space Medicine宇宙医学

Space Medicine
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宇宙医学の目的

宇宙は「微小重力環境」、「宇宙放射線環境」、「閉鎖環境」という、人間にとって非常に過酷な環境です。例えば、国際宇宙ステーション(ISS)のような微小重力の環境では、1Gという地球上の重力が身体にかかることがなくなりますので、骨や筋肉が弱くなります。

また、地球は大気層によって保護されているため宇宙空間を飛び交う放射線が地上にはほとんど届きませんが、ISS滞在中の宇宙飛行士は、地上の半年間分に相当する放射線を1日で浴びていることになります。

さらに、人が宇宙で生活する場所は、狭く制限された空間であり、そこで異なる文化を持つ人たちと一緒に生活することになります。

このようなことから、宇宙の環境は、人間の身体や精神心理状態にたくさんの変化を及ぼします。すなわち、宇宙で安全に生活できるようにするには、解決しなければならない医学的問題が数多くあります。宇宙の環境が健康にどのような影響があるかを研究して、健康に影響を引き起こすメカニズムをつきとめ、対策を生み出す学問を「宇宙医学」と言います。宇宙の環境で受ける健康影響を最小限に抑える努力を行って宇宙での人の健康と体力を維持することが「宇宙医学」の目的です。

宇宙飛行士の健康管理や健康維持のために開発された技術や蓄積された知見は、宇宙での生活や活動に関する問題を解決するだけでなく、地上で暮らす人々のための医学に役立つものもあります。

アトランティス号のミッドデッキで食事をとる
STS-135クルーと第28次長期滞在クルー(飛行7日目) ©JAXA/NASA

宇宙医学のふたつの柱

宇宙医学には、「宇宙飛行士の健康管理運用」、「宇宙医学分野の研究開発」というふたつの柱があります。



制振装置付きトレッドミル2でトレーニングする
若田宇宙飛行士 ©JAXA/NASA

「宇宙飛行士の健康管理運用」は、宇宙飛行士が最高のコンディションで宇宙ミッションに臨めるように、また帰還後に早期に地上の活動に戻れるようにするための支援で、臨床医学に相当します。ISS長期滞在ミッションでは、飛行前、飛行中、飛行後を通して、医学運用チームが宇宙飛行士の健康管理を行っています。健康管理で行うべきことは、「ISS医学運用要求」で定められており、医学検査、運動、環境モニタなどを実施します。また、宇宙食や生活用品も宇宙飛行士が健康的に生活するためには欠かせません。

「宇宙医学分野の研究開発」は、人間の生理機能や精神面が宇宙に行くとどのように変わるのか、対策の効果はどうかなどを調査・研究し、その名の通り研究です。

宇宙滞在中や宇宙からの帰還後の宇宙飛行士の健康維持・健康管理を行うためには、まず、人間の生理機能が宇宙でどのように変化するのかを究明しなければなりません。また、それら生理機能の変化を踏まえ、健康を維持・管理する手法を見出す必要があります。

そのため、ISS長期滞在ミッションでは、宇宙飛行士を研究対象者として各種の医学研究が行われています。また、地上においては、月や火星を目指す将来有人宇宙活動に向け、健康を維持・管理するための技術を獲得するため、各種研究開発も行われています。

「コロンバス」(欧州実験棟)にて自身の採血を行う
若田宇宙飛行士 ©JAXA/NASA

※特に断りのない限り、画像クレジットは©JAXA