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2022.06.24
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アジアントライゼロG 2022 実験テーマ決定

  • きぼうアジア利用推進室(KUOA)
  • 「きぼう」利用のご案内
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概要

国際宇宙ステーション(ISS)/「きぼう」に2022年秋から滞在する若田光一宇宙飛行士による青少年向け簡易宇宙実験(Asian Try Zero-G 2022)のテーマを、Kibo-ABC* 加盟国・地域のうち8か国・地域** で募集し、今回、日本でも初めて公募をしました。その結果、参加国・地域の学生、若手技術者/研究者480名から201件の応募がありました。うち、日本では小学生から大学生まで25名から16件の応募がありました。各参加国・地域で一次選考を実施し、その後、参加国・地域全員による最終選考を経て、以下の6つの実験テーマが選定されました。(詳細は最終選考欄にて記載)

選定テーマ(国・地域名アルファベット順)

日本 粉体ガスの自己組織化と3次元パターン形成
フィリピン 微小重力環境におけるダンベル型物体の回転運動
シンガポール 宇宙二重振り子
台湾 微小重力環境における水の渦の観察
タイ 微小重力環境における水球擾乱の観察
タイ 微小重力環境における毛細管現象の観察
* Kibo-ABC(「きぼう」を利用したアジア・太平洋協力イニシアチブ)は、アジア・太平洋地域宇宙機関会議(APRSAF)に設置されたイニシアチブで、アジア・太平洋地域における「きぼう」利用の推進と、その価値を共有することを目的としており、14か国・地域から19の機関が加盟しています。
** 参加国・地域(アルファベット順): オーストラリア、バングラディシュ、日本、ネパール、フィリピン、シンガポール、台湾、タイ

一次選考について

選考は一次選考と最終選考の二段階に分けて行われました。一次選考として、各参加国・地域で共通の評価シートを使い、科学的意義・新規性、安全性、運用性、実現性などの観点で行いました。その結果、5か国・地域から24件のテーマが選ばれました。

一次選考の事例(タイ)

今回、応募件数がもっとも多かったタイでは、国立科学技術開発庁(NSTDA)がAsian Try Zero G 2022プログラムを運営し、NSTDA副長官、NSTDA宇宙教育プログラムマネージャー、タイ国立遺伝子生命工学研究センター(BIOTEC)とタイ国立電子コンピューター技術研究センター(NECTEC)の専門家から構成された委員会が審査しました。
タイでの一次選考の様子(©NSTDA)

最終選考について

事前に「きぼう」船内で実施している科学実験テーマの研究者や専門家にも御意見を頂き、またAsian Try Zero-Gの実験を「きぼう」船内で実施した油井・金井宇宙飛行士をはじめ、「きぼう」船内を知り尽くしたJAXAのスペシャリストも技術的実現性などの視点から、最終選考をサポートしました。
最終選考会は、各参加機関が出席して行いました。各国・地域から提案された24テーマについて、共通の評価シートと各参加機関の担当者からの発表を踏まえ、審議した結果、6つの実験テーマ*** を選定しました。
選定した実験テーマは、若田宇宙飛行士により実施される予定です。
油井亀美也宇宙飛行士、金井宣茂宇宙飛行士との技術的意見交換会
※金井宇宙飛行士はリモートで参加
*** 選出された6つの実験を選定ポイントと共に以下に示します。

アジアントライゼロG 2022選定テーマ

※カテゴリー1:18歳以下の個人またはグループ
※カテゴリー2:27歳以下の個人またはグループ

粉体ガスの自己組織化と3次元パターン形成

日本(カテゴリー2)筑波大学・東京大学・日本獣医生命科学大学 / 3人グループ

粉体ガス(※)は、放置しておくと粒子同士の衝突によりエネルギーを失い、 粒子が次第に凝集してクラスタを形成する。これを銅ビーズ(銅粒子)を用いて再現実験を行う。
(※) 多数の粒子が気体内を激しく動き回っている系のことを、粉体ガスと呼ぶ。

