【MHU-2】「きぼう」を利用した骨粗鬆症に係わる蛋白質の臨床プロテオーム研究

更新 2024年12月 3日

Medical ProteomicsMedical proteome analysis of osteoporosis- and bone mass-related proteins using the Kibo Japanese Experiment Module of International Space Station

完了
宇宙利用/実験期間 2017年 ~ 2019年
研究目的 タンパク質の発現を網羅的に解析するプロテオーム法により、宇宙飛行士の血液、宇宙飛行したマウスの血液、骨、骨格筋を解析し、骨量減少に関連するタンパク質を明らかにします。
宇宙利用/実験内容 宇宙は加齢加速に似た環境であり、急速に骨量減少や筋萎縮が生じます。宇宙飛行前後の飛行士の血液、宇宙飛行前後のマウスの血液、骨、骨格筋に含まれるタンパク質の発現の変動を質量分析法で調べることにより、骨量減少に関連するタンパク質を同定します。この結果を骨粗鬆症患者さんの血中タンパク質の解析結果と比較することにより、宇宙での骨量減少と骨粗鬆症の関係を明らかにします。
期待される利用/研究成果
  1. 骨粗鬆症の診断マ ーカー開発
    骨量・骨格筋減少の原因タンパク質の解明は、骨粗鬆症を早期発見、あるいは同疾患を診断するためのバイオマーカーとしての利用が可能になります。
  2. 骨粗鬆症の治療法開発
    骨粗鬆症の原因タンパク質の発現を制御する医薬品を開発できれば、同疾患の予防・治療法の開発につながります。
成果報告
関連トピックス
詳細

研究代表者

  • 木村 弥生(横浜市立大学 先端医科学研究センター)

研究分担者

  • 平野 久 (横浜市立大学 名誉教授)
  • 齋藤 知行(横浜市立大学 名誉教授)
  • 熊谷 研 (横浜市立大学大学院 医学研究科)
  • 井野 洋子(横浜市立大学 先端医科学研究センター)
  • 中居 佑介(横浜市立大学 先端医科学研究センター)
  • 秋山 知子(横浜市立大学 先端医科学研究センター)
  • 森山 佳谷乃(横浜市立大学 先端医科学研究センター)
  • 大平 宇志(横浜市立大学 先端医科学研究センター)
  • 武田 裕里子(横浜市立大学大学院 医学研究科)
  • 山本 幸夫(ライオン株式会社)
  • 江頭 健二(ライオン株式会社)
  • 山本 悠 (ライオン株式会社)

地上実験論文

  1. Nakai Y, Kumagai K, Ino Y, Akiyama T, Moriyama K, Takeda Y, Egashira K, Ohira T, Ryo A, Saito T, Inaba Y, Hirano H, Kimura Y. Use of data-independent acquisition mass spectrometry to identify an objective serum indicator of the need for osteoporotic therapeutic intervention. J Proteomics. 2024 Apr 2:105166. doi: 10.1016/j.jprot.2024.105166. Epub ahead of print. PMID: 38574990.
  2. Ohira T, Ino Y, Nakai Y, Morita H, Kimura A, Kurata Y, Kagawa H, Kimura M, Egashira K, Moriya S, Hiramatsu K, Kawakita M, Kimura Y, Hirano H. Proteomic analysis revealed different responses to hypergravity of soleus and extensor digitorum longus muscles in mice. J Proteomics. 2020 Apr 15;217:103686. doi: 10.1016/j.jprot.2020.103686. Epub 2020 Feb 12. PMID: 32061808.

