概要
第2回「きぼう」ロボットプログラミング競技会(Kibo Robot Programming Challenge: Kibo-RPC)は、2021年2月8日から参加者の募集を行い、11か国/地域より286チーム、905人が参加し、19か国/地域の学生からの応募がありました。(表1、2)。
予選では、各参加チームが作成したプログラムを8つの条件の異なる設定で実行し、最も点数が悪かった実行結果がチームの得点となり、その得点で順位を争いました。
表1. 国/地域別参加チーム数(ABC順)
オーストラリア | 15 |
バングラデシュ | 22 |
インドネシア | 13 |
日本 | 19 |
マレーシア | 12 |
ネパール | 1 |
ニュージーランド | 4 |
シンガポール | 5 |
台湾 | 18 |
タイ | 176 |
ベトナム | 1 |
合計 | 286 |
表2. 参加者の出身地(ABC順)
オーストラリア | ミャンマー |
バングラデシュ | ネパール |
中華人民共和国 | ニュージーランド |
コスタリカ | パラグアイ |
ドイツ | 大韓民国 |
ハイチ | シンガポール |
インド | 台湾 |
インドネシア | タイ |
日本 | ベトナム |
マレーシア |
各国/地域の予選について
2021年6月末から7月中旬にかけて、Kibo-RPCイベントの予選が各国/地域で開催されました。各国/地域の担当機関(Point of contact: POC) により、それぞれ趣向を凝らした予選会が開催され、多くの国で好成績をおさめるチームが多数いて、とても白熱した勝負となり、参加者と共に盛り上がった様子が報告されています。
各国から届いた予選の模様を以下にABC順で記載します。
(1)オーストラリア
開催日:2021年7月9日
イベント
オーストラリアは、オーストラリア宇宙庁とNSW(ニューサウスウェールズ州)チーフサイエンティスト&エンジニアのオフィスから受託しているOne Giant Leap Australia Foundation(OGLA)が担当機関となり、予選会を開催しました。予選会は、オーストラリアの多くの地域でCOVID-19により、ロックダウンしていたため、7月9日にオンラインのバーチャル開催となりました。オーストラリアからは15チームが応募し、そのうちJAXAのシミュレーションサイトで競技に参加できたのは5チームでした。優勝した「Dream Rover」は、シドニーの小中学生のチームで、ほとんどのチームがオーストラリアの大学生である中、Aスコアで優勝しました。インタビューでは、「私たちは宇宙やロボット工学への理解を深めることに興味があるので、このコンテストにはとても熱心に取り組みました」と語っていました。
オーストラリア優勝チーム:Dream Rover スコア A
(2)バングラデシュ
開催日時:2021年8月1日
イベント
バングラデッシュは新型コロナウイルス感染拡大の影響で7月18日に行われたプログラミング決勝大会より前に予選会を開催することができませんでしたが、担当機関が事前にシミュレーション環境にて参加チームのプログラムを実施し、国内の優勝チームを参加者に通知しました。後日行われたバングラデッシュのオンライン予選会では、バングラデシュ、日本、コスタリカ、アメリカの4カ国からゲストスピーカーとして、多数参加し、盛り上がりました。予選会では既に発表された1位以外に上位3位までのチームの表彰も行われました。
バングラデシュ優勝チーム:Enigma Systems スコア A
(3)インドネシア
開催日:2021年7月5日9:00~11:50(WIB)
イベント
インドネシアでの予選会は、オンラインで開催されました。インドネシア航空宇宙研究所(LAPAN)は、イベント前に各参加チームのプログラムを事前にシミュレーション環境で実行して録画し、そのビデオをイベントで上映しました。その後、チーム紹介、LAPANの人工衛星の講演、JAXA職員によるKibo-ABCについての講演を行いました。最後にシミュレーション結果をビデオで再生して実況説明し、上位3チームの表彰を行い、優勝チームはCepheus-2に決まりました。
インドネシア優勝チーム:Cepheus-2 スコア A
(4)日本
開催日時:2021年7月18日12:00~13:00
イベント
日本国内予選の開催報告
日本の国内予選はリモートで開催し、参加者はオンラインでの参加となりました。参加者のプログラムはJAXAが事前にシミュレーション環境で実施し、当日は結果動画と順位発表を行いました。予選会では、有人宇宙技術センターの河合優太研究開発員による講演会が行われ、JAXAの油井亀美也宇宙飛行士、アドバイザーである東京大学の中須賀真一教授によるシミュレーション結果動画の解説後、順位発表が行われました。順位は、3位「Team TUT -Project YashiroAzuki v2.0-」、2位「ASTROSWALLOWS2」、1位「Cosmic Jellyfish」となりました。また予選イベント後には、オンライン交流会を開催し、学生から油井亀美也宇宙飛行士、東京大学の中須賀真一教授へ多くの質問が寄せられ、また学生同士でプログラミングに関する活発な議論が行われました。
日本優勝チーム:Cosmic Jellyfish スコア A
