なぜ船内実験室より先に船内保管室が打ち上げられたのですか
当初は、第1便で船内実験室とロボットアームを打ち上げ、第2便で船内保管室、船外実験プラットフォームおよび船外パレットを打ち上げる計画でした。しかし、国際宇宙ステーション計画の大規模な見直しが行われ、1993年から1994年にかけてロシアが計画に参加することに変更されました。その際に、ISSの軌道傾斜角が51度と当初計画の28度よりも大きくなり、打上げ時のスペースシャトルの搭載重量の制約が生じるようになったことから、船内実験室からシステム機器を含む相当数のラックを外して打ち上げなければならないことになりました。
そこで、船内実験室には起動するのに必要な最小限のシステムラックのみを搭載し、残りのシステムラック、実験ラック、保管ラックは船内保管室に搭載して船内実験室より先に打ち上げることになりました。
「きぼう」のシステムはA系, B系の冗長構成となっており、有人宇宙施設の運用上の安全基準を満たすためには両系を稼働させる必要があります。
「船内実験室を起動するのに必要な最小限のシステムラック」とは、このうちB系のシステムラックです。船内実験室が取り付けられた後、まずB系のみを起動します。
すると、早急にA系も立ち上げてシステムの冗長系を確保する必要があるため、船内保管室に搭載して打ち上げたA系のシステムラックを船内保管室から船内実験室に移設し、A系のシステムを起動します。
船内実験室を先に打ち上げて、起動せずに置いておくということも考えられますが、この場合、熱制御ができないため、結露が生じて故障する可能性があります。また、船内実験室を先に打ち上げてB系のみを起動してしばらく置いておくのも、片系だけでは停止した場合のリスクがあるために、やはりA系、B系の両方を揃えて稼働させる必要があります。
これらのことから、船内保管室、船内実験室の順で打ち上げました。
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