データジャーナル

  1. Nakai Yusuke, Kumagai Ken, Ino Yoko, Akiyama Tomoko, Hirano Hisashi, Kimura Yayoi. Dataset for serum proteome analysis of patients with osteoporosis and with osteopenia by data-independent acquisition mass spectrometry (DIA-MS). Journal of Proteome Data and Methods. 2024 Volume 6. doi: 10.14889/jpdm.2024.0020.
  2. Nakai Yusuke, Ino Yoko, Akiyama Tomoko, Ohira Takashi, Kumagai Ken, Hirano Hisashi, Kimura Yayoi. Dataset for gravity-responsive serum proteins in spaceflight mice using data-independent ac-quisition mass spectrometry (DIA-MS). Journal of Proteome Data and Methods. 2024 Volume 6. doi: 10.14889/jpdm.2024.0019.
  3. Ino Yoko, Ohira Takashi, Nakai Yusuke, Hirano Hisashi, Kimura Yayoi. Dataset for proteome analysis of the gastrocnemius muscle in mice exposed to microgravity. Journal of Proteome Data and Methods. 2024 Volume 6 doi: 10.14889/jpdm.2024.0018.
  4. Nakai Yusuke, Ino Yoko, Akiyama Tomoko, Moriyama Kayano, Ohira Takashi, Kumagai Ken, Hirano Hisashi, Kimura Yayoi. Astronaut serum proteome analysis dataset obtained by data-independent acquisition mass spectrometry (DIA-MS). Journal of Proteome Data and Methods. 2024 Volume 6. doi: 10.14889/jpdm.2024.0017.
  5. Ino Yoko, Nakai Yusuke, Ohira Takashi, Akiyama Tomoko, Moriyama Kayano, Hirano Hisashi, Kumagai Ken, Kimura Yayoi. Dataset for gravity-responsive proteins in the bone tissue of spaceflight mice obtained by data-independent acquisition mass spectrometry (DIA-MS). Journal of Proteome Data and Methods. 2024 Volume 6. doi: 10.14889/jpdm.2024.0012.
  6. Ino Yoko, Ohira Takashi, Kumagai Ken, Nakai Yusuke, Akiyama Tomoko, Moriyama Kayano, Hirano Hisashi, Kimura Yayoi. Dataset for proteomic analyses of mouse soleus muscle in three model experiments under different gravity environments. Journal of Proteome Data and Methods. 2024 Volume 6. doi: 10.14889/jpdm.2024.0011.
  7. Ino Yoko, Ohira Takashi, Nakai Yusuke, Hirano Hisashi, Kimura Yayoi. Dataset for proteome analysis of soleus and extensor digitorum longus muscles in mice exposed to microgravity with or without fructo-oligosaccharide ingestion. Journal of Proteome Data and Methods. 2024 Volume 6. doi: 10.14889/jpdm.2024.0010.
  8. Ino Yoko, Ohira Takashi, Nakai Yusuke, Hirano Hisashi, Kimura Yayoi. Dataset for proteome analysis of soleus and extensor digitorum longus muscles in mice exposed to hypergravity (3-g). Journal of Proteome Data and Methods. 2024 Volume 6. doi: 10.14889/jpdm.2024.0009.

要旨

生体には約2万の蛋白質が存在し、生命機能の制御を担っています。疾患の発症にも蛋白質が関与していることが予想されており、高齢者の骨粗鬆症や宇宙飛行による骨量減少にも何らかの蛋白質が関与していると考えられていました。この研究では、質量分析法という解析方法で、微量の血液に含まれる多数の蛋白質を解析することにより、宇宙飛行による骨量減少に関与している蛋白質を解明します。

  • ※質量分析法:分子をイオン化し、そのイオンを電磁気的に分離し、質量を測定する方法

実験の概要

国際宇宙ステーション(ISS)に滞在する宇宙飛行士より、飛行前、ISS滞在中、飛行後に採血を実施します。血液を凝固させた後、遠心して得られる血清に含まれる蛋白質を質量分析計で網羅的に解析します。質量分析計はサンプルに含まれる多数の蛋白質を、迅速に一度で定量することが可能であり、蛋白質の網羅的解析の強力なツールとなります。血清中の蛋白質が宇宙飛行でどのように変化するのかを調べることにより、宇宙飛行による骨量減少に関与している蛋白質を調べます。また、宇宙飛行したマウスの血液、骨、骨格筋において、宇宙飛行で発現が変動する蛋白質を調べ、宇宙飛行による骨量減少に、ヒトとマウスで類似した蛋白質が関与しているかを調べます。

研究チームでは骨粗鬆症患者さんの血液も質量分析法で解析しており、宇宙飛行と骨粗鬆症の骨量減少に同じ蛋白質が関与しているかを調べます。

期待される成果

骨量・骨格筋減少の原因となる蛋白質を解明することