
中村 信一
JAXA 追跡ネットワーク技術センター 技術領域主幹
■担当業務の概要
HTV-Xの与圧モジュール外部に、JAXAが開発した小型軽量の衛星レーザ測距(SLR)用リフレクター「Mt. FUJI」を3基搭載します。地上からレーザを照射し反射光を観測することで、HTV-Xとの距離測定に加え、SLRによる姿勢運動の推定も可能です。これまでにも姿勢推定の試みはありましたが、定量的な精度評価は未実施でした。今回はHTV-X 1号機のテレメトリから得られる姿勢データと比較することで、SLRによる姿勢推定の精度を世界で初めて定量的に評価します。
HTV-X1号機に込めた思い
近年、宇宙ゴミが宇宙機の安全運用を脅かしています。抜本的な解決には至っていないものの、暫定策として国際的に求められているのが「視認性の向上」です。その一手として、JAXAは衛星レーザ測距(SLR)用反射器「Mt. FUJI」を開発しました。
これを搭載していれば、宇宙機が宇宙ゴミ化した場合でも軌道把握が可能です。今後、宇宙機ミッションがMt. FUJIの搭載意義を実感できるよう、その価値を伝えていくことが私の使命です。HTV-Xでの実験の成否は、将来宇宙機がMt. FUJIを採用するか否かを左右する分水嶺になります。
開発は決して平坦ではなく、ISAS先端工作センター、研究開発部門の材料専門家、JAXA OBの知恵と技術の結晶です。共にMt. FUJIを育ててくれた仲間たちへ、心から感謝します。
この実験を成功させ、Mt. FUJI搭載の流れを作り出しましょう。 There's still a long way to go.