一般サバイバル技術訓練①
基礎訓練では将来宇宙船が想定外の場所に帰還した場合などに備え、サバイバル技術の習得を目的とした訓練を実施します。今回の基礎訓練では、一般サバイバル技術訓練の一部としてSpace BD株式会社企画の元、公益財団法人ボーイスカウト日本連盟の協力を得て、同連盟が所有する高萩スカウトフィールドにて1泊2日の訓練を実施しました。
訓練では生活に必要なテントの設営や食事の準備、安全な水の見分け方等に加え、ロープ結びや地図やコンパスを使用した位置情報の把握等を実際に体験し、サバイバル技術の習得を図りました。
また、上記技術を活用して丸太とロープを使用した構造物(信号塔)の制作も行いました。
訓練では生活に必要なテントの設営や食事の準備、安全な水の見分け方等に加え、ロープ結びや地図やコンパスを使用した位置情報の把握等を実際に体験し、サバイバル技術の習得を図りました。
また、上記技術を活用して丸太とロープを使用した構造物(信号塔)の制作も行いました。
一般サバイバル技術訓練を受ける諏訪・米田宇宙飛行士候補者
低圧環境適応訓練
この訓練は、低圧環境や急減圧が人体に与える影響を体験するための訓練で筑波宇宙センターの低圧環境適応訓練設備で実施しました。宇宙飛行士が安全に飛行する上で、低圧環境下で起こる低酸素症の兆候を早期に自覚することや、急減圧で起こる環境の変化を体験しておくことが重要なため、宇宙飛行士は定期的にこの様な訓練を受けています。
設備内では徐々に空気を抜いていき、高度約7500mと同等の低圧環境を作り出すことで低酸素状態を発生させ、身体的変化の体験や思考能力の変化を調べるために簡単な計算問題を解いたりしました。
また、その他にも低酸素状態かつ暗い状況下での視力の変化や急減圧、緊急時の酸素吸入体験などを行いました。
設備内では徐々に空気を抜いていき、高度約7500mと同等の低圧環境を作り出すことで低酸素状態を発生させ、身体的変化の体験や思考能力の変化を調べるために簡単な計算問題を解いたりしました。
また、その他にも低酸素状態かつ暗い状況下での視力の変化や急減圧、緊急時の酸素吸入体験などを行いました。
低圧環境適応訓練を受ける諏訪・米田宇宙飛行士候補者
諏訪宇宙飛行士候補者の感想
低圧環境で体がどう反応するのか?これは興味深くはあるものの、なかなかドキドキした訓練でした。
大学院時代、南米アルティプラーノというアンデス山脈にある高地で地質調査をお手伝いさせてもらったことがあるのですが(もう少し詳しく言うと、チチカカ湖やその周辺にある湖の底にある堆積物を使ってアンデスの昔の気候を調べるという研究でした)、ここが今まで訪れた最高高度でした。到着したボリビアの玄関口エルアルト空港は標高4000mを超えた場所にあり、降り立って預け荷物を受け取るとそれだけで息切れしたことを思い出します。調査では標高5000mを越える地まであがりましたが、これは調査を開始してから数週間立った後でだいぶ高度順化も進んでいたためか、特に問題はありませんでした。
という経験もあったので、今回の低圧環境適応訓練もある程度、「大丈夫では?」と高を括っていたところもあります。しかし甘かった!この訓練ではかなりの速度で低圧にするので何週間もかけて高地で体をならして、というのとはまた違います。そして経験するのは5000mよりも更に高い7500mに相当する高度の大気圧です。酸素マスクを外すと2分もたたずに思考が鈍ってきます。簡単な計算問題などもやらされたのですが、頭が働いていないのもわかります。また視野が狭くなったりカラフルな世界が白黒の世界になっていくという視覚の変化も起こります。なんとなく気持ちよく(?)なってきたところで、ずっとモニターをしてくれていた立ち合いの医師が酸素マスクを戻すように指示してくれました。
酸素を吸うと、視野が広くなりカラフルな世界がけっこうなスピードで戻ってきます。
宇宙飛行ではいくつかの緊急事態を想定して、その訓練もするのですが、想定される緊急事態のひとつが急減圧です。急減圧ではどんなことが起こるのか、ということも今回の訓練で体験しました。大きな音で急減圧が起こると部屋にうっすらと霧がかかります。それと同時に体内の空気圧と体外の空気圧が均衡するように、体内から口を通して空気が外にでるのですが、こんな量の空気が一気に口からでるのか!という感じで空気が出てきて、ビックリでした。
実際のミッションではできれば経験したくないことですが、いざというときに、体がどう反応するのか知っておく、というのは大事で、貴重な機会になりました。
とはいっても我々は座って低圧を体験していただけなので、これ以上の高度のヒマラヤの山々を登るクライマーの方々達のすごさは本当に尊敬です。
