2026年4月、大西宇宙飛行士と金井宇宙飛行士は、トヨタ自動車株式会社 東富士研究所にて行われた、有人与圧ローバーのヒューマン・イン・ザ・ループ(HITL)試験に参加しました。
本編では、試験を終えたお二人に、率直な感想を語ってもらいました。
今回の試験に参加すると聞いたとき、率直にどんな気持ちでしたか?
大西宇宙飛行士: 率直にワクワクしましたね。同時に、前回のHITL試験で「窓」に関してさまざまな課題が見えてきたと聞いていたので、その重要な判断に関わることへの責任の重さも感じました。
金井宇宙飛行士: HITL試験の最後には、参加した宇宙飛行士全員で意見をまとめ、報告書を作成することが求められていました。同じ宇宙飛行士といっても、これまでの経歴や専門はそれぞれ違い、考え方も異なります。全員の意見をまとめるのは大変そうだと覚悟しました。
お二人とも、与圧ローバーの試験に参加するのは初めてでしたね。事前のイメージと、実際に体験して違っていた点はありましたか?
金井宇宙飛行士: コンピュータグラフィックスを使ったシミュレーションではありましたが、月の極域を模擬して、太陽光が低い位置から差し込む月面環境で、地形や障害物を目で見て判断することの難しさを実感しました。一方で、何度も走行を重ねるにつれて、地形の見分けや判断が驚くほど早くなるのも感じました。人間の学習能力や適応力の高さに改めて驚かされました。
大西宇宙飛行士: 実際の月面データを基に作られたコースを走ったのですが、想像以上にクレーターや岩などの障害物が多く、運転中はずっと気が抜けませんでした。一日何時間も運転すると、精神的な疲労も大きそうだと感じました。
また、最高速度は時速3.5kmほどですが、意外と速く感じました。ただし、障害物を避けながら走ると、実際にはそこまでスピードを出せない場面も多かったです。
今回はシミュレーターなので月の重力(地球の約6分の1)は再現できていませんが、本番ではもっとふわっとした感覚になるのだろうな、と想像しながら臨みました。日なたと日陰の明るさの差が大きく、日陰ではライトがないと前が見えない点も印象的でした。
試験を通して、周囲の方々の反応はいかがでしたか?
大西宇宙飛行士: メーカーの皆さんが、私たちの一つひとつのコメントをとても真剣に受け止めてくださっているのを感じました。「実際に月で使う人」の立場や意見を大切にしてくれているのが伝わってきました。NASAの宇宙飛行士の中には、前回の試験から続けて参加している人もいて、「確実に進化している」と手応えを感じている様子でした。今回、窓の配置について一定の方向性が見えましたが、ローバー開発にはまだ多くの課題があります。今後も日米で力を合わせて取り組んでいく必要性を、チーム全体で共有できたと思います。
金井宇宙飛行士: 宇宙飛行士だから特別扱いというわけではなく、所属組織や部署、経験年数に関係なく、全員がフラットに意見を出し合っていました。エンジニアの方たちともお互い気軽に質問し合える雰囲気で、「クルーの意見は最大のリスペクトを持って聞く。でもクルーが言ったことを、ハイ分かりましたと、そのまま取り入れるのではなく、自分たちの中でも考え抜いてみて、新しいアイデアやデザインに落とし込んで再提案する」と言われたことに、技術者・作り手としてのプロフェッショナリズムを感じました。意見の違いから議論が白熱する場面もありましたが、それでも、お互いを尊重しながら「一つのチームとして良いものを作ろう」という姿勢が共通していて、とても印象に残りました。
(試験現場のワクワク感を少しでもお伝えできていれば嬉しいです。)
今後の開発の歩みにも、ぜひご注目ください。
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