国際宇宙ステーション(ISS)搭載可となった新規生活用品O R I G A M I M I R R O R（折り紙ミラー）

閉鎖環境で美容や衛生行為を行う際、プライバシーの確保は非常に重要です。しかし、宇宙ステーションに常設されている鏡は、ロシアのモジュールの壁に固定された一面鏡や、衛生エリアに設置された手持ちサイズの鏡のみです。このため、限られた場所でしか使用できず、顔の側面や頭頂部、背面を確認するには合わせ鏡が必要です。これを改善するために、宇宙飛行士が自由に多面鏡として利用できる鏡の開発に着目しました。

どこにでも設置できるため、狭い宇宙ステーションでもプライバシーを確保しながら使用できます。3面鏡として折り曲げたり、姿見として展開することで、痛みやかゆみなどの身体的トラブルのセルフチェックが容易に行えます。特にヘアカット時、見えづらい後頭部も確認でき、自身で髪を整える際に便利です。また、全身のファッション確認にも対応し、多目的に活用できます。

日常生活でも、一人で体の見えにくい部分を確認したい場面は多々あります。背中や後頭部のケアやチェックは手間がかかりますが、この鏡を使用すれば簡単に視認できます。また、災害時の避難所などプライバシーが限られる環境でも、衛生面やメンタルウェルネスの向上に役立てたいと考えています。限られたスペースやリソースの中で、個人の衛生管理や心の健康をサポートするツールとして、地上での応用も視野に入れています。

宇宙美容を掲げるベンチャー企業として、地上の美容業界での経験を宇宙の課題解決にも活かしたいと考え活動してきました。JAXA THINK SPACE LIFEコミュニティに参加し、宇宙飛行士の日常生活を学ぶ中で、宇宙でのQOLや美容視点での課題解決は、新たに注目される分野であると実感しました。宇宙利用の機会を無償で得られる貴重なチャンスを活かし、まずは私たち自身がチャレンジし、より多くの美容業界を巻き込みたいと考え応募しました。

宇宙という極限環境での課題に向き合う中で、無駄を削ぎ落とし、物事の本質を再認識する機会が多くありました。「鏡を見る」という日常的な行為の価値と重要性、そして宇宙での安全性を保ちながら生活を豊かにする方法を考えるきっかけにもなりました。

宇宙の生活用品の中でも、特に前例の少ない鏡の製品開発においては、解決すべき課題に関する情報がほとんど表に出ていないため、情報収集に苦労しました。特に、不燃・難燃性、軽量化を満たす素材選びや、鏡を折り曲げて使用しつつ、一面鏡としても機能させるという鏡特有の難題を、安全性基準を満たしながらどう解決するかという点が非常に大変でした。