大学院時代、南米アルティプラーノというアンデス山脈にある高地で地質調査をお手伝いさせてもらったことがあるのですが(もう少し詳しく言うと、チチカカ湖やその周辺にある湖の底にある堆積物を使ってアンデスの昔の気候を調べるという研究でした)、ここが今まで訪れた最高高度でした。到着したボリビアの玄関口エルアルト空港は標高4000mを超えた場所にあり、降り立って預け荷物を受け取るとそれだけで息切れしたことを思い出します。調査では標高5000mを越える地まであがりましたが、これは調査を開始してから数週間立った後でだいぶ高度順化も進んでいたためか、特に問題はありませんでした。
という経験もあったので、今回の低圧環境適応訓練もある程度、「大丈夫では?」と高を括っていたところもあります。しかし甘かった!この訓練ではかなりの速度で低圧にするので何週間もかけて高地で体をならして、というのとはまた違います。そして経験するのは5000mよりも更に高い7500mに相当する高度の大気圧です。酸素マスクを外すと2分もたたずに思考が鈍ってきます。簡単な計算問題などもやらされたのですが、頭が働いていないのもわかります。また視野が狭くなったりカラフルな世界が白黒の世界になっていくという視覚の変化も起こります。なんとなく気持ちよく(?)なってきたところで、ずっとモニターをしてくれていた立ち合いの医師が酸素マスクを戻すように指示してくれました。
酸素を吸うと、視野が広くなりカラフルな世界がけっこうなスピードで戻ってきます。
宇宙飛行ではいくつかの緊急事態を想定して、その訓練もするのですが、想定される緊急事態のひとつが急減圧です。急減圧ではどんなことが起こるのか、ということも今回の訓練で体験しました。大きな音で急減圧が起こると部屋にうっすらと霧がかかります。それと同時に体内の空気圧と体外の空気圧が均衡するように、体内から口を通して空気が外にでるのですが、こんな量の空気が一気に口からでるのか!という感じで空気が出てきて、ビックリでした。
実際のミッションではできれば経験したくないことですが、いざというときに、体がどう反応するのか知っておく、というのは大事で、貴重な機会になりました。
とはいっても我々は座って低圧を体験していただけなので、これ以上の高度のヒマラヤの山々を登るクライマーの方々達のすごさは本当に尊敬です。
NASAロボットアーム訓練
2024年6月、米田・諏訪両宇宙飛行士候補者はNASAに二週間滞在し、「NASA GRT(Generic Robotics Training)」を受講しました。
本訓練は宇宙ロボティクスの基礎を学ぶ訓練で、2024年4月に受講した「基礎ロボティクス訓練 *」と地続きの訓練となっています。基礎ロボティクス訓練では「きぼう」ロボットアーム(JEM Remote Manipulator System: JEMRMS)を用いた訓練だったのに対し、NASA GRTではカナダが開発したJEMRMSより巨大なロボットアーム(Space Station Remote Manipulator System: SSRMS)を用いて訓練を実施するという違いがあります。座標系の考え方やロボットアームの操作方法など、JEMRMS/SSRMSで共通している部分もありますが、アームの関節数や使用用途、さらには作業スペースの違い(JEMRMSとは異なり、SSRMSはISS中を動き回り作業する場所を変えることができます)等、異なる点も数多くあります。米田・諏訪両宇宙飛行士候補者はこれらの違いに注意しながら訓練に取り組み、本訓練の目的である「SSRMS操作スキルの習得」を達成することができました。
本訓練は宇宙ロボティクスの基礎を学ぶ訓練で、2024年4月に受講した「基礎ロボティクス訓練 *」と地続きの訓練となっています。基礎ロボティクス訓練では「きぼう」ロボットアーム(JEM Remote Manipulator System: JEMRMS)を用いた訓練だったのに対し、NASA GRTではカナダが開発したJEMRMSより巨大なロボットアーム(Space Station Remote Manipulator System: SSRMS)を用いて訓練を実施するという違いがあります。座標系の考え方やロボットアームの操作方法など、JEMRMS/SSRMSで共通している部分もありますが、アームの関節数や使用用途、さらには作業スペースの違い(JEMRMSとは異なり、SSRMSはISS中を動き回り作業する場所を変えることができます)等、異なる点も数多くあります。米田・諏訪両宇宙飛行士候補者はこれらの違いに注意しながら訓練に取り組み、本訓練の目的である「SSRMS操作スキルの習得」を達成することができました。
* 基礎ロボティクス訓練の様子はこちら
※特に断りのない限り、画像クレジットは©JAXA