【MHU-11】神経系の操作により人工冬眠を宇宙で動物に誘導し評価するための方法の確立

公開 2026年5月28日

MHU-11Establishment of a method for inducing and evaluating artificial hibernation in animals in space through nervous system manipulation

準備中
研究目的 マウスを用い、微小重力環境下において神経系の操作により人工冬眠を誘導できるかを検証するとともに、その誘導が生体機能に及ぼす影響を明らかにします。
宇宙利用/実験内容 微小重力環境下で、体温・代謝を制御する神経回路を操作し、マウスを人工冬眠(低体温・低代謝状態)へ誘導します。宇宙環境における誘導の安定性に加え、生理指標(体温・心拍・代謝)の変化、および回復過程を地上実験と比較し、人工冬眠の実現可能性とその神経メカニズムを検証します。
期待される利用/研究成果 日本は冬眠誘導に関する生物学研究で世界をリードしていますが、人工冬眠を実現するデバイスや低代謝状態のモニタリング技術の宇宙への応用は、まだ十分に進んでいません。本研究によりこれらの技術が実用化されれば、宇宙への動物輸送や打上げ遅延への対応といった課題の解決が期待されます。さらに、日本主導による宇宙環境における多様な生命科学研究の高度化にもつながると考えられます。
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研究代表者

  • 櫻井 武(筑波大学)

研究分担者

  • 砂川 玄志郎 (理化学研究所)
  • 齊藤 夕貴 (筑波大学)
  • 征矢 晋吾 (筑波大学)
  • 平野 有沙 (筑波大学)
  • Yoan Cherasse(筑波大学)

要旨

本研究では、脳の特定の神経細胞を操作することで、動物に「人工冬眠」と呼ばれる低体温・低代謝状態を誘導し、その仕組みを明らかにすることを目的としています。 冬眠は一部の動物に見られる特殊な生理状態であり、体温や代謝を大きく低下させることで、厳しい環境を生き延びる戦略です。近年、このような状態を人工的に誘導できることが明らかになり、医療や宇宙探査への応用が期待されています。
特に宇宙環境では、微小重力や宇宙放射線などのストレスが生体に与える影響が大きく、長期滞在における健康維持が重要な課題となっています。本研究では、宇宙という特殊環境において人工冬眠状態を安全に誘導・維持できるかを検証し、その生理学的・神経科学的基盤を解明します。

実験の概要

本研究では、マウスを対象に、脳内の特定の神経細胞(体温や代謝を調節する神経回路)を遺伝学的および薬理学的手法により操作し、人工的に低体温・低代謝状態(人工冬眠状態)を誘導します。また、生体モニタリング技術を用いて、体温や心拍などのデータを測定します。

地上実験に加えて、国際宇宙ステーション(ISS)の微小重力環境において同様の操作を行い、以下の点を比較・評価します。

  • 人工冬眠状態の誘導の可否と安定性
  • 体温・代謝・心拍などの生理指標の変化
  • 神経活動や脳機能の変化
  • 宇宙環境が人工冬眠に与える影響
また、人工冬眠からの回復過程も詳細に解析し、安全性や可逆性(元に戻る性質)についても評価します。

これにより、「宇宙環境下でも人工冬眠を安定して誘導できるか」という根本的な問いに答えるとともに、その制御メカニズムの理解を深めます。

期待される成果

日本は冬眠誘導の生物学的研究で世界を大きくリードしていますが、動物に人工冬眠を誘導するためのデバイスや低代謝の生体モニタリング技術の宇宙への応用は、いまだ十分に進んでいないのが現状です。これらの人工冬眠を誘導するための技術が利用可能となれば、動物の遠方宇宙への輸送や、宇宙ミッション特有のロケット打上げ遅延への対応など、現在の宇宙環境ににおける生命科学研究に伴う重大な課題を、日本が先導して解決することができると考えられます。

また、その結果として有人宇宙技術につながる多様な生命科学研究が実現可能になります。

櫻井 武 SAKURAI Takeshi

筑波大学 医学医療系/国際統合睡眠医科学研究機構 教授

筑波大学医学医療系/国際統合睡眠医科学研究機構
睡眠・覚醒を制御する神経ペプチド「オレキシン」の発見者。筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構(IIIS)教授として、睡眠・覚醒の神経メカニズムに関わる研究を推進し、近年では冬眠様状態を誘導するQニューロンを同定。これを操作することで、げっ歯類に人工的な冬眠様低代謝状態を惹起することに成功している。
一般向け著書「SF脳とリアル脳」、「睡眠の科学」など多数執筆。

国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
有人宇宙技術部門 宇宙環境利用推進センター
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