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2023.11.17
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Int-Ball2の初期チェックアウトを実施中!

  • 「きぼう」日本実験棟
  • 国際宇宙ステーション
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JEM自律移動型船内カメラ(Int-Ball)の後継機、JEM船内可搬型ビデオカメラシステム実証2号機(Internal Ball Camera2:Int-Ball2)の初期チェックアウト作業が、行われています。
航法・誘導・制御機能チェックアウト中のInt-Ball2(Image by JAXA/NASA)
Int-Ball2は、国際宇宙ステーション(ISS)で活動する宇宙飛行士(クルー)を支援する船内ドローンロボットで、地上の管制員の操作によりISS内を飛び回り、写真や動画の撮影を宇宙飛行士の代わりに行います。多くの実験では、クルーが作業する様子をカメラで撮影し、撮影された映像を地上のスタッフ等がモニタしています。現在は、宇宙飛行士が自身で撮影に使用するカメラを準備し、カメラの設定や画角等の調整を行い撮影を行っていますが、Int-Ball2を使えば、撮影に関する一連の作業を地上から遠隔操作で行うことができ、クルーの作業負担を大幅に軽減することができます。
2017年に打ち上げたInt-Ball初号機で得られた知見を基に、Int-Ball2は、クルーの撮影に関する作業時間を最終的にゼロにすることを目標として開発されました。現在、古川宇宙飛行士と地上スタッフが協力して、その初期チェックアウト(各種機能のテスト)が行われています。

10月に行われたチェックアウトでは、航法・誘導・制御機能のテストが行われました。地上からのコマンドにより、Int-Ball2は「きぼう」船内を自在に飛びながら、内蔵カメラでの撮影を行いました。
航法・誘導・制御機能チェックアウト中のInt-Ball2(Image by JAXA/NASA)
意外かもしれませんが、チェックアウトを見守る地上スタッフから最も大きな歓声が上がったのは、船内に浮いてぴたりと止まる姿でした。実は、ISSの中は空気循環のために常に風が吹いており、Int-Ball初号機ではその風の影響を強く受けて静止するのが難しかったのです。Int-Ball2では、その結果を受けての改良がおこなわれて、推進機構が強化(初号機比で50倍以上)され、これにより初号機より広い範囲を移動可能にもなりました。また、民間ドローン技術を応用して、カメラの映像を画像処理することにより周囲の空間地図を作成すると同時にドローンの自己位置を推定する技術(Visual SLAM)を搭載、コマンドに合わせてぴたりと静止、上下左右に移動、また旋回するなどの動作が実現しました。これまでのクルーによる撮影の場合には、一度カメラをセットしてしまうと再びクルーがカメラを操作するまでは画角を変えることができませんが、Int-Ball2が自由自在に動くことが可能になれば、細かく画角を変更して撮影し、地上の運用管制員や実験担当者(研究者)が今見たい場所を見ることができるようになります。航法・誘導・制御機能のチェックアウトの様子は、以下のX(Twitter)より、動画でご覧いただけます。

11月のチェックアウトでは、自動リリース・ドッキング機能をテストしました。Int-Ball初号機ではなかった機能で、バッテリーが切れるとクルーが充電機に接続する必要がありました。Int-Ball2では、自動でドッキングステーションまで移動し、充電を始めることができます。この機能によって、クルーの負担はさらに軽減されます。自動ドッキングにも成功し、Int-Ball2の機能実証は順調に進んでいます。

ドッキングステーションまで自律移動中のInt-Ball2(Image by JAXA/NASA)
今後、さらなる実験を重ねて、将来の本格運用に向けたテストが行われます。クルーの撮影に関する作業時間をゼロにすることができる日も近いかもしれません。
また、月や火星など将来の有人探査に向けて、クルーを支援するロボット技術は不可欠なものになるでしょう。微小重力環境であるISSに比べて、月のように重力のある環境では、Int-Ball2とは違った課題が予想されますが、この実証実験は将来の有人宇宙探査時代に向けても布石となるでしょう。
ドッキングステーションに接続完了したInt-Ball2(Image by JAXA/NASA)

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※特に断りのない限り、画像クレジットは©JAXA