低重合度のケイ酸塩融体における粘性、密度の温度依存性測定

公開 2021年11月 2日

Silicate MeltMeasurement of temperature dependence of viscosity and density of depolymerized silicate melts

準備中
研究目的 本研究では、「きぼう」日本実験棟搭載の静電浮遊炉を用いることにより、これまでの地球科学研究では測定することができなかった低重合度のケイ酸塩融体の密度、粘性の温度依存性を測定します。さらに、地上における高圧下落球法粘性測定により粘性率の圧力依存性を測定し、宇宙実験データと組み合わせることにより、地球内部の高温高圧環境下におけるマグマの粘性変化についての信頼性の高いモデルを構築することを目的としています。
宇宙利用/実験内容 本実験では、「きぼう」搭載の静電浮遊炉を用いて、低重合度のケイ酸塩融体の重合度(SiO2量比)とマグネシウム(Mg)/鉄(Fe)量比の影響による密度、粘性変化とその温度依存性を測定します。
期待される利用/研究成果 これまでの地球科学研究では得ることができなかった、SiO2量が少なく、Feに富む、低重合度のケイ酸塩融体の熱物性データを測定することは、多くの地球科学研究に貢献すると期待されます。例えば、地球の進化過程の理解に重要な影響を与える、マントル深部における重力的に安定な重いマグマ層の存在の可能性の議論に関して、マントル深部環境下でのケイ酸塩マグマと岩石の密度逆転の可能性を判定するための精度の高い密度、粘性モデルを構築できると期待されます。
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詳細

研究代表者

  • 河野 義生(愛媛大学)

研究分担者

  • 尾原 幸治(高輝度光科学研究センター)
  • 近藤 望(愛媛大学)
  • 小山 千尋(宇宙航空研究開発機構)

要旨

地球内部におけるマグマの挙動・ダイナミクスの理解には、ケイ酸塩融体の構造・物性の知識が必要不可欠です。特に、地球の形成初期には、地球の大部分が溶融したマグマの海(マグマオーシャン)が存在したと考えられており、そのようなマグマオーシャン内部のマグマの状態・挙動の解明は、初期地球のマグマオーシャンから現在の核やマントルの形成に至る地球の形成過程を理解する上で重要です。

ケイ酸塩融体は重合した構造を持ち、主にSiO2量の変化によりその重合度は大きく変化し、その結果、粘性、密度などの物性も大きく変化します。現在の地表の火山で噴出するマグマのようなSiO2に富む重合したケイ酸塩融体の粘性測定はこれまでにも数多く行われています。一方、初期地球に存在したマグマオーシャンや現在の地球深部で生成するマグマは、SiO2量が少なく、さらにFeに富む、低重合度のケイ酸塩融体であると考えられていますが、その粘性、密度は、実験の技術的困難さ(高い融点、低い粘性率、容器との反応の問題など)により理解が乏しいのが現状です。高圧実験と放射光X線測定を組み合わせた落球法粘性測定により、ケイ酸塩融体の高圧下粘性測定は一部行われていますが、落球法粘性測定では融点近傍のデータのみしか取得することができず、そのため取得できるデータは圧力依存性のみに限定されており、温度依存性については理解が乏しい問題があります。そのため、初期地球のマグマオーシャンのような非常に高い温度下におけるマグマの物性を理解するためには、ケイ酸塩融体の粘性、密度の温度依存性の理解が必要不可欠です(図1)。

図1 高圧落球法粘性測定の圧力温度条件とマグマオーシャン内部の温度

本実験では、「きぼう」搭載の静電浮遊炉を用いて、低重合度のケイ酸塩融体の重合度(SiO2量比)とマグネシウム(Mg)/鉄(Fe)量比の影響による密度、粘性変化とその温度依存性を解明します。これまでの地球科学研究では得ることができなかった低重合度のケイ酸塩融体の熱物性データを宇宙実験により取得することにより、多くの地球科学研究に貢献すると期待されます。

実験の概要

本実験では、低重合度のケイ酸塩融体の重合度(SiO2量比)とマグネシウム(Mg)/鉄(Fe)量比の影響による密度、粘性変化とその温度依存性を理解するために、SiO2量とMg/Fe比の異なるMgO-FeO-SiO2組成のケイ酸塩融体について、高温から過冷却温度域における密度、粘性の温度依存性を測定します。「きぼう」搭載の静電浮遊炉は、一般的な電気炉では溶融が難しい高融点のかんらん石組成などを溶融させることが可能であり、さらに無容器の静電浮遊炉実験では、Feに富むケイ酸塩融体においても容器の反応がなく実験が可能となるなど、これまでのケイ酸塩融体の熱物性研究の問題を克服し、これまで地上の実験ではできなかったFeに富むかんらん石組成などの密度、粘性を測定することが可能になります。

さらに、本研究では、地上において高圧下落球法粘性測定実験を並行して行うことにより、宇宙実験と同じ試料について粘性率の圧力依存性の測定を行うことを計画しています。そして、宇宙実験で得られる粘性の温度依存性データと地上高圧実験で得られる圧力依存性データを組み合わせることにより(図1)、地球内部の高温高圧環境下におけるマグマの粘性変化についての信頼性の高いモデルを構築することが可能になると考えられます。さらに加えて、放射光X線測定を用いた液体の構造解析を行い、重合度、Fe含有量によるケイ酸塩融体の構造の変化と熱物性の関係を議論することを計画しています。

期待される成果

「きぼう」搭載の静電浮遊炉を用いた実験により、これまでの地球科学研究では得ることができなかった、SiO2量が少なく、Feに富む、低重合度のケイ酸塩融体の熱物性データを測定することは、多くの地球科学研究に貢献すると期待されます。例えば、初期地球において、マントルの深部に重力的に安定な重いマグマ層が形成し、そのようなマントル深部の重いマグマ層が地球の進化過程に大きな影響を与えた可能性が提唱されています。近年の高圧実験研究により、高圧下におけるマグマの圧縮挙動(密度の圧力依存性)の理解が進み、マントル深部の高圧高温下において、ケイ酸塩マグマの密度が岩石よりも重くなり、マグマが沈む可能性があることも分かってきました。しかしながら、マントル深部におけるケイ酸塩マグマと岩石の密度逆転の可能性を検証するためには、マグマ中のFe量比が密度、粘性に与える影響と、マントル深部の非常に高い温度下での密度、粘性の温度依存性が重要なパラメーターとなりますが、これらデータについては実験データが不十分であるため、未だこの議論に決着がついていません。本宇宙実験により、マグマ中のFe量比の影響による密度、粘性変化と、超高温下での密度、粘性の温度依存性データを取得することにより、マントル深部におけるケイ酸塩マグマと岩石の密度逆転の可能性を判定するための精度の高い密度、粘性モデルを構築できると期待されます。

河野 義生 KONO Yoshio

愛媛大学 准教授

2006年に横浜国立大学環境情報学府博士後期課程修了。愛媛大学研究員、助教、米国・カーネギー地球物理研究所ビームラインサイエンティストを経て、2018年7月より愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター准教授、現在に至る。

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