小型衛星放出機構の概要
小型衛星放出機構(JEM Small Satellite Orbital Deployer: J-SSOD)は、CubeSat規格(10cm×10cm×10cm)および50kg級の超小型衛星を、「きぼう」日本実験棟のエアロックから搬出して放出機構で打ち出し、軌道に乗せるための仕組みのことです。J-SSODは、親アーム先端取付型プラットフォーム、衛星搭載ケース、分離機構などから構成されています。CubeSat規格の放出においては、利用増加に伴い繰り返し使用可能な軌道上装填型衛星放出機構(JEM Small Satellite Orbital Deployer Resuppliable: J-SSOD-R)が導入されました。衛星は打上げケースに搭載され、ISS内でクルーによって衛星放出機構に移設します。なお、放出可能な最大サイズは最大6Uまでに拡張されました。
2018年5月、J-SSODを使った超小型衛星放出プラットフォームは、新たなステップとして、民間事業者2社(SpaceBD(株)、三井物産エアロスペース(株))に事業移管しました。民間事業者による放出サービスは、こちらをご参照ください。
主要諸元
項目 | 概要 |
搭載衛星サイズ | CubeSat規格衛星:1U、2U、3U、4U、5U、6U、W6U※ 50kg級衛星:55×35×55cm |
搭載衛星質量 | CubeSat規格衛星:1Uあたり1.33kg以下、W6Uサイズ衛星は6.8kg以下 50kg級衛星:50kg以下 |
投入軌道 | 軌道高度:380~420km程度(放出時のISS高度による)の円軌道 軌道傾斜角:51.6° |
衛星の弾道係数 | CubeSat規格衛星:120kg/m2以下 50kg級衛星:100kg/m2以下 (放出後の衛星とISSの衝突を防ぐため、衛星をISSより早く落下させる) |
投入方向 | ISS軌道面内、鉛直下向きから後方45度方向 (放出後の衛星とISSの衝突を防ぐため、必ずISS高度より低い軌道に投入) |
投入速度 | CubeSat規格衛星:0.77~1.7m/sec 50kg級衛星:0.4m/sec (衛星質量に依存する) |
軌道周回寿命 | 1年程度(弾道係数/スラッシュ放出高度/太陽活動などに依存) |
※ 1U~6U:縦10cmx横10cm、1U:高さ10cm、2U:高さ20cm、3U:高さ30cm、4U:高さ40cm、5U:高さ50cm、6U:高さ60cm
W6U:縦10cmx横20cmx高さ30cm
J-SSOD搭載衛星に対する詳細な技術要求などは、こちらを参照ください。
J-SSODを利用した超小型衛星放出ミッション
国際宇宙ステーション(ISS)の各モジュールの中で唯一、エアロックとロボットアームを合わせ持つ「きぼう」の機能を活用し、「きぼう」の船外から超小型衛星を放出します。
ミッションの流れ
- 衛星専用の搭載ケースに搭載した超小型衛星は、補給船の搭載品としてISSに運び込みます。
- 「きぼう」の船内で、衛星搭載ケースを親アーム先端取付型実験プラットフォームに取り付けます。次に親アーム先端取付型実験プラットフォームをエアロックに取り付け、放出機構のチェックアウト、前準備を実施します。
- 衛星搭載ケースを取り付けた親アーム先端取付型実験プラットフォームをエアロックから船外に搬出します。ロボットアームで親アーム先端取付型実験プラットフォームを把持した後、放出方向へ移動します。
- その後、親アーム先端取付型実験プラットフォームをISS進行方向と逆側、下方45°に向けた後、衛星搭載ケース内のバネにより衛星を放出させます。
小型衛星放出機構で打ち出される衛星は、ロケットで直接打ち上げられる衛星に比べて、以下のメリットがあります。
- ISS向けの船内貨物として打上げられるため、ロケットに搭載して打上げる場合と比較して、震動等の打上げ環境条件が緩和
- 各国のISS向け輸送機が利用可能なため、打上げ機会が多い
これまでに放出された超小型衛星
「きぼう」利用サービス紹介:超小型衛星の放出
2018年5月、J-SSODを使った超小型衛星放出プラットフォームは新たなステップとして、民間事業者2社を選定し、放出枠の7割を民間に移管しました。
これにより、研究開発や人材育成のみならず、商業利用を目的とした衛星放出も可能となります。「きぼう」からの衛星放出に興味がある方は民間事業者までお問合せください。
また、JAXAは今後、国連宇宙部や、国内大学と協力し、国/宇宙機関間の連携による衛星放出ミッションに特化していくことで、引き続き、国際貢献等で成果を創出していきます。
※特に断りのない限り、画像クレジットは©JAXA