高精細度映像でお送りします
もっとキレイな映像世界へ
これまでの宇宙ステーションやスペースシャトルで利用されてきたシステム用カメラやペイロード(実験機器)のカメラは、NTSC信号という家庭と同じ画質レベルで撮影を行っていました。しかし、近年のシャトルミッションや宇宙ステーションのミッションでは、ハイビジョンカメラ(HDTV)が搭載されるようになり、地球の映像やコマーシャルで、私たちは鮮明で臨場感のある映像を見ることができるようになりました。ポカリスエットのコマーシャルで、宇宙飛行士がくるくる回っている映像を見た人も多いと思います。
しかし、これまでのHDTVカメラシステムではテープに録画して地上に持ち帰ってくる方法しかありませんでした。そこでJAXAでは、民生技術を利用したリアルタイムダウンリンクが実施できるHDTVシステムを開発しました。
さらにJAXAでは、研究の一環として白傷という事象について調査しています。白傷とは、宇宙放射線の影響によって輝度にムラが発生する事象で、これまでの標準カメラではあまり問題になりませんでした。白傷は、ハイビジョンカメラの画質レベルが非常に優れているために起こる現象といえます。そこで、この事象を把握するためにCCD(電荷結合素子)カメラの放射線照射試験や搭載されたCCDやCMOSセンサの白傷評価を行っています。
実験もハイビジョンワールド!
一言でいえば、高画質の映像が取得できれば医学実験、地球観測、材料実験、ライフサイエンス実験などのさまざまな研究分野で、より詳細な解析ができるようになるということです。分解能が低ければ研究データ(情報)が埋もれてしまう可能性があるため、真の情報が得られない場合があります。高分解能データが得られれば、より真の情報に近い画像が得られます。
また、綺麗で鮮明な画像は、まるでその場にいるような臨場感を与えてくれることでしょう。
日々進化する民生品の技術を利用
カメラの技術は日進月歩で進化を遂げており、ハイビジョン放送なども急速に普及しています。JAXAでは、これまで放送用に使用するハイビションカメラから民生用として発売されたハイビジョンカメラまで、宇宙ステーションに搭載するための安全性を確認する検証試験を実施しています。
宇宙ステーションで使用するハイビジョンシステムは最新技術を積極的に利用するため、安全性を含めた検証プロセスのノウハウをJAXAで取得しておくことが重要となります。
成果
国際的に様々な高精細映像を地上に届ける中継ぎとして活躍
2007年10月、NASAの協力のもと高精細ビデオ画像の伝送処理システム「マルチプロトコルコンバータ(Multi Protocol Converter: MPC)」によるISS最初の高精細ビデオ(HDTV)映像の地上伝送に成功しました。
それ以降、MPCはNASAにも高く評価され、ISSの正式なシステム機器として組み込まれ、「きぼう」のみならず、米国や欧州の実験モジュールでHDTV映像の地上転送に活用されています。
さらに、ISSからのHDTV映像伝送だけでなく、ハッブル宇宙望遠鏡の修理ミッション(2009年スペースシャトルで実施)でも使われ、修理風景の高精細映像を地上に伝送するのに役立ちました。以降、NASAはJAXAから提供を受けたMPCをスペースシャトルのシステム機器としても活用しました。
2007年11月以降、テレビ放送でご覧いただいている各国首脳と宇宙飛行士たちの生中継、ISS船内で撮影された映像(CMなども含む)、ISSから撮影したスペースシャトル等の宇宙船、スペースシャトルから撮影したISSの映像や、科学展/映像展でご覧いただいているISSからの地球観測映像、宇宙飛行士による宇宙芸術映像等のHDTV映像は、全てMPCを通して地上に伝送されたものです。
※ MPCで地上へ転送されたHDTV画像(HDTV映像からのキャプチャ写真)
パンフレット・資料ダウンロード
- ハイビジョン伝送システムパンフレット[422KB]PDF
- ハイビジョン伝送システムパンフレット(研究者向け) [744KB]PDF
※特に断りのない限り、画像クレジットは©JAXA