1. ホーム
  2. 企業・研究機関の皆様へ
  3. 「きぼう」利用のご案内
  4. 「きぼう」での実験
  5. 船内実験装置
  6. ライブイメージングシステム(COSMIC)
Confocal Space Microscopy: COSMICライブイメージングシステム(COSMIC)
Facility
Share

軌道上で生きた細胞組織を立体観察!ライフサイエンス実験用ライブイメージングシステム

近年、生体の重力感受メカニズムの解明や、再生医療のための高機能臓器の培養技術の確立などが重要な実験テーマとなってきており、軌道上のその場で生きた細胞組織の立体観察を行うことが不可欠となっています。ライフサイエンス実験用ライブイメージングシステム(COSMIC)は、そのような先端生命科学の実験での使用を念頭に開発された顕微鏡システムです。COSMICは位相差顕微鏡や落射蛍光顕微鏡の機能に加えて、最新の共焦点顕微鏡技術を搭載しており、細胞や組織の立体構造を、軌道上のその場で生きたまま観察できるという特徴があります。

COSMICに搭載されたニポウディスク方式共焦点スキャナや高感度CMOSカメラにより、蛍光試料の高精細な三次元イメージングが可能です。共焦点観察用に3台のレーザを搭載し、複数の蛍光色素を使用した共焦点観察を行えます。また、共焦点スキャナに内蔵されたスプリットビュー光学系により、波長の異なる2つの蛍光を1台のカメラで同時に撮影でき、高速現象の2色同時観察やFRET(蛍光共鳴エネルギー移動)を利用した高度な実験にも対応できます。

また、オートフォーカス機能により長時間の観察でもフォーカスがずれることなく観察できます。さらに、加温チャンバシステムと組み合わせて使用することで、試料を培養に適した温度環境に保ちながら長時間の観察を安定して行えます。

COSMICは「きぼう」キャビンエリアの壁面に面ファスナーで設置されます。設置した様子を図1に示します。

図1 COSMIC外観図

COSMICを使用する実験の代表的なフローを図2に示します。試料は打ち上げられた後、細胞培養装置でµGから2Gまでの様々な重力環境下で培養され、その影響を顕微鏡で観察することができます。観察時にはクルーが試料を顕微鏡に設置し、地上からのコマンドによる遠隔操作で観察を行います。撮影された画像データは軌道上の制御用PCに一旦保存され、地上からのコマンドにより地上に転送します。

図2 COSMICを使用する実験フロー例

装置の構成

COSMICは倒立顕微鏡、共焦点スキャナユニット、CMOSカメラ、レーザユニットなど、主に民生品を改修設計したコンポーネントにより構成されます。採用されている主な民生品を表1に示します。また、COSMIC構成品の主な仕様を表2に示します。

品目 メーカー・型名
倒立顕微鏡 ライカマイクロシステムズ DMi8
共焦点スキャナユニット 横河電機 CSU-W1(T3)
CMOSカメラ 浜松ホトニクス ORCA-Flash4.0 V3
レーザユニット コヒレント OBIS LX 445nm
コヒレント OBIS LX 488nm
コヒレント OBIS LS 561nm
コヒレント OBIS Galaxy
落射蛍光LED光源 CoolLED pE-300 white
表1 COSMICに採用されている主な民生品

(a)倒立顕微鏡

倒立顕微鏡はライカマイクロシステムズ製 倒立型落射蛍光顕微鏡DMi8を一部改修しフライト化したものです。外観を図3に示します。実験目的にあわせて対物レンズや蛍光フィルタを交換することが可能です。ステージ、対物レンズレボルバ、オートフォーカス、蛍光フィルタターレットおよびコンデンサなどの顕微鏡操作は全て電動です。

図3 倒立顕微鏡

試料は実験に合わせて製作された試料容器ホルダーに装着して顕微鏡ステージに取り付けます。マイクロプレートや、付着細胞用のDCC(Disposable Cultivation Chamber)は、既存のホルダーが利用できます。加温チャンバはDCCを2個取り付けて、温度制御下で観察することができます。観察試料の設置例を図4に示します。

