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2026.08.26
  • 訓練

米国ペンサコーラでの水上サバイバル訓練

  • 諏訪 理
  • 米田 あゆ
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〈写真①〉米軍基地にある訓練設備での集合写真

2026年4月、諏訪宇宙飛行士と米田宇宙飛行士は、アメリカ・フロリダ州のペンサコーラにある米海軍航空基地にて、NASAの宇宙飛行士候補者(ASCAN)と合同で水上サバイバル訓練(Water Survival Training)を実施しました。本レポートでは、その様子を訓練担当の視点から紹介します。

水上サバイバル訓練とは、航空機が緊急事態により水上へ不時着した場合を想定し、機体からの安全な脱出方法や、救助隊が到着するまで水上で生存するために必要な行動を実践的に習得する訓練です。諏訪宇宙飛行士と米田宇宙飛行士は、事前にNASAジョンソン宇宙センター(JSC)にある無重量環境を模擬する中性浮力訓練施設(Neutral Buoyancy Laboratory; NBL)にて、水上サバイバル訓練の準備段階の訓練を受講していました(関連レポート参照)。今回、ペンサコーラ米海軍航空基地では、より実践に即した形で訓練を実施しました。

訓練期間は約1週間でした。まず初日に水泳テストを受けますが、両宇宙飛行士は無事に合格。その後、生理学に関する座学訓練、低酸素訓練、航空機座席からの射出訓練、パラシュート訓練、水中脱出訓練など、航空機まわりの緊急事態を想定した様々な訓練を実施しました。今回はこうした訓練の中から、以下3つの訓練について、両飛行士の生の声をもとに紹介いたします。

① パラシュート訓練

パラグライダーやスカイダイビングなどを体験したことがある方はいらっしゃいますか?この訓練は実際に外に出てパラシュートで降りてくるのではなく、VRを活用してパラシュートで着地する訓練を3回体験します。降下中にはパラシュートが絡まったり、パラシュートが裏返しになったりと色々なケースが出てきますので、状況を冷静に判断して付いている紐を引っ張るなどの対処をして1つ1つ問題を解決していきます(降下中は怖さや緊張感もあると思いますが、その中でパニックを起こさず冷静に対処するのは簡単ではありません。)。最終的に陸上に降りる際は受け身を取って着地します。ただ、着地後も風などの影響でパラシュートに体が引っ張られることもあるため、速やかにパラシュートを切り離さなければ危険なこともあります。これを体感するため、一人がハーネスを身に着けて、パラシュート役の他の4名が人力で引っ張り、素早くハーネスからパラシュートを分離する訓練も実施しました(写真②参照)。また、着地場所が陸上とは限りませんので、水中に着水するケースについても体験しました。
〈写真②〉パラシュート訓練の様子

② 救出訓練

さてパラシュート訓練を紹介しましたが、航空機が着水した場合でも怪我をするリスクは常につきまといます。着陸・着水後に負傷者が発生した場合を想定し、3~4人のチームで救急の初期対応を行う救出訓練を実施しました。様々なシナリオに対して救出対応を行い、訓練後のデブリーフでは良かった点や改善点を共有します。こうしたシナリオ訓練を通して、緊急時にはどういったチームワークやコミュニケーションが必要なのかを考えるよいきっかけになり、また実践に近い状況を体験することで、対応能力を高めることができます。

③ ダンカー訓練

ここで問題です。ヘリコプターが湖や海に不時着をすると、機体はどうなるでしょうか。答えは「上下がひっくり返る」です。ヘリコプターは機体上部が重いために、水面に着水すると機体はほぼ確実に逆さまになります。その状況から安全に脱出をするために行うのが「ダンカー訓練」です。訓練では、窓や機体構造を備えたヘリコプター模擬装置に着席した状態で搭乗し、そのまま装置を水中に沈めていきます。さらに装置がひっくり返った状態から水中脱出を行います(ダンカー装置は写真③参照)。考えただけでもぞっとする訓練ですが、両宇宙飛行士からは「水中から脱出するまで方向感覚は戻らず、ロジックに考えて光も頼りながらやる必要があった。方向感覚が戻らないという経験は非常に大事で、緊急事態でも頭で考え続けないといけないことがよく分かった。」との感想を聞くことができました。
〈写真③〉ダンカー訓練場での集合写真
訓練全体を通した率直な感想としては、「訓練そのものはとても難しいというものではなく、実際に体験して知っておくことが大事という内容のものばかりだった。」とのこと。これまでの訓練で十分に経験や体力を付けてきたからこそ、落ち着いて取り組めていました。両宇宙飛行士は別の訓練も並行して実施しており、多忙なスケジュールの中での今回の訓練となりました。引き続き、多種多様な訓練を通じて経験を積み重ねながら、今後もミッションに向けて精力的に取り組んでいきます。
〈写真④〉米海軍航空基地前での集合写真

※特に断りのない限り、画像クレジットは©JAXA