1. ホーム
  2. よくあるご質問
  3. 無重力でろうそくに火をつけると、そのまま燃え続けるでしょうか
よくあるご質問
FAQ
Share

無重力でろうそくに火をつけると、そのまま燃え続けるでしょうか

条件によって燃え続けたり、消えたりします。

 「無重力でろうそくを燃やすと、炎の形が丸くなってしまうのはなぜでしょうか」で述べたように、無重力では温度が高い気体とふつうの温度の気体との間に重さの違いがないので、対流が起こりません。このため、燃焼によってまわりの酸素が使われても、新鮮な空気が供給されず、ろうそくの火はすぐに消えてしまう…とこれまでは考えがちでした。しかし、スペースシャトルやロシアの宇宙ステーション「ミール」で行われたろうそくの燃焼実験では、45分間燃え続けた例も報告されています。これは、「拡散」により酸素が供給されたからです。

 物質の濃度が場所によって異なるとき、時間とともに物質の濃度は一様になっていきます。この現象を「拡散」といいます。この「拡散」によって、じわりじわりと酸素が供給されていくため、ろうそくは燃え続けるのです。ただし、地上で重力がある場合の対流による供給速度に比べれば、無重力での拡散による酸素の供給速度は小さいため、地上に比べて炎の温度は低くなり、また火炎の色も薄暗い青色になります。このように、無重力での酸素の供給速度は、燃焼を維持するぎりぎりの速度であるため、ろうそくのそばに拡散の邪魔になる物があったり、ろうそくを燃やす空間が狭い場合は、酸素の拡散速度が低下するため、火は消えてしまいます。また、ろうそくや芯の太さ、長さによっても結果が変わることが宇宙実験の結果からわかっています。たとえば、「ミール」での実験結果によれば、芯が細いろうそくほど、長く燃え続ける傾向がありました。NASAでは引き続き実験を行う予定でいます。

 イギリスの科学者ファラデーが1860年に書いた「ろうそくの科学」という本があります。ろうそくの火が燃えるメカニズムについて、わかりやすく書かれた名著ですが、無重力での実験は、これまでにない新しい科学知識を加えた「新・ろうそくの科学」を生むことになるかもしれません。いずれにしても、一見単純そうに見えるろうそくの燃焼でさえ、物が燃えるということは、非常に複雑な現象であることを示しています。

※特に断りのない限り、画像クレジットは©JAXA