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2024.02.02
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宇宙飛行士候補者2名が基礎訓練を公開し、近況を報告

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宇宙飛行士候補者募集で2023年2月に選抜された米田あゆ(よねだ あゆ)と諏訪理(すわ まこと)、2名の宇宙飛行士候補者が、1月31日(水)に筑波宇宙センターで基礎訓練の様子を公開。訓練後は、多くの先輩宇宙飛行士も着用してきたブルースーツに身を包み、報道関係者の取材に応じ近況を報告しました。
報道関係者に初めてブルースーツ姿を披露した米田(左)、諏訪(右)宇宙飛行士候補者

米田と諏訪は、それぞれ20234月と7月のJAXA入構以降、基礎訓練に取り組んでいます。基礎訓練は、JAXAが宇宙飛行士候補者に対して基本的な心構えや科学的・工学的な知識及び基礎的な技量等を習得させることを目的に行っているものです。2名は基礎訓練を修了し宇宙飛行士としての要件を満たすことで、JAXA 宇宙飛行士として認定されます。なお、宇宙飛行士に認定された後も、技量や体力を維持・向上するための訓練が続いていくことになります。

2名はこれまで、座学を中心にさまざまな知識を習得してきたほか、語学訓練や体力訓練、超小型人工衛星トレーニングキットを用いた基礎工学の訓練、航空機操縦訓練、泳力確認などを重ねてきました。

基礎訓練に関して詳しくはこちら

今回公開したのは、体力レベルの向上や運動の習慣化を図るための体力訓練です。多くの報道関係者に囲まれながら、2名は集中して有酸素運動や筋力トレーニングに取り組みました。

報道陣の前で体力訓練に取り組む諏訪(左)、米田(右)宇宙飛行士候補者

体力訓練終了後、2名は公の場では初めてのブルースーツ姿で、報道陣の質問に答えました。

冒頭の挨拶(抜粋/要約)

米田:今日はお集まりいただきありがとうございます。私たち2人は選抜されてからおよそ1年弱が経とうとしておりますが、日々自分にできることは何なのかを考え、様々なことを学びながら宇宙飛行士になるための訓練に励んでおります。そのタイミングで皆様にお会いできて、お話しできることを光栄に思います。よろしくお願いします。

諏訪:本日はお集まりいただきありがとうございます。私は7月1日に入構し、7か月が経ったところです。すっかり新しい仕事と訓練に慣れて、毎日楽しく一生懸命、訓練に取り組んでいるところです。本日はよろしくお願いいたします。

質疑応答(一部)

「ブルースーツに初めて袖を通した時の気持ちと、訓練を受けてから体力や意識に変化はあったかお聞かせください。」

米田:ブルースーツを手にした時、先輩の宇宙飛行士の方々が着ていた憧れのものが手元にあると感じました。そして自分の名前が入ったブルースーツを見て、改めて自分が宇宙飛行士候補者になったのだという実感がわき、背筋が伸びる思いと、少しこそばゆいような感覚を覚えました。先日、ブルースーツを着て泳力訓練を行ったのですが、このスーツを着て実際に訓練するのが初めてだったため、「これを本当に使っていいのかな」とも思ったのですが、ブルースーツと共に訓練に励むことで、どんどん愛着がわいてくるのだろうなと思っているところです。

体力についてはジムで週2~3回の訓練に励んでいます。継続的にジムでトレーニングすることは選抜前に比べるとかなり増えました。今ではトレーニングすることに慣れて、当たり前に習慣化してきたと感じています。体力そのものだけでなく、心の持ちようでも体力トレーニングが身に付いてきていて、それは宇宙飛行士になる上で大事なことだと思っています。

諏訪:私もブルースーツを初めて着た時は非常に嬉しかったです。ですが、鏡を見てみると、着こなしているというよりは、まだブルースーツに着られているな…というのが正直な感想でした。きちんと着こなすためには、訓練を積み重ねて宇宙飛行士としての自信を積み重ねていかないといけないなと感じましたし、このスーツを1日も早く着こなせるように訓練に励んでいきたいと思いました。

体力トレーニングについては、有酸素運動は入構前からわりと行っていたのですが、入構してからは筋力トレーニングを中心に行っています。ローマは1日してならずで、急に重い物を持ち上げられるようにはなりませんが、少しずつ筋肉がついてきた気がしています。

「JAXAの小型月着陸実証機SLIMが先日、月へのピンポイント着陸に成功しましたがどんな思いで見ていましたか?」

米田:今後月面での活動が始まる、まさに新たな章が幕を開けたなという気持ちがありました。SLIMが到着したあとは毎日月を見ていました。月にSLIMがいるのだなという思いで今後もずっと見続けるし、日本や世界の宇宙飛行士が「待っていてね」という気持ちでいるのではないかと思います。

諏訪:SLIMは探査時代の始まりと、それに日本が参画していくという象徴的な出来事だったと思いました。JAXAの一職員としても非常に誇らしく思うと同時に、候補者としてできることや今後の探査時代に自分が貢献できることは何かを常に考えながら今後の訓練に励んでいきたいと思いました。

「宇宙飛行士候補者としてお二人は同僚ですが、専攻や取り組んできたスポーツが違う中でお互いに助け合ったりアドバイスを受け合ったりするエピソードがあれば教えてください。」

