長期宇宙飛行時における心臓自律神経活動に関する研究

公開 2020年3月11日

Biological RhythmsThe Effect of Long-term Microgravity Exposure on Cardiac Autonomic Function by Analyzing Electrocardiogram

完了
宇宙利用/実験期間 2008年 ~ 2012年
研究目的 24時間⼼電図記録を⾏い、⽣物学的リズムの変動と、睡眠中における⼼臓の休息度等を評価し、宇宙⾶⾏⼠の健康管理技術の向上に役⽴てます。
宇宙利用/実験内容 ホルター⼼電計で24時間⼼電図を測定します。ホルター⼼電計は、バイオロジカルリズムといって、⼈間の体内時計がどのくらいシフトするかを調べるために使⽤できます。
期待される利用/研究成果

宇宙でも⽣体リズムを維持することができる

2008年から実験を⾏い、24時間の⼼電図データを得た結果、以下のことが分かりました。

①⼼臓⾃律神経活動を解析すると、⼀般に激しく活動しているときに活性化する交感神経の活動は、帰還後は⾶⾏前、⾶⾏中に⽐べて上昇する傾向がありました。無重⼒の⻑期宇宙滞在から、地球環境に帰還すると再び重⼒環境の活動に適応しようとして⼼臓の交感神経活動が⾼まる傾向が⽰唆されました。

②⼀⽅、リラックスしているときに活性化する副交感神経の活動は、⾶⾏前に⽐べて⾶⾏開始直後および⾶⾏開始2ヶ⽉目まで低下し、⾶⾏後半の約150⽇目には改善することが観察されました。⾶⾏開始直後は、無重⼒環境で体液が頭の⽅に移動するため、⼼臓への⾎流が減り、⼼臓迷⾛神経活動に関係する副交感神経の活動が低下します。その後、宇宙環境に適応して、宇宙滞在後半では回復することが⽰唆されました。

③⼼臓⾃律神経活動のサーカディアンリズムの周期は、宇宙⾶⾏の後半に約24時間となり、⾶⾏前と⾶⾏後に24時間からずれる傾向が⽰されました。⽇中の⾼照度光がなく無重⼒環境であるISSでは、⽣体リズムが乱れると想定していましたが、フライト直後にサーカディアンリズムは⼀旦乱れるものの宇宙滞在後半ではむしろ規則正しくなっており、⼼臓⾃律神経の宇宙環境への再適応や船内での規則的な⽣活がサーカディアンリズムの維持に有⽤であると考えられました。 以上より、現在のISS⻑期宇宙滞在の⽣活において、⼼臓⾃律神経活動サーカディアンリズムは、打ち上げ直後は⼀過性の影響を受けるものの、⻑期的には規則正しく保たれることが確認されました。

詳細
研究論文(Publication)

向井 千秋 MUKAI Chiaki

JAXA


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