図4 観察試料の設置例

(b)共焦点スキャナユニット

共焦点スキャナユニットは横河電機製ニポウディスク方式共焦点スキャナユニットCSU-W1を一部改修しフライト化したものです。外観と共焦点光学系の模式図を図5に示します。共焦点スキャナは、多数のマイクロレンズとピンホールがそれぞれ形成された2枚の回転ディスクを通して、多数のレーザビームを同時に試料に照射し、焦点面から発生した蛍光のみがピンホールを通してカメラで撮影できるように構成されています。共焦点スキャナユニット内のフィルタや光路は全て電動切り替え可能です。

図5 共焦点スキャナユニット

共焦点スキャナユニットに内蔵されたスプリットビュー光学系は、波長の異なる2つの蛍光をビームスプリッタで分光し、1台のカメラの視野の上下に同時に投影します(図6)。これにより時間ずれの無い2色同時観察ができ、FRETの精密な測定が可能です。

図6 スプリットビューによる2色同時観察

主な仕様

項目 仕様
倒立顕微鏡

基本仕様

  • 対物レンズレボルバ(電動・最大6個)
  • Zドライブ(電動・ストローク12mm)
  • オートフォーカスユニット内蔵

透過光路制御

  • 開口絞り・シャッタ(電動)

落射蛍光光路制御

  • 視野絞り・シャッタ(電動)
  • 蛍光フィルタターレット(電動・最大6個)
対物レンズ
  • HCX PL FLUOTAR 2.5x/0.07
  • N PLAN 5x/0.12 PH0
  • N PLAN 10x/0.25 PH1
  • HCX PL FLUOTAR 10x/0.32 PH1
  • N PLAN 20x/0.35 PH1
  • PLAN APO 20x/0.70 PH2 HC
  • PLAN APO 20x/0.80 PH2 HC
  • PLAN APO 40x/0.85 CORR HCX
  • PLAN APO 40x/0.95 CORR HC
  • HC PL FLUOTAR 63x/0.90 CORR
コンデンサ

コンデンサ

  • コンデンサターレット(電動・最大7個)
  • 開口絞り内蔵(電動)

位相差観察用リングスリット

  • PH0(5倍用)
  • PH1(10・20倍用)
  • PH2(20倍用)
ステージ

XY スキャニングステージ

  • リニアモータ駆動
  • 可動範囲 120×80mm

試料容器ホルダー

  • マイクロプレート用
  • DCC(Disposable Cultivation Chamber)用
透過光ランプ
  • 白色LED光源
  • 波長帯域 350~750nm程度
蛍光フィルタキューブ
  • CFP用(励起436/20nm、吸収480/40nm)
  • GFP用(励起470/40nm、吸収525/50nm)
  • YFP用(励起500/20nm、吸収535/30nm)
  • DsRed用(励起546/10nm、吸収605/75nm)
CMOSカメラ
  • 有効画素数 2048×2048
  • 有効視野サイズ 13.3×13.3mm
  • ピクセルサイズ 6.5×6.5µm
  • 露光時間 1ms~10s(1ms刻み)
  • 量子効率 80%以上(ピーク値)
  • ビニング 1,2,4
  • ノーマル/W-VIEWモード切替可
光路カバー
  • ステージの遮光用
  • 手動開閉
共焦点スキャナユニット
  • マイクロレンズ付きニポウディスク方式
  • ディスク回転数 1500~4000rpm
  • ディスク搭載数 2台
  • ピンホール径 50um、25um
  • ダイクロイックミラー

    1. 405/488/561/640nm励起用Quad DM
    2. 445/514/640nm励起用Triple DM
    3. 明視野・落射蛍光用ミラー
  • 蛍光フィルタ

    1. 445nm励起用(中心波長482nm、帯域幅35nm)
    2. 488nm励起用(中心波長525nm、帯域幅30nm)
    3. 514nm励起用(中心波長578nm、帯域幅105nm)
    4. 561nm励起用(中心波長617nm、帯域幅73nm)
  • スプリットビュー用ビームスプリッタ

    1. 488/561nm励起同時観察用
    2. 445/514nm励起同時観察用
レーザユニット

445nmレーザ発振器

  • レーザ出力 45mW
  • 発振波長 445±5nm

488nmレーザ発振器

  • レーザ出力 100mW
  • 発振波長 488±5nm

561nmレーザ発振器

  • レーザ出力 80mW
  • 発振波長 561±2nm
落射蛍光ランプ
  • 白色LED光源
  • 波長帯域 350~750nm程度
表2 主な仕様

※特に断りのない限り、画像クレジットは©JAXA