複数の希土類元素を組み合わせた珪酸塩融体の熱物性を宇宙で精密測定!
~「きぼう」の静電浮遊炉(ELF)を用いた宇宙実験の様子をご紹介します~

公開 2026年4月14日

国際宇宙ステーション(ISS)の「きぼう」日本実験棟に搭載された静電浮遊炉(Electrostatic Levitation Furnace: ELF)を用いて、さまざまな宇宙実験が行われています。
2026年3月下旬には、高温で溶融した状態の複数の希土類元素※1 を組み合わせた珪酸塩を対象に、その熱物性を、ELFによって世界に先駆けて精密に測定し、元素の種類や組み合わせの違いが物性に与える影響を明らかにすることを目指す「HEROES」実験が開始されました。

ELFでは、地上では測定が難しい高融点材料の熱物性を高い精度で調べることができます。試料を非接触で浮遊させ、レーザーにより2000℃を超える超高温で加熱し、溶融状態における希土類珪酸塩の密度、粘度、表面張力を測定します。さらに、それらの結果から熱膨張係数を算出します。
組成の異なる複数の試料を系統的に評価することで、希土類元素を多種類組み合わせることの効果や、希土類とケイ素の組成比の違いが熱物性に及ぼす影響を明らかにします。

ELFでデータが取得できれば、将来的にその成果は航空機の次世代タービンブレード開発へつながり、航空機そのものの軽量化・低燃費化により、社会を大きく変える可能性があります。

原料粉末とガラス試料(Image by 東北大学)

本研究では、ハイエントロピー希土類珪酸塩※2 の融液熱物性を世界で初めて測定し、元素の多様化と熱物性の関係性を解明することが期待されます。これらの基礎的知見は、材料科学の理論発展に寄与するものと考えられます。他方、高融点酸化物は溶射で製造される高温部材のコーティング材料として有望視されていますが、融体状態での熱物性データがほとんど存在しません。本研究で得られるデータは、溶射プロセスにおける従来の経験的手法を補完する科学的アプローチの一助となり、産業上への応用も期待されます。

※1: スカンジウム、イットリウム、ランタンからルテチウムまでのランタノイド15元素を合わせた計17種類の金属元素の総称。スマートフォン、電気自動車、高性能磁石などのハイテク産業に欠かせない、強力な磁性や発光特性を持つ「産業のビタミン」と呼ばれています。

※2: 次世代の耐環境コーティング(EBC)材料候補。複数の希土類元素を等量程度混合し、高い混合エントロピーによって結晶構造(固溶体)を安定化させます。

浮遊した状態で溶融したサンプル
HEROESチーム
※特に断りのない限り、画像クレジットは JAXA


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