インクリメント69期間
インクリメント69キーメッセージ
インクリメントマネージャ紹介
2023年9月末、成功裏にインクリメント69が完了しました。インクリメント69後半から国際宇宙ステーション(ISS)に搭乗を開始した古川宇宙飛行士、24時間365日交代しながら「きぼう」を見守り続けている「きぼう」運用管制チーム、「きぼう」での実験・実証のため国内外の研究者や開発者と綿密な調整を行い準備してきた各ミッション担当、そして我々インクリメント69チームが一丸となって、全力で業務に邁進してきた結果と自負しております。
次世代水再生実証システム(JWRS)では、将来の有人宇宙探査に向けた技術の獲得に向け、計画した実験を完遂し、ミッションを完了しました。微小重力下におけるシリコンゲルマニウム結晶育成の研究(Hicari-II)では、インクリメント69での実験を無事に終了し、実験していたスペースを民間利用の促進、拡大に向けた「きぼう」リノベーション(機能向上)に利活用する見通しを確実にしました。これらのミッションに加え、過去最大規模となるJAXA-NASA共同低重力マウス飼育ミッション(MHU-8)や既にプラットフォームとして確立した実験設備を利用したミッション等、様々なミッションを完遂し、現在、地上で取得データの解析、評価中です。
また、ミッションの遂行と平行して、我々インクリメント69チームは、想定外に発生したISSへの物資補給船のスケジュール更新に対する搭載品変更の対応や「きぼう」内の実験機器の保管状況の改善等にも精力的に取り組み、利用成果最大化に大きく貢献できたと考えております。
以上より、我々としてインクリメント69のキーメッセージを十分に達成できたと考えており、皆様とともに、これらのミッションの完了が更なる大きな成果の創出につながることを期待しております。また、インクリメント69が開始してからも油井宇宙飛行士や大西宇宙飛行士のISSへの長期滞在が決定するなど、ますます日本の有人宇宙活動が活発化しています。引き続き、皆様の応援をよろしくお願い致します。
こんにちは。インクリメント69を担当する井田恭太郎です。
インクリメント69に向けた準備の最中、ISS、ないし日本の有人宇宙開発において、歴史的な転換点となるさまざまな出来事がありました。
2022年11月には、2030年までのISSの運用延長に日本が参加することが正式に表明されるとともに、日本が月周回有人拠点「ゲートウェイ」へ機器提供や物資補給を行い、NASAが日本人宇宙飛行士の搭乗機会を提供することについて合意されました。
2023年2月には、その「ゲートウェイ」ミッションや月面探査プログラム「アルテミス計画」への参画が期待される日本人宇宙飛行士候補者2名が選抜され、翌月には若田宇宙飛行士が日本人宇宙飛行士としては最長となる通算500日を超える宇宙滞在期間を経て、無事に帰還しました。
このような出来事を受け日本の有人宇宙活動に更なる注目が集まる中、インクリメント69では、将来の有人宇宙探査を見据え、「きぼう」日本実験棟による新たな価値の創出を通じ、日本のプレゼンスを向上していくことで皆様の期待に応えていければと考えております。
例えば、次世代水再生実証システム(JWRS)では、ISSで使用している水再生システムより、小型、低消費電力、高再生率、メンテナンス性の向上に向け、模擬尿を飲料水品質の水に浄化再生することで将来の有人宇宙探査に向けた技術の獲得を目指します。
また、微小重力下におけるシリコンゲルマニウム結晶育成の研究(Hicari-II)では、高品質で大型なシリコンゲルマニウム結晶の高速育成技術を獲得し、次世代の高速・省電力電子デバイス開発などに活かすことを目指すとともに、実験完了の暁には、実験していたスペースを民間利用の促進、拡大に向けた「きぼう」リノベーション(機能向上)に利活用することで新たな価値の創出につなげていきます。
これらのミッションに加え、既にプラットフォームとして確立した実験設備を利用したミッションなどにより最大限の成果を創出していくべく、「きぼう」を利用し尽くしてまいります。以上の目的意識から、インクリメント69のキーメッセージを設定しました。
インクリメント69の後半では、古川宇宙飛行士がISSへの長期滞在を開始する予定です。「きぼう」運用管制チームは24時間365日交代しながら「きぼう」を守っております。各ミッションの実験担当は、国内外の研究者や開発者と綿密な調整を行い準備に当たってきました。我々インクリメント69チームは、彼らとともにチーム一丸となって、キーメッセージの実現に向け全力で業務に邁進してまいります。インクリメント69での活動、ひいては日本の有人宇宙活動を引き続き応援していただければ幸いです。
実施した利用ミッション
健康長寿研究支援プラットフォーム
超小型衛星放出プラットフォーム
船外ポート利用プラットフォーム
- 中型曝露実験アダプタ1(i-SEEP1)利用
- 「きぼう」次世代ハイビジョンカメラシステムによる映像取得【HDTV-EF2】
- LPWA無線実験装置【LPS】 *外部サイト
- 国際宇宙ステーション-地上局間の高秘匿光通信の実証【SeCRETS】
- 中型曝露実験アダプタ2(i-SEEP2)利用
- 宇宙実証用ハイパースペクトルセンサ【HISUI】 *外部サイト
無容器処理技術を利用した材料研究への貢献(革新的材料研究支援プラットフォーム)
新プラットフォーム形成(細胞医療への貢献に向けた立体培養技術の有効性実証)
新プラットフォーム形成(将来有人活動の安全基盤確立に向けた宇宙火災研究(仮))
新プラットフォーム形成(新たな発想に基づく民間利用の拡大)
- 宇宙日本食、宇宙用生活用品
- ESA曝露ペイロード Langmuir Probe【m-NLP】
- I-Space Essay
科学研究促進(船外ポート利用)
科学研究促進(物質・物理科学)
- ※利用ミッションは、「きぼう利用戦略」の具体的取り組みの分類に基づいたマッピング(図1)を基に優先順位を定めています。