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困った「泡」の始末

 1994年の向井宇宙飛行士の1度目の飛行では、日本人の発案で、電気泳動によるDNAの分離実験がおこなわれた。このとき、困ったことが起きた。電解質溶液内に泡が入ったのだ。実験は泡が入ったまま進められ、規模は縮小したものの、無重力における電気泳動の優秀さが実証された。しかし、なぜ邪魔な泡を取り除かなかったのだろうか? 実は、できなかったのだ。無重力では、泡は液面まで上昇しない。それどころか、液体の外にある空気が液体中に入ることもある。「水と空気が半分ずつ入ったガラスのびんを、宇宙船内にもちこんだ。無重力では、水の形はどうなるだろうか? また、水のかわりに水銀だったらどうなるだろうか?」で、地上では水の上にあった空気が、無重力では水中の泡になったことを思い出そう。無重力では、泡は液体中にいすわったまま動かない。「無重力で炭酸飲料を飲むのは、水やジュースやコーヒーを飲むのと違って、大変なことなのだ。なぜだろうか?」のコーラのときも、泡がコーラの中にいすわったまま大きくなるので、まわりのコーラが吹き飛ばされてしまうのだ。

 泡の問題は電気泳動だけではない。宇宙で何かをつくる場合でも問題となる。物質を加熱して溶かしたとき、溶けた液体の中に泡が入ると大変だ。冷やして固めたときに、泡の部分が空洞になるからだ。今のところ、無重力で、液体内にある泡を取り除く決定的方法は存在しない。泡の処理はこれからの宇宙実験の課題の一つである。

※特に断りのない限り、画像クレジットは©JAXA