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なぜ無重力で半導体をつくるのでしょうか

 「よい半導体」の条件を考えてみると、なぜ無重力で半導体をつくるのかわかるはずです。

 まず、不純物の混入防止です。物質を空中に浮かせることで、容器からの不純物の混入が防げます(参照:光通信や各種レーザー機器に必要な純度の高いガラスを、無重力を利用してつくる実験がすすめられています。不純物が入るのを防ぐためなのですが、なぜ無重力を利用するのでしょうか)。

 次は、均一分布です。無重力では、重いものも軽いものもよく混ざります(参照:水と油が分離したタイプのドレッシングのビンを振ると、水と油は一時的に混ざりますが、すぐ分離してしまいます。このドレッシングのビンを宇宙船内で振ると、混ざった水と油は分離するのでしょうか)。均一分布には好都合です。

 最後は、結晶の乱れです。結晶が冷えて固まるとき、重力があると上の結晶の重みで下の結晶の形がくずれることがありますが(とうふを重ねていくと下のものがこわれるのと同じ)、無重力ではそのようなことがありません。また、無重力では熱による対流がないので(参照:無重力でろうそくに火をつけると、そのまま燃え続けるだろうか?)、結晶を成長させるとき、熱対流による乱れが起きません。

 以上のように、半導体の結晶をつくるには、無重力は理想的な状態なのです。

(注)無重力では、熱による対流はありませんが、温度による液体の表面張力の違いが原因で「マランゴニ対流」という対流が生じることがわかりました。したがって、必ずしも上で述べたように簡単にはいかないこともありますが、無重力が魅力的な条件であることに変わりません。

※特に断りのない限り、画像クレジットは©JAXA