インクリメント65

更新 2021年12月17日

インクリメント65期間

2021年4月18日 ~ 2021年10月17日

インクリメント65キーメッセージ

探査/科学/民間利用のスクラムで新しい時代を切り拓く
~超長期有人滞在に向けた技術的・科学的成果創出とプラットフォーム拡大による「きぼう」利用多様化・商業化の促進~

インクリメントマネージャ紹介

山本 紘史
インクリメント65マネージャ

インクリメント65は野口宇宙飛行士と星出宇宙飛行士の国際宇宙ステーション(ISS)同時滞在という記念すべきイベントとほぼ時を同じくして幕開けました。その後、星出宇宙飛行士は日本人2人目のISS船長を約5か月間務め、軌道上の宇宙飛行士だけでなく、我々地上のスタッフも含めてワンチームにまとめあげました。2021年7月末にはロシアの多目的実験モジュール「ナウカ」がISSにドッキングしました。ドッキング後、ナウカの推進システム(スラスタ)の計画外の噴射によりISSの姿勢が傾くという事態に対し、星出ISS船長をはじめとするクルーと地上管制員の連携でISSの姿勢制御を回復したということがありましたが、まさにワンチームの好例と言えると思います。

また、星出宇宙飛行士は「きぼう」日本実験棟で多くの利用ミッションを実施しました。その一つが「袋型培養槽技術の実証実験 」です。今回は袋内でレタスを栽培する実験が行われましたが、本技術は将来の月探査等での食糧生産への活用が期待されています。
その他にも細胞生物学に係る3テーマ、細胞の重力センシング機構の解明を行う「Cell Gravisensing」、筋萎縮の予防に有効なバイオ素材の探索「Anti-Atrophy」、宇宙での哺乳類繁殖の可能性を調べる「Space Embryo」を集中して実施しました。
静電気力で試料を浮遊させ、レーザ加熱により非接触で溶融・凝固を行い、材料物性を調べる「静電浮遊炉(ELF)」利用ではこれまでにないペースで多くの価値ある実験を実施することができました。

インクリメント65では広報や教育にも注力しました。文部科学省が推進するGIGAスクールの一環として、全国の児童を対象に、ISSでのリアルタイム実験を含んだ「宇宙の水と食事」をテーマとした特別講座を実施しました。星出宇宙飛行士は、軌道上から、コーヒーと牛乳で水玉実験を行い、また、児童からの宇宙での食器のアイデアについてコメントするなど、地上の児童とのリアルタイムの交流がなされました。
「きぼう」ロボットプログラミング競技会の第2回の軌道上決勝も実施しています。本競技会では参加者がJAXAとNASAが提供するプログラミング開発環境を利用して、「きぼう」内でISS船内ドローンを自律的に動作するプログラムを作成し、その技術を競いました。予選を勝ち抜いた日本を含むアジア・太平洋地域の学生が参加者です。星出宇宙飛行士は軌道上から競技会の準備や競技のサポートを行い、参加チームの中からCrew Awardを選びました。

ここにあげた以外にも軌道上の宇宙飛行士と地上側がスクラムを組んで非常に多くのミッションを実施しました。今後、利用ミッションの成果が地上での解析・評価を経て生みだされます。どのような成果が出るのか今から楽しみでなりません。

また、インクリメント65が完了した後には、新たな日本人宇宙飛行士候補者の募集 が開始されています。今回募集する宇宙飛行士候補者は、ISSや「きぼう」をはじめ、「ゲートウェイ」や月面が活動の場となることが見込まれます。
引き続き「きぼう」利用と日本の有人宇宙開発にあたたかいエールをよろしくお願いいたします。

インクリメント65のインクリメントマネージャを担当する山本紘史です。
本インクリメントではISS長期滞在中の野口宇宙飛行士とスペースX社が開発した米国商業有人宇宙船「クルードラゴン」の運用2号機に搭乗してISSに向かう星出宇宙飛行士が軌道上で同時滞在する可能性があります。実現すれば、日本人2人がISSに同時滞在するのは野口宇宙飛行士と山崎宇宙飛行士以来2回目となります。歴史的な瞬間にIMとして立ち会えることに今から胸が高鳴っています。

