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向井宇宙飛行士がメダカを宇宙に持っていった実験とはどのようなものですか

概要

1994年7月に実施されたスペースシャトル「コロンビア号」で実施された第2次国際微小重力実験室(the Second International Microgravity Laboratory: IML-2)計画(STS-65)で、向井千秋宇宙飛行士とともに、4匹のメダカが15日間宇宙飛行しました。

このメダカは脊椎動物として初めて、宇宙で産卵を行いました。産卵された卵は正常に発生し、宇宙飛行中にメダカの幼魚がふ化しました。

これは、東京大学助教授の井尻憲一博士の提案によるものです

実験装置内のメダカ

目的

この実験の目的は、宇宙でメダカが産卵行動をとることができるかを調べるとともに、産卵された卵が宇宙で正常に発生できるかどうか、すなわち、受精からふ化までが正常に進行するかを調べることで、43個の卵が確認され、8匹がふ化し、文字どおり"宇宙メダカ"が誕生しました。

宇宙での産卵

準備

一般に魚は微小重力下では、ぐるぐると回転運動を行うことが知られています。

ジェット機を放物線を描くように飛行(パラボリックフライト)させることで約20秒間の微小重力状態が作り出せますので、この方法で多くのメダカをテストし、微小重力下でまったく回転せず普通に泳ぐ、微小重力に強いメダカの系統がいることを見つけだしました。

メダカの胚の発生
つまり耳石による平衡感覚より周囲の景色により姿勢を制御できる視力が良く環境の変化に対する適応能力に優れているメダカが選ばれたのです。

選抜された4匹のメダカは、日本宇宙少年団の子供たちの応募により、雄に"コスモ"と"元気"、雌に"夢"と未来(みき)"と名付けられました。

宇宙でのメダカ

地上で産卵を続けている雌雄2ペア(計4匹)のメダカを水棲生物飼育装置(Aquatic Animal Experiment Unit: AAEU)で飼育しました。

スペースシャトルのクルーはほぼ3日ごとに給餌機構を動かし、新しい餌を補給しました。餌は予め水槽内にセットされており、クルーがネジを回すことで1日分が水槽内に送り出されるようになっています。

産卵を継続させるために14時間の明期(昼)と10時間の暗期(夜)の明暗サイクルを繰り返し、水温は24℃を保つように設定しました。

産卵を続けているメダカは毎朝1回、明期開始後2時間以内に産卵行動をとりました。

クルーはその朝に産卵が行われたことを雌の腹部に付着している受精卵の存在、あるいは卵隔離機構内にその日産卵した卵があることで確認し、翌日の明期開始後に水槽にビデオカメラをセットして、メダカの様子を2時間にわたって撮影しました。

このような2時間連続の撮影はミッションの3日目、5日目、8日目に行いました。産卵された卵は水流によって水槽の片隅にある卵隔離用の区画に運ばれるようにしてあるので、親メダカに食べられることなく、卵の発生していく状況を日々を追って観察し、ビデオ撮影を行いました。

最初の1匹のふ化を地上に報告してきたのは向井宇宙飛行士でした。

帰還

地上に戻ってきたメダカは、6時間後も水槽の底に沈んだまま動きませんでしたが、重力の重さで沈んでいるだけでした。やがて1匹、2匹と泳ぎはじめました。

宇宙から帰ってきた親メダカ4匹は、実は浮き袋の使い方を忘れてしまっていたのです。重力のほとんど無い宇宙では浮き袋を使う必要が無かったためです。

宇宙では尾びれを使うことも少なかったようで、主に胸びれを使って泳いでいました。このため地上では水槽の底に沈んだまま、上へあがろうとするがすぐに底へ沈んでしまうという、滑稽な動きが続きました。

これに対し、赤ちゃんメダカは地上でも正常に泳いでいました。

地上に戻って4日目には、親メダカはほぼ正常に泳げるようになり、1週間後には産卵を開始し、以後も毎日産卵を続け、ふ化した稚魚は、その後も成長し、1,300匹余に達しました。

2週間宇宙に滞在したことによる子孫への影響は、とくに認められませんでした。

メダカ以外にも、金魚、イモリが搭載されました。金魚の実験では宇宙での微小重力状態にいかに順応していくかを調べ、イモリの実験は宇宙での産卵を調べました。

※特に断りのない限り、画像クレジットは©JAXA