(5)マレーシア
開催日時:2021年7月10日
イベント
マレーシアの予選会は7月10日にオンラインで開催され、予選用に期日までにAPK(Astrobeeを動かすプログラム)を提出できなかった応募チームも予選会に参加し、一緒にイベントを楽しみました。イベントでは、予選出場チームのシミュレーション動画を、最も結果の悪かった最悪値※と結果の良かった最高値を並べて比較しながら上映しました。優勝チームはLemon Treeでした。なお、この結果発表の方法はマレーシアだけであり、学生たちにとって最悪値と最高値の結果を見比べることで改善点を学ぶ、とても貴重な機会となりました。
※競技としてチームの得点となるのは、最悪値のスコアです。
マレーシア優勝チーム:Lemon Tree スコア B
(6)ニュージーランド
ニュージーランドは、複数チームの参加応募はありましたが、残念ながら予選会用にプログラムを提出できたチームは1チームのみでした。
そのため予選会を行わず、担当機関が予選用にシミュレーション環境でプログラムを実行し、ELON'S FANGIRLSが代表チームとなりました。
ニュージーランド代表チーム:ELON'S FANGIRLS スコア C
(7)シンガポール
開催日:2021年7月10日
シンガポールでの予選会は、7月10日にオンラインイベントとして開催され、3チームがAPKを提出して競いました。優勝したのは、南洋工科大学(NTU)の「Descendant of the Sun」でした。
シンガポール優勝チーム:Descendants of the Sun
スコア A
(8)台湾
開催日:2021年7月10日
イベント
台湾の予選会は、オンラインで開催されました。事前に担当機関のNSPOによってシミュレーションを実施した結果と台湾独自に設けたプレゼンテーションセッションの結果の両方の結果を合わせて評価し、順位を決定しました。予選会では、上位3チームが発表され、GeminiPYTWが優勝しました。台湾のシミュレーション結果は予選に参加した大半のチームの得点が最高レベルのAを達成しました。台湾では予選会に先立ち、参加者に対して勉強会を実施し、参加者自身の努力によりこの結果につながりました。なお、台湾では、予選に参加した全チームが予選会用にチームの紹介やプログラムの工夫点などを解説した動画を作成しました。(表3参照)
表3. 台湾の予選参加チーム作成動画
No | Team |
1 | GeminiPYTWYOUTUBE |
2 | Hatsune no FriendsYOUTUBE |
3 | W-WYOUTUBE |
4 | Tom and JerryYOUTUBE |
5 | UndefinedYOUTUBE |
6 | Clash Of WinYOUTUBE |
7 | Taipei Fuhsing Robotics AlphaYOUTUBE |
8 | O__OYOUTUBE |
9 | CK Robotics-XYOUTUBE |
10 | CK Robotics-ZYOUTUBE |
11 | IZUMIYOUTUBE |
12 | WINYOUTUBE |
台湾優勝チーム:GeminiPYTW スコア A
(9)タイ
開催日:2021年7月12日
予選
タイでは、参加チーム数が176チームと多くの応募があったため、独自に1次予選会を2021年6月28日に開催し、2次予選へ進む20チームを決めました。
2次予選では、1次予選を突破した20チームの参加者に対してインタビューを行い、シミュレーションの得点と合わせて優勝チームを決定しました。7月14日に第2次予選会ではタイ国立科学技術開発庁(NSTDA)が開催し、ゲストのJAXA小野敦バンコク駐在員事務所長が挨拶を行いました。表彰式ではIndentation Errorが最優秀賞を受賞し、ほかにも以下の表のとおり、さまざまな賞を授与しました。
チーム名 | |
タイ国内予選優勝賞 | Indentation Error |
競技の速さ第1位 | No.-won |
競技の速さ第2位 | BOT |
最優秀プレゼンテーション賞 | We'll hack NASA with HTML |
中学生ベスト賞 | Indentation Error |
タイ優勝チーム:Indentation Error スコア A
(10)ネパール、ベトナム
残念ながら、ネパールとベトナムはCOVID-19の影響でロックダウンもあり、参加者の準備が整わず、プログラミング決勝大会は辞退となりました。
各国・地域で優勝したチームは、プログラミング決勝大会と軌道上決勝大会に参加する切符を手にし、プログラミング決勝大会では、プログラミングの技術をシミュレーション環境上で競い、軌道上決勝大会では、軌道上のISSで実際に使われているAstrobeeにプログラムをインストールし、実際に速さと精度を競い合います。各国・地域代表チームには軌道上決勝大会に向けてプログラムの改修を行ってもらい、よりよいプログラムを作成してもらいます。今回残念ながら決勝大会に進めなかったチームにも、この機会に学んだことや経験したことを今後に活かし、様々な方面での活躍を期待しています。
関連リンク
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