宇宙滞在中の液体生検による血漿中核酸のゲノム・エピゲノム解析 ~cfDNA等を用いた低侵襲体内モニタリングに向けて~

更新 2024年9月 9日

Cell-Free EpigenomeGenome and Epigenome Analysis of Circulating Nucleic Acid-based Liquid Biopsy

完了
宇宙利用/実験期間 2017年 ~ 2019年
研究目的 血液中の細胞外DNA(cell-free DNA, cfDNA)、循環RNAを次世代シーケンサーを用いて解析し、直接アクセスできないヒトの器官や臓器の宇宙環境応答を、ゲノム・エピゲノムレベルで明らかにします。
宇宙利用/実験内容

ISSに滞在する宇宙飛行士の血液に含まれる細胞外DNA、循環RNAを解析することにより、下記を解明します。

  1. 宇宙環境応答によるRNA発現変化を明らかにします
  2. cfDNAの解析から宇宙滞在への適応、または障害が起こる組織の候補を特定します
  3. 宇宙環境で起きるDNA損傷、変異の頻度を明らかにします
期待される利用/研究成果 血液中に含まれる核酸を調べることにより、宇宙飛行士の宇宙環境応答のモニタリング法への応用が可能になります。また、宇宙滞在や老化に伴う骨や骨格筋の変化をサポートする医薬品や検査技術の開発に活用できると考えられます。
成果報告
関連トピックス
詳細

研究代表者

  • 村谷 匡史(筑波大学 医学医療系 教授)

研究分担者

  • 高橋 智(筑波大学 医学医療系 教授)

要旨

ヒトの血液中には体内の細胞から放出された小さな核酸(DNA、RNA)が循環しています。比較的容易に採取できる血液サンプルを解析することにより、直接アクセスできない器官や臓器の状態を知ることができます。例えば、細胞外DNA (cell-free DNA)は体内の死細胞に由来しており、体内の細胞の入れ替わりを知る手掛かりとなります。また、細胞から膜に包まれて放出される循環RNA(circulating RNA)は、細胞同士のコミュニケーションの様子や細胞が置かれた環境を反映していると考えられており、医学分野では同様のRNAが疾患のバイオマーカーとして注目されています。 本研究では宇宙飛行士の血液中の細胞外DNA、循環RNAを次世代シーケンサーで網羅的に解析し、ヒトの器官・臓器がどのように宇宙環境に応答しているかを、ゲノム・エピゲノムレベルで解明します。

  • ※エピゲノム:遺伝子の塩基配列を変えることなく、遺伝子発現を調節する仕組み。具体的にはDNAのメチル化、DNAが巻き付いているヒストンというタンパク質の化学修飾(メチル化、アセチル化など)を指し、核酸がどのような細胞に由来するのかを探る手掛かりになります。
ヒトの血液中を循環する小さな核酸

実験の概要

国際宇宙ステーション(ISS)に滞在する宇宙飛行士より、飛行前、ISS滞在中、飛行後に採血を実施します。血液を遠心して得られる血漿に含まれる細胞外DNA、循環RNAを分離し、次世代シーケンサーで網羅的に解析します。次世代シーケンサーは大量の塩基配列を高速で調べることができるため、核酸の網羅的解析を効率よく行うことができます。 細胞外DNA、循環RNAが宇宙飛行でどのように変化するのかを調べることにより、下記を明らかにします。

  1. ヒトの器官や臓器が宇宙環境に応答する際のRNAの発現の変化を明らかにします。
  2. 細胞外DNAの量とメチル化解析から、宇宙飛行への適応、または障害が起こる組織を推定します。
  3. 宇宙環境で生じるDNA損傷・変異の頻度と種類を調べます。

期待される成果

将来的には宇宙飛行士の宇宙環境応答のモニタリング手法として応用できる可能性があります。また、宇宙滞在や老化にともなう骨や筋肉の変化を対象とした医薬品や検査技術の開発等に活用できると考えられます。

研究論文(Publication)
論文名
Release of CD36-associated cell-free mitochondrial DNA and RNA as a hallmark of space environment response.
雑誌名
Nature Communications 15, Article number: 4814 (2024)

村谷 匡史 MURATANI Masafumi

筑波大学 医学医療系 教授

筑波大学卒業(2000年)、米国Cold Spring Harbor研究所Watson School of Biological SciencesにてPh.D.取得(2005年)。その後、英国Cancer Research UKロンドン研究所、A*STARシンガポールゲノム研究所を経て筑波大学に着任(2014年)。

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