今、日本の有人宇宙開発は大きく潮目が変わる時期を迎えています。2019年10月に日本が米国提案の国際宇宙探査に参画することが、内閣総理大臣を本部長とする宇宙開発戦略本部により決定されて以来、有人の国際宇宙探査に向けた機運が高まってきています。日本も日本人宇宙飛行士の月周回有人拠点「ゲートウェイ」への搭乗を見据え、2021年秋ごろを目途に宇宙飛行士候補者の新規募集を開始する予定です。
加えて、ISSの2030年までの運用延長の議論もなされているところです。民間の有人宇宙活動への参画、宇宙利用もより活発化してきています。 このような状況から今後の宇宙活動の姿の一つとしては探査と地球低軌道利用が両輪となり、そこへ民間が積極的に参加していくことが考えられます。 また、星出宇宙飛行士は日本人2人目のISS船長を務める予定になっています。日本の国際プレゼンスが高まっていることをひしひしと感じます。

翻って本インクリメントでの「きぼう」利用については超長期有人宇宙滞在技術・探査技術獲得のための “探査” 領域(JAXA事業利用と呼んでいます)、国の課題解決型研究・学術研究の推進のための “科学” 領域(同じく公的利用と呼んでいます)、民間利用オープンイノベーションの推進のための “民間利用” 領域(同じく商業活動利用)のそれぞれの領域でバランス良く成果を出していきたいと考えています。
 “探査” では宇宙での水再生技術実証を行う「JEM Water Recovery System」、 “科学” では細胞の重力センシング機構の解明を行う「Cell Gravisensing」や筋萎縮の予防に有効なバイオ素材の探索「Anti-Atrophy」、新しいタンパク質結晶化法や温度維持輸送技術の実証を行う「MTPCG#6F」、 “民間利用” では超小型衛星放出を行う「J-SSOD」などを引き続き実施する予定です。
この3つの活動領域は完全に独立しているわけではなく、例えば “科学” の成果が “探査” につながり、また共通の実験装置・研究開発基盤(プラットフォームと呼んでいます)を使用して “科学” と “民間利用” の利用テーマが成果を出しています。三本の柱が互いに支えあい、 “スクラム” を組んで前に進む推進力を生みだしています。
さらに本インクリメントでは星出宇宙飛行士長期滞在中ということで広報や教育あるいは国際協力にも力を入れています。本インリメントでは2020年10月に実施して好評を得た「きぼう」ロボットプログラミング競技会の2回目を実施する予定です。本競技会では参加者がJAXAとNASAが提供するプログラミング開発環境を利用して、「きぼう」内でISS船内ドローンを自律的に動作するプログラムを作成し、その技術を競います。予選を勝ち抜いた日本を含むアジア・太平洋地域の学生が参加する競技会です。

ウィズコロナ・アフターコロナの時代に「きぼう」から生まれる成果・明るい話題を届けたいと思います。 “新しい時代を切り拓く” ミッションに是非ご期待ください。

利用ミッション(実施)

超小型衛星放出プラットフォーム

船外ポート利用プラットフォーム

新薬設計支援プラットフォーム

健康長寿研究支援プラットフォーム

無容器処理技術を利⽤した材料研究への貢献(革新的材料研究⽀援プラットフォーム)

新プラットフォーム形成(民間利用の拡大)

宇宙医学

国際協力・STEM教育

科学研究促進(生命医科学)


  • 利用ミッションは、「きぼう利用戦略」の具体的取り組みの分類に基づいたマッピング(図1)を基に優先順位を定めています。
図1 インクリメント65利用ミッションの「きぼう利用戦略の具体的取り組み」マッピング

国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
有人宇宙技術部門 きぼう利用センター
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