<選定ポイント>
本テーマは、軌道上で行う簡易でありながら、十分な科学的見地に立った検証を計画しており、科学的な成果が期待される優れた提案である。

微小重力環境におけるダンベル型物体の回転運動

フィリピン(カテゴリー2)University of Philippines

「ダンベル型」の回転体は、縦軸を中心に横軸に沿って回転することができ、主な慣性モーメントは2つしかないため、主軸に沿った回転は安定し、ジャニベコフ効果※は発生しないと考えられる。予め重心位置が異なっていることが分かっている2つの剛体を使ってこれを検証する。(以前ペンチを使って再現している映像があるが比較検証は初)
※ジャニベコフ効果:回転軸を一定にしばらくすると向きが180度反転し、さらにしばらくするとまた元の向きに180度回転する現象。

<選定ポイント>
本テーマは、軌道上での回転物体の挙動やジャニベコフ効果を、重心位置の異なる2つの剛体によって体系的に検証することを目指したテーマである。

宇宙二重振り子

シンガポール(カテゴリー1)Catholic High School / 4人グループ

二重振り子は自由度が高まるために地球上では予測不能な動きを示し、カオスの典型的なケースであることが知られている。微小重力環境下で、二重振り子の特定の位置(関節部、第二節の中間部、端点部)に力を加えたとき、どのような動きを示すのか、より無秩序な動作をするのか、観察する。

<選定ポイント>
本テーマは、これまでAsian Try Zero Gでは実施したことがない提案である。地上での動作に対し、微小重力環境での予測不可能な状態観察が期待される。

微小重力環境における水の渦の観察

台湾(カテゴリー2)国立中央大学

地上ではボトルに入れた水を回転させると水渦が起きるが、下向きの力がない微小重力環境では水渦が発生するのか、回転体の水はどのような挙動を示すのか検証する。
長手方向を軸に円筒形のボトルを微小重力環境で回転させると、回転後は遠心力のみとなり、水がボトルの側面に張り付き、中空状態となることを予測する。円筒形を別の軸で回転させると、水がボトル中央部に集まる状態となることを予測する。また、回転停止後の動きを観察する。

※シンガポールからも類似の提案があり、台湾チーム主導の下、実験結果の情報共有等が行われる予定。

<選定ポイント>
本テーマは円筒状のボトルを使って2通りの回転における水渦を観察する提案である。リソースの限られる軌道上で、1つのボトルを有効に使った提案である。

微小重力環境における水球擾乱の観察

タイ(カテゴリー1)Mahidol Wittayanusorn School

微小重量環境の水球は表面張力の影響が顕著になって完全な球形となる。この水球に対し、二つの実験を行い水球の状態を観察する。一つ目の実験は、2つの異なる質量の球状剛体(ボール)を用いることで運動エネルギーを変え、表面張力で球形を形成する水球に対して衝突させた際の水と剛体の状態を観察する。二つ目の実験では、球形を形成する水球に対して角速度を有する剛体(コマ)を接触させ、コマと水球の状態を観察する。

<選定ポイント>
これまでのAsian Try Zero Gでは比重の異なる2つの液体の動態を観察するものはあったが、本テーマは液体と固体の動的状態を観察する初の提案である。

微小重力環境における毛細管現象の観察

タイ(カテゴリー2)Thammasat University

微小重力環境における毛細管現象を高さの計測によって検証する。毛細管現象によって生じる高さは、液体の密度(𝜌𝜌)、表面張力(T)、チューブの半径(r)、接触角(𝜃𝜃)、重力による標準加速度(g)などパラメーターによると考えられ、地上よりも重力影響が極めて軽微な微小重力環境では、地球の1.11倍の高さになると試算される。これを径の異なるマイクロキャピラリーとストローを使い、この試算の合理性を検証する。

<選定ポイント>
微小重力環境における毛細管現象についてはこれまでも多数の実験が行われてきたが、本テーマでは事前に十分な理論的仮説を検討しており、現象を定量的に解析する提案である。

関連リンク

※特に断りのない限り、画像クレジットは©JAXA