「無重力の特徴と宇宙実験」
無重力の特徴をまとめながら、それらが宇宙での活動にどのようにかかわっているか述べよう。
(1)表面張力(参照:無重力の宇宙船内では、液体の水も空中に浮く。このとき、水の形は必ず「球」になる。これは「球」という形のどのような特徴によるものだろうか?)
「無重力で作られたプラスチックの粒である。この粒は、地上で作られた粒に比べて、どこがすぐれているのだろうか?」の歪みのない球をつくる実験が典型的な例だ。
(2)ぬれやすさ(参照:水と空気が半分ずつ入ったガラスのびんを、宇宙船内にもちこんだ。無重力では、水の形はどうなるだろうか? また、水のかわりに水銀だったらどうなるだろうか?
)
溶かした材料を冷却し、周囲の基板上に結晶として成長させる実験がおこなわれたときのこと。溶けた材料が基板のすきまからはい出し、基板をぬらしながら裏側にまわってしまったのだ。「宇宙船内で水を飲むときは、どうやって飲むのだろうか?」のコップから水がはい出すのと同じ現象だ。

黒く見えるのは基板。

提供;株式会社宇宙環境利用研究所/第5研究室

(3)無容器溶融(参照:光通信や各種レーザー機器に必要な純度の高いガラスを、無重力を利用してつくる実験がすすめられている。不純物が入るのを防ぐためだが、なぜ無重力を利用するのだろうか?)
高純度ガラスの製造以外にも、不純物の混入をきらう場合に利用される。たとえば、高純度の結晶をつくるとき、材料を一度溶かし、冷やして固めることで、不純物を除く方法がある。地上では溶けた材料がたれてしまうが、無重力ならその心配がない(右図)。
(4)均一混合(参照:水と油が分離したタイプのドレッシングがある。このドレッシングのビンを振ると、水と油は一時的に混ざるが、すぐ分離してしまう。このドレッシングのビンを宇宙船内で振ると、混ざった水と油は分離するのだろうか?
)
密度の違う物質を混ぜるとき、地上では密度の大きいものが沈み、密度の小さいものが浮いてしまい、うまく混ぜることができない。無重力なら、密度の違うものも、むらなく混ぜることができる。上記参照の水と油を混ぜる実験を思い出してほしい。この特徴を利用して、半導体、合金、複合材料などがつくられている。

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