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宇宙で、振り子時計はそのまま使えるのでしょうか

そのままでは使えません。
 振り子の周期は、おもりの重さに関係なく、糸の長さだけで決まります。このことは、ガリレイが発見したことで知られています。時計に応用したのがホイヘンスです。振り子と歯車を組み合わせて、歯車が一定の速さで回転するようにしたのが、振り子時計の原型で、人類最初の機械式の時計です。その後、バネの振動周期を利用したものや、「クォーツ時計」と呼ばれる、水晶発振を利用したものなどが開発されました。

 振り子の周期は、おもりの重さに関係ありませんが、その場所の重力の強さは反映されます。重力が4倍になれば、周期は半分になります。つまり、重力が強いほど、周期は短くなるわけで、振り子の周期を正確に測ることで、地球上の場所による、わずかな重力の違いを知ることもできます。

 軌道上の人工衛星や、エンジンを噴射していない慣性航行中の宇宙船内では、重力がうち消されるため、振り子が振れなくなります。そのため、振り子時計は使えません。

 一方、月面上のように、重力が小さい(地球上の6分の1)場所なら、振り子の長さを短くするなどの調節をすれば、使うことができます。

 どうしても人工衛星内で、振り子時計を使いたいとすれば、たった一つだけ、方法があります。

 振り子時計を脱水機のように回転する容器に入れ、遠心力を発生させます。遠心力が「疑似重力」になるので、振り子を振ることができるようになります。

 もちろんそのとき、時計の進み方が正しくなるように、回転速度を正確に保たなければなりません。回転運動に限らず、加速度をともなった運動は「慣性力」と呼ばれる疑似重力を発生させます。そのために振り子の周期は影響を受けるのです。

 そのため、宇宙船でなくても、乗り物の中に置くには、振り子時計は不向き、と言うことができます。

※特に断りのない限り、画像クレジットは©JAXA