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国際宇宙ステーション(ISS)搭載可となった新規生活用品Triporous™:Space QOL Series 「Inner wear」

Space Medicine
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宇宙飛行士のQOL向上を目指したインナーウェアです。「快適さ」や「心地よさ」を追求し、使用する原料から生地、ウエアの構造設計や縫製までこだわりました。更に、長期間の「清潔さ」を持続させるため、天然由来の消臭抗菌機能をもつTriporous(トリポーラス)を使用しています。
製造元 スタイレム瀧定大阪株式会社・ソニーグループ株式会社
使用方法 宇宙飛行士の国際宇宙ステーション(ISS)船内着(インナーウェア)として着用
大きさ <トップス>身丈:72㎝ 身巾:44㎝ 裄丈:41.5㎝ 袖口:16.5㎝ 天巾:18㎝ 襟首廻り:23㎝
<ボクサーパンツ>前丈:31㎝ 後丈:34㎝ 前股上:26㎝ 後股上:29㎝ 脇丈:28.5㎝ ウエスト:66㎝(板ゴム仕様) ヒップ:82㎝
重量 トップス 263g
ボクサーパンツ 66g
Triporous™:Space QOL Series 「Inner wear」

JAXA生活用品担当が、本製品を開発いただいた企業にお話を聞きました。

Q:どんな課題に着目しましたか?

様々な制約がある特殊環境下でのストレスに着目しました。
1:水の使用制限のある中での衣服の衛生課題(洗濯不可・におい・運動時の汗)
2:閉鎖隔離環境での単調な生活におけるメンタル・パーソナルケア課題
3:搭載品の制限、リソース制約課題
(スタイレム瀧定大阪株式会社)

Q:課題に対する解決策は?(製品の機能)

トリポーラスを使用したウエアは、非常に優れた高消臭抗菌機能を持ち、嫌なにおいを素早く消臭します。そのため洗濯ができない環境下においても清潔な状態を保ち、繰り返しの着用が可能です。また無重力下で肌に貼りつく汗を吸収、速乾する生地の組成や設計を取り入れ、より快適な状態を保つ工夫をしています。
仕様に関しては、特許技術の切りっぱなしの端始末や丸胴にすることで極限まで縫い目を無くし、自然に体にフィットさせることで、ストレスを軽減するインナーウェアにしました。
また、原料には提供企業の協力を得て一部にリサイクルコットンを使用し、環境に配慮した物作りを心掛けました。
(スタイレム瀧定大阪株式会社)

Q:地上へのどんな課題解決・ビジネスチャンス等に繋がりますか?

様々な制約がある特殊環境下の課題解決に向けたウエアの開発は、地上生活においても介護や防災、アウトドアなど多くのシーンでの課題解決に繋がります。(スタイレム瀧定大阪株式会社)
トリポーラスの原料は、世界で年間1億トン以上排出されている米の籾殻です。籾殻は廃棄することで、大気汚染や地球温暖化の一因となることが知られています。この籾殻を再生活用したトリポーラスを様々な場所でご利用いただくことで、大気汚染や地球温暖化の抑制に貢献したいと考えております。(ソニーグループ株式会社)

Q:このプロジェクト申し込みの背景・気づきは?

繊維商社としてサステナビリティを軸に他業種との共創や協働を行い、トリポーラスという原料で様々な分野に挑戦しています。宇宙環境においても活用できるアイテムを作りたいという想いや憧れもあり、宇宙生活のQOL(Quality of Life)を向上させる生活用品にトリポーラスが有益ではないかと考えて応募しました。商品開発を行う過程や提携企業様との共創を通じ、宇宙環境に向けた取り組みや、開発を目の当たりにすることで新たな発見もありました。(スタイレム瀧定大阪株式会社)
トリポーラス事業を通じて社会課題を解決する。」というパーパス(目的)のもと、温暖化や大気汚染をはじめとした地球上の社会課題を解決しようと普段活動を行っておりますが、地球上の課題のみならず、宇宙での課題も解決することができれば、より幅広い貢献ができると考えました。(ソニーグループ株式会社)

Q:宇宙での生活用品への挑戦にあたり良かったことは?

長年繊維業界に携わり様々な開発を行ってきましたが、Space Life Story Bookの内容は未知の分野が多く新鮮で、多くの気付きがありました。今回の挑戦によって、改めて宇宙環境と地上展開の課題を客観的に考えることができ、未来の宇宙、地上を問わず課題を解決する機会を与えて頂いたことは、弊社にとっても大きな出来事になりました。勿論、ISSへの搭載が決まった際には、全社で喜びました。(スタイレム瀧定大阪株式会社)
宇宙飛行士へのヒアリングを通し、地上とは異なるさまざまな課題を把握できたことが、とても勉強になりました。そしてスタッフの皆様のご協力のもと、本製品が厳しい基準をクリアし、国際宇宙ステーションに搭載していただけるということを嬉しく思っております。(ソニーグループ株式会社)

Q:宇宙での生活用品への挑戦にあたり苦労したことは?

宇宙空間での着用という未経験の製品開発であったため、必要とされる機能性やデザインに関して想像力を総動員しても確証が持てない点が苦労しました。宇宙飛行士へのヒアリングや、様々な関係各所に支えられウエアを作成できましたが、限られたリソースの中で、ISS搭載に向けて原材料・素材・加工・プリントなどの詳細について成分や安全性のエビデンスを揃えることもかなり時間を費やしました。
(スタイレム瀧定大阪株式会社)

※特に断りのない限り、画像クレジットは©JAXA