新型宇宙ステーション補給機(HTV-X)1号機では、国際宇宙ステーション(ISS)離脱後の技術実証ミッションフェーズにおいて、HTV-Xを実証プラットフォームとして活用したミッションを実施予定です。今回はそれらの中から、『SLR反射器Mt.FUJI』をご紹介します。
SLR反射器Mt.FUJIは、JAXA追跡ネットワーク技術センター軌道力学チームが開発するSLR(Satellite Laser Ranging: 衛星レーザ測距)用の反射器です。SLRでは対象物体と地上のSLR局との距離をミリオーダで計測できるため、正確に対象物体の軌道を決めることができます。また、近年、SLRは地上から対象物体の姿勢運動を把握する手段のひとつとしても注目されています。
HTV-X1号機の技術実証ミッションでは、まず開発したMt.FUJIがSLR反射器として所定の性能を有しているかの軌道上実証を行います。その次に、HTV-X1に特殊な飛行をしてもらいつつ、地上からSLRを行い観測データを集め、その観測データからHTV-X1の姿勢運動を推定・精度評価を行います。HTV-X1はテレメトリで真の姿勢が分かるため、SLRによる姿勢運動推定の定量的な精度評価ができます。このような実データを用いた姿勢運動推定精度評価は世界初となります。
HTV-X1号機の技術実証ミッションでは、まず開発したMt.FUJIがSLR反射器として所定の性能を有しているかの軌道上実証を行います。その次に、HTV-X1に特殊な飛行をしてもらいつつ、地上からSLRを行い観測データを集め、その観測データからHTV-X1の姿勢運動を推定・精度評価を行います。HTV-X1はテレメトリで真の姿勢が分かるため、SLRによる姿勢運動推定の定量的な精度評価ができます。このような実データを用いた姿勢運動推定精度評価は世界初となります。
宇宙開発が始まって65年。人類は約2.5万個(サイズ10cm以上)のゴミを宇宙空間に発生させました。宇宙ゴミは高速で飛行しているため、かすりでもしたら人工衛星を失ってしまいます。宇宙ゴミが、いつ、どこを飛ぶか把握すること(軌道把握)は年々重要になっています。JAXAでは、物体が宇宙ゴミとなった後も軌道を把握するための手段として、特に混雑化が進んでいる地球低軌道に特化した、SLR反射器Mt.FUJIを開発しました。このMt.FUJIを宇宙ゴミになるであろうロケット上段や人工衛星などの宇宙機に搭載しておけば、宇宙ゴミになった後も正確な軌道把握が可能です。宇宙ゴミの正確な軌道が把握できる事は、運用している衛星から見れば、いざとなれば最小限の軌道制御で衝突を回避できる事を意味します。また、宇宙ゴミの姿勢運動が地上から把握できるということは、宇宙ゴミ除去においても非常に有利です。すべての車がドアミラーを標準搭載するのが当たり前となったように、すべての宇宙機が、宇宙ゴミとなった後も地上から軌道や姿勢を把握しやすくするための手段として、SLR反射器を標準搭載してくれる世の中になり、宇宙ゴミにおびえることなく宇宙利用ができる日が来ればいいな、と願っています。
※特に断りのない限り、画像クレジットは©JAXA