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2025.01.23
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第30回アジア・太平洋地域宇宙機関会議(APRSAF)でのKibo-ABCワークショップの開催報告

  • きぼうアジア利用推進室(KUOA)
  • 「きぼう」利用のご案内
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2024年11月25日にオーストラリアのパースにて、オーストラリア宇宙庁(ASA)のTony Robinson国際パートナーシップ部門長と JAXAの白川正輝 宇宙環境利用推進センター長が議長を務め、Kibo-ABC(Asian Beneficial Collaboration through “Kibo” Utilization)ワークショップが開催されました。オンライン参加者を含め、13か国・地域の18機関から52名が参加しました。

Kibo-ABCはアジア・太平洋地域宇宙機関会議(Asia-Pacific Regional Space Forum: APRSAF)の宇宙フロンティア分科会(Space Frontier Working Group: SFWG)により2012年に創設されたイニシアチブで、アジア・太平洋地域における「きぼう」の利用を促進し、「きぼう」利用の価値を共有することを目的としています。

Kibo-ABCワークショップはAPRSAFの開催に合わせて毎年開かれており、今回はオンラインとパース現地のハイブリッド開催となりました。Kibo-ABC加盟国・地域のメンバーは毎月WEBミーティングを行っていますが、このワークショップではメンバーが一堂に集まり、Kibo-ABCの各種プログラム「「きぼう」ロボットプログラミング競技会(Kibo-RPC)」「アジアントライゼロG(ATZ-G)」「アジアの種子(SSAF)」について報告が行われました。また、今回はスペシャルゲストとして第4回Kibo-RPCとアジアントライゼロG 2023を軌道上で担当した古川聡JAXA宇宙飛行士も参加し、軌道上での映像を交えて講演しました。

図1. Kibo-ABCワークショップ出席者による集合写真

JAXA古川聡宇宙飛行士によるミッション報告

古川宇宙飛行士は2023年8月26日から2024年3月12日までの約半年間、国際宇宙ステーション(ISS)で活動しました。この半年間の間に古川宇宙飛行士はKibo-ABCの活動として第4回Kibo-RPCの軌道上決勝大会とアジアントライゼロG 2023の軌道上での簡易物理宇宙実験/エクササイズを担当しました。今回のミッション報告では、軌道上での活動をまとめた動画を見ながら担当したミッションの感想やその当時に感じていたことを講演しました。Kibo-ABCメンバーにとっても実際に軌道上でミッションを担当した宇宙飛行士から話を聞く非常に貴重な経験となりました。
図2.ミッション報告をする古川聡宇宙飛行士

「きぼう」ロボットプログラミング競技会(Kibo-RPC)

「きぼう」ロボットプログラミング競技会(以下、Kibo-RPC)は、宇宙飛行士をサポートするために開発されたISS船内ドローンであるInt-Ball2(JAXA)やAstrobee(NASA)をプログラミングすることで、さまざまな課題を解決する速さと正確性を競う教育プログラムです。今回で第5回目となったKibo-RPCに参加した13か国・地域のうち、12か国・地域から各国・地域で開催されたイベントの共有やメディア等での報道状況報告がありました。昨年に引き続き、解説動画の作成やオンラインイベント、勉強会を通して人材育成をより促進した参加国・地域もあり、成績上位者へのインセンティブ授与など各国・地域独自の取り組みが共有されました。また、今大会はAstrobeeとInt-Ball2が共演した初めてのミッションであったことがJAXAから報告されました。一方で、初心者にとって課題として出されるプログラミングの難易度が高いという意見もあったことから、初心者向けのフォローの仕方、参加者のカテゴリー分けの可能性について意見が交わされました。そして最後に、次年度に第6回大会が開催予定であることがアナウンスされました。

アジアントライゼロG

アジアントライゼロGとはアジア・太平洋地域における宇宙環境利用の普及を図るため、軌道上での簡易物理実験アイデアを各国の青少年を対象に募集し、選定された実験をISSに長期滞在中のJAXA宇宙飛行士が「きぼう」で行うプログラムです。本ワークショップ内ではアジアントライゼロG 2023 に参加した8か国・地域から宇宙実験の様子や実験提案者による成果報告会の様子、メディア等での報道状況が報告されました。また、軌道上で実施された実験を提案した参加者がその結果を学会やイベント等で発表されている様子も共有されました。そして次回開催予定のアジアントライゼロG 2025に関して、その進捗状況が共有されました。また、このセッションでは採択テーマを決める際の点数の付け方や、将来にわたる宇宙環境の継続的な利用に関するアイデアについて議論が行われました。

アジアの種子(SSAF)

「アジアの種子(SSAF: Space Seeds for Asian Future)」は、Kibo-ABCのプログラムのひとつで、アジア・太平洋地域の若手研究者や青少年に、宇宙実験や宇宙環境利用研究について学ぶ機会を提供するために行われています。特にこのプログラムでは、植物を使用した実験を行うことで宇宙生物学を学ぶ機会を広く提供しています。今回のAPRSAFではアジアの種子プログラムの一つであるアジアン ハーブ イン スペース(以下、AHiS)についてフィリピンと日本から報告が行われました。フィリピンからは本プログラムに関連したイベント(宇宙漫画コンテストComic Strips※1と種子引き渡し式を開催したことについて発表されました。日本からは、宇宙でバジルを育てたことに因み、バジルのレシピコンテストや研究発表の進捗について発表されました。このセッションではオーストラリア、日本、タイから現在進めている新しいプロジェクトについても紹介され、そのプロジェクトについて議論が行われました。詳細については決まり次第アナウンスするので楽しみにしていてください!

※1 フィリピン宇宙庁(PhilSA)が主催した学生向けイベントで、学生たちの創造性と科学的スキルを駆使し「コリアンダーの種子が地球から宇宙へ旅に出て地球に帰還する」までを漫画で表現し、その順位を競いました。複製品が寄贈され、筑波宇宙センターの見学室で展示されています。

図3. Kibo-ABCワークショップの様子

図4. Kibo-ABCワークショップの議長JAXA白川正輝とASAのTony Robinson氏
本ワークショップ全体を通して、現在進めているプログラムや今後新しく始まるプロジェクトについて活発な意見交換が行われました。特に現在進められているプログラムに関しては、各国・地域の抱えている課題が共有され、より良いプログラムにするべく議論が行われました。これらの議論については引き続き参加国・地域で議論していくことで合意し、本ワークショップは終了しました。

Kibo-ABCワークショップの結果は、以下の資料により、APRSAF-30の本会議で報告されました。

Kibo-ABCワークショップ情報

日時 2024年11月25日 10:00~16:30(Australian Western Standard Time, UTC+8)
Agenda Kibo-ABCワークショップアジェンダ(英語)
参加国・地域数 13か国・地域、18機関
参加人数 52名(オンラインでの参加者含む)

※特に断りのない限り、画像クレジットは©JAXA