信頼性の高いロシアの有人宇宙船
ソユーズ宇宙船は、ソユーズロケットで打ち上げられるロシアの有人宇宙機であり、地上と国際宇宙ステーション(ISS)との間の往復等に使用されています。1967年に初飛行が行われて以来、これまでに、ソユーズ宇宙船(1967年から1981年まで使用)、ソユーズT宇宙船(1979年から1986年まで使用)、ソユーズTM宇宙船(1986年から2002年まで使用)、ソユーズTMA宇宙船(2002年から2011年まで使用)、ソユーズTMA-M(2010年から2016年まで使用)と改良され、現在は、2~3人の宇宙飛行士を搭乗させることができる「ソユーズMS宇宙船」が使用されています(2016年初飛行)。
ソユーズ宇宙船の役割
ソユーズ宇宙船は、カザフスタン共和国のバイコヌール宇宙基地からソユーズロケットにより打ち上げられ、クルーをISSに輸送します。ソユーズ宇宙船には3人まで搭乗する事ができます。2000年11月にISSへ最初のクルーを輸送して以来、少なくともひとつのソユーズ宇宙船を、常にISSに結合させたままにしており、緊急帰還船の役割を果たしています。そして、次のソユーズ宇宙船が次期滞在クルーを乗せてISSに到着するか、打ち上げ準備が整うまで、帰還の出番を待っています。ソユーズ宇宙船の軌道上運用寿命は200日間であるため、約半年ごとに任務を交代する事になります。
ソユーズ宇宙船がISSにドッキングする時、Kursと呼ばれる自動ドッキングシステムにより、接近からドッキングまで自動で行われます。もちろん手動操作に切り替えることも可能です。ソユーズ宇宙船が打ち上げられてからISSにドッキングするまでは2日間、もしくは最短でも6時間かかりますが、地上への帰還は3時間半にも満たない時間で帰還し、カザフスタン共和国に着陸します。
ソユーズ宇宙船の構成
ソユーズ宇宙船はISSに結合する「軌道モジュール」、クルーが打上げ、帰還時に搭乗する「帰還モジュール」と、通信機器や姿勢を保つためのエンジンなどを搭載する「機器/推進モジュール」の3区画が連結しており、帰還時には大気圏の手前ですべて分離して耐熱シールドを装備した帰還モジュールのみが地球に戻ってきます。
ソユーズTMA宇宙船
ソユーズTMA宇宙船は、米国の宇宙飛行士も利用できるようにクルーの身長制限、体重制限などを緩和(より大柄な飛行士や小柄な宇宙飛行士に対応)するため1999年後半から改造に着手した新しい宇宙船であり、米国の予算を使用して改造が行われ、2002年10月の5Sフライトで初飛行しました。
ソユーズTMA宇宙船は内部が改造されたのみであり、外観はソユーズTMと同じです。ソユーズTMAは、以下のように改良されています。
- 身長体重制限の緩和
- ソユーズTM 身長164cm~182cm以内、体重56~85kg
- ソユーズTMA 身長150cm~190cm以内、体重50~90kg
- クルーの座席構造の変更、衝撃吸収ダンパーの改造
- 着陸時の重量制限を変更するため、ソフトランディング・システム(着地数秒前に噴射する衝撃緩和用固体ロケットモータ)の改造
- カプセルをより正確な場所に着地させるなど、運用性を向上させるため、オンボードコンピュータやソフトウエアのアップグレード
ソユーズTMA-M宇宙船
ソユーズTMA-M宇宙船は、旧式化していたソユーズTMA宇宙船の主な機器をデジタル化したタイプで、その後のソユーズMSへと引き継がれています。(2010年~2016年まで20機使用)
コンピュータを更新したことにより、打上げから6時間でISSにドッキングできるようになりました。
ソユーズMS宇宙船
ソユーズMS宇宙船は、2016年7月の47Sフライトで初飛行しました。
主な改良内容は以下のとおりです。
- 旧式化していた通信系を更新。ロシアのデータ中継衛星と通信できるようになり、通信可能範囲を1周回の約70%にまで増強(従来はロシアの地上局上空でしか通信できませんでした)
- ウクライナ製だったランデブー・ドッキングシステムKurs-Aをロシア製のKurs-NAに更新。これによりアンテナの数を6基から3基に削減しました。
- 推進スラスタを変更し、冗長性を強化
- 衛星航法システムを装備するなど、旧式化していた機器を更新
同様の改良は、先にプログレスMS補給船に導入され、性能を確認したうえで、ソユーズMSとして導入されました。
ソユーズMSの改良箇所に関するNASAの紹介ビデオ(9分間)
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