スイングバイとは何ですか
宇宙船が宇宙空間を進む場合、自分が持っている推進燃料を使って、軌道を変換しながら目的地に向かうのですが、遠い惑星に到達するためには、たくさんの推進燃料を積み込まなければなりません。しかし、このための推進燃料を減らし、さらに、うまくすれば速度をアップできる「スイングバイ」というたいへん便利な方法があります。
図(a)は、アメリカのボイジャー2号が1981年に海王星などの遠い惑星を探査したときに土星を使ったスイングバイのようすです。このようすを土星の上に立って見てみましょう。宇宙船が土星に向かうときの速度を、遠ざかる速度をとすると、土星に近づいてきた宇宙船は、土星の引力に引っ張られて進路を曲げられ、また、同じ速度で遠ざかっていくように見えるでしょう。つまり、||=||となります。
では、このようすを太陽から見てみましょう(図(b))。私たちが立っている土星は、太陽を中心にして約10km/sでまわっています。
そして宇宙船も太陽を中心として、より遠い惑星に進んでいきます。このとき、土星の速度をとすると、宇宙船が土星に近づくときの速度は+(図の)、土星から遠ざかるときの速度は'+(図の)となります。すなわち、図からもわかるように、||>||となるのです。
つまり、スイングバイというのは図(c)のように、あたかも惑星の引力が惑星といっしょに動く反射板のように働いて、宇宙船を押し出し、惑星の運動方向に加速させることをいうのです。そのため、例えば土星の進行方向に垂直に宇宙船が接近し、また土星の進行方向にそって遠ざかるように、宇宙船を飛ばした場合には、速度はから+になることがわかるでしょう。
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