米田:お互い助け合いながらやっているところです。それぞれ医学や地学の訓練では、お互いに分からないことを聞き合っています。先日の訓練で、ブルースーツを着て立ち泳ぎを10分間することがあったのですが、難しいな、しんどいなと思っていたところ、諏訪さんが「これは喋っていた方がいいのでは?」とおっしゃって。しかも、言語の練習になるからと日本語でなくロシア語や英語で10分間会話していました。そうすると時間が経つのはあっという間で、体力的なしんどさを感じず成し遂げることができました。こういう場面では、2人で協力して成し遂げたという実感を持ちます。

諏訪:(上記水泳のエピソードについて)実は途中からつらくて、話すのをやめようかなと思った瞬間もあったんです。ですが、ここで話すことを止めると、つらくなってきたんだなと悟られそうで、無理矢理付き合わせてしまいました。2人で訓練を受ける機会が多いので、授業の感想をシェアすることは頻繁にあります。語学の勉強はどういう風にやっているのかと話すこともありますし、最近では飛行機の操縦訓練が2人とも初めての経験だったので、情報をシェアし、お互いが上手くいかなかったことについて、どうやったら上達するのかと相談したこともありました。

報道陣からの質問に答える両宇宙飛行士候補者

「様々な訓練を受けて、それぞれの得意な訓練、つらい訓練はどんなものですか?」

米田:大変だった訓練は、やはり飛行機操縦訓練でしょうか。全く慣れないことだったので始めは戸惑いがありました。ワクワクもあったのですが、飛行機は地上と違って、立ち止まって考えることができず、飛び続けなければならない。姿勢が微妙に変化しても、他にやることがあっても常に飛び続けなければならない。そんなふうに同時並行で物事を行う時に「優先順位」を常に意識することはとてもいい訓練になったなと思いましたし、それをこれから身に付けなければならないと感じました。

諏訪:大変だった訓練もありますが、興味深い、楽しい訓練が多かったという気がしています。科学、エンジニアリング、医学、体力訓練など色々ありますが、なぜこんなに楽しいのかと考えた時に、それぞれの分野で講師の方々が皆さん一生懸命、2時間、3時間の講義の中にギュッと凝縮して教えてくださいます。我々に重要なことを全部教えたいという熱意がいつも伝わってきます。講義は一方通行でなく、我々から質問する機会も多いのですが、質問には見事に全て答えていただけるので、そうしたまわりの支えがあることがひしひしと感じられ、楽しさにつながっているのだと思います。

慣れないことは、米田さんと同じく飛行機の操縦訓練です。人生でやったことがないことを初めてやるのはやはり大変で、最初の2週間はかなり落ち込んだりもしていました。ただ、少しずつ慣れてくると、「こういうところ、楽しいかも」と思えてくる瞬間があり、その瞬間を感じられることも楽しみの1つとして、なるべくつらいと考えず、きっとこれを乗り越えれば楽しいことがあると信じて、最初はつらいと思う訓練も頑張ってやっています。

「先輩の日本人宇宙飛行士から何か訓練に関するアドバイスを受けたり、会話したりすることはありましたか?」

米田:先輩の宇宙飛行士の方々からは、常にアドバイスをもらっています。何か1つというよりは、常にそばで見守って、至らないところは的確に指摘してくださったり、アドバイスしてくださったりしています。また、そういった先輩との交流は、先輩の宇宙飛行士の方々が候補者だった時に、当時こういうことを考えていた…ということを聞ける機会でもあります。先輩との会話の中では、今、自分が進んでいるのは候補者の皆が通ってきた道なのだなと感じることがあります。

諏訪:ラッキーなことに私たちは常に先輩たちから非常に役立つ助言をいただくことができます。訓練の心構えや目標設定のアドバイスをいただいたり、より具体的な操縦訓練などの技術的アドバイスをいただいたり、今後、基礎訓練が終わった後にまだまだ訓練が続きますが、そういった先を見据えたアドバイスもいただけます。こういった先輩たちのアドバイス無しでは訓練をスムーズにこなせないと思っています。

「訓練を始めて、見える世界が色々変わってきたと思いますが、改めて宇宙飛行士になることに向けて感じている課題は何か教えてください。」

米田:技術的なところでは、まだまだ1つ1つ越えていかなければならない訓練のステップや課題がたくさんあるので、それを今後、真摯に続けていければと思うと同時に、宇宙飛行士候補者としては折り返し地点なので、一人前の飛行士になるにあたって、自分がいつどんな状況でも宇宙飛行士として対応できるよう、改めて意識を引き締めて訓練に励んでいかなければならないと思っています。

諏訪:この7か月、訓練を受けていて改めて思ったことは、宇宙飛行士は本当に幅広い知識やスキル・技量が必要だということです。どの知識も技量も一朝一夕に磨けるものではなく、日々の小さなことを積み重ねなければならないと感じましたし、こうした努力を今後も続けていくことが重要だと思っています。まだ今は足りないところがいっぱいあると思いますが、そういった努力を今後も続けていきたいなと思っています。

取材の様子

宇宙飛行士候補者取材終了の挨拶(抜粋/要約)

米田:今日はありがとうございました。いただいた質問から逆に考えさせられるなど、改めてこういった記者会見の場は我々にとって大事な機会だなと思っています。今後も引き続き頑張ってまいりますので、皆様応援のほどよろしくお願いします。

諏訪:基礎訓練も半ばでこれから先まだまだ続いていきますが、今後、実践的な訓練も入ってくる予定になっていますので、1つ1つ楽しみながら丁寧に全力で訓練に取り組んでいきたいと思っています。まだまだ頑張っていかないといけないのですが、是非これからも皆さんに応援いただければなと思っています。本日は本当にありがとうございました。

意気込みを語った両宇宙飛行士候補者
※本文中の日時は全て日本時間

※特に断りのない限り、画像クレジットは©JAXA