地上では、植物の茎は上に、根は下に伸びるが、無重力の宇宙では、どの方向に伸びるのだろうか?
無重力では、茎や根は勝手な方向に伸びる。植物は重力センサーによって、重力を感じ取っており、これが正常に機能しなくなるからである。
種子から発芽した芽ばえは、土の中で、茎を地上に(上に)、根を地中に(下に)伸ばしていく。このような性質は「重力屈性(じゅうりょくくっせい)」と呼ばれている。
無重力の宇宙では、植物の重力センサーが正常に機能しなくなるため、茎や根は勝手な方向に伸びてしまうのである。
重力を感じとるセンサーは、根の根冠(こんかん)の部分や、茎の維管束鞘(いかんそくしょう)の部分などにある平衡細胞である。
この細胞にはデンプンを含む平衡石が入っており、これが沈むことで重力の方向を感じ取っている。この平衡石の沈降が引き金となって、植物ホルモンやカルシウムイオンなど、各種の因子が働き、重力屈性がおこると考えられているが、そのメカニズムには、未だに不明な点が多い。

出典;Naturwissenschaften 73, 435-437 (1986)
© Springer-Verlag 1986
D. Volkmann and H. M. Behrens
P. Junk
植物の重力に対する反応を解明するために、宇宙実験は重要な役割を果たしているのである。また、宇宙での植物栽培を成功させ、収穫できるようになれば、長期間の宇宙旅行や宇宙滞在の実現へのステップとなるだろう。
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