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「慣性力」と「遠心力」はについて教えてください

 物体がそのままの状態を続けようとする性質を「慣性」といいます。力が働いていない物体が、静止ないし等速直線運動をするのが「慣性の法則」です。

 ある観測基準(これを「座標系」と呼びます)にとって、「慣性の法則」が成り立っているとき、観測者のいる座標系は「慣性系」と呼ばれます。慣性系においては、物体には力に比例した加速度が生じます。

 ところが、慣性系に対して加速度運動する座標系では、「慣性の法則」が成り立ちません。

 慣性系で静止ないし等速直線運動する物体に対して、加速度運動する観測者が見れば、逆に加速度運動して見えます。力が働いていない物体が、加速度運動するので、「慣性の法則が成り立っていない」というわけです。

 ところが、同じ観測者が、あくまで慣性の法則が成り立っていると考えたらどうなるでしょう。

 「加速度が生じているのだから、力が働いている」と考えたとしてもおかしくはありません。急ブレーキをかけた電車内で前につんのめるとき、「前に力が働いた」と考えた方が自然なこともあります。これが「慣性力」であり、「どうしてスペースシャトル内では、無重力になるのでしょうかで扱った「見かけの力」の正体です。

 物体の加速度aが決まれば、運動方程式 ma=F より、質量mと力Fは比例するので、慣性力は必然的に、その物体の質量に比例します。

 回転運動の場合は、どうなるのでしょうか。

 半径rの円周上を速度vで回転運動する物体は、中心向きに加速度 v2/r の運動をしていることになります。このとき、回転運動する座標系では、見かけの上では中心と反対向きに mv2/r の慣性力が働くように見えます。この回転座標系における慣性力が「遠心力」です。

 一般に言われているように、「回転する物体には、遠心力が働く」というのは誤りです。遠心力の原因は、観測者にあるのであって、物体ではありません。

※特に断りのない限り、画像クレジットは©JAXA