高品質タンパク質結晶生成実験の可能性を広げる技術実証実験(JAXA MT PCG#6F)を開始しました

公開 2021年6月21日

6月18日に、星出宇宙飛行士が「きぼう」日本実験棟内で高品質タンパク質結晶生成実験(Protein Crystal Growth: PCG)のJAXAの技術実証実験(JAXA MT PCG#6F)を開始しました。この技術実証実験は、タンパク質を凍結して打ち上げ、軌道上で融解後に結晶化を開始するものです。宇宙実験実施が困難であった不安定な創薬標的タンパク質の結晶化を可能とし、適用できるサンプルの幅が広がり、創薬需要に応えることが期待されます。

創薬研究において精密構造情報の必要性は高いのですが、創薬標的タンパク質の多くは安定性が低く、結晶化開始前に壊れてしまう可能性があります。そのため、ロケットなどの打上げスケジュールの変更が実験にとって致命的になることがあります。JAXAが新たに開発した凍結融解法は結晶化開始直前までタンパク質サンプルを凍結状態で保管し、軌道上で解凍、結晶化開始操作を行うことで、不安定なタンパク質が壊れてしまう可能性を極限まで低減することが可能となります。宇宙実験実施が困難であった不安定な創薬標的タンパク質の結晶化を可能とし、適用できるサンプルの幅が広がり、創薬需要に応えることが期待されます。

実験機材および実験サンプルは2021年6月4日2時29分(日本時間)に米国SpaceX社のドラゴン補給船(SpX-22)にて国際宇宙ステーション(ISS)に打ち上げられました。軌道上で凍結サンプルを融解させ、6月18日(日本時間)に星出飛行士が結晶化を開始しました。

今回の実験サンプルは、JAXAが新規開発した真空断熱容器に入れ、電力を使用せずに20℃に温度維持して持ち帰ります。2018年に実施した、宇宙ステーション補給機「こうのとり」7号機(HTV7)搭載の小型回収カプセル技術をさらに高度化・小型化し、新たに試料輸送用として開発したものです。今回の実験はその技術実証も兼ねています。これまで、ISSへの往復時の温度維持はNASA の冷蔵輸送サービスに頼っていましたが、本容器開発によって、JAXAが自前で温度維持を行うことが可能となり、実験サンプルの往来の選択肢を大幅に拡大することができます。
真空断熱容器に入れた実験サンプルは、7月初旬にドラゴン補給船で地上に回収する予定です。

実験容器。内部にタンパク質溶液と結晶化溶液を充填し、結晶化開始まで凍結保存をしています。
結晶化開始時に使用する小型遠心機。実験容器内の溶液を解凍後に、遠心機にかけることによって2液を混合し、結晶化を開始する仕組み。
新規開発した試料輸送用真空断熱容器
※特に断りのない限り、画像クレジットは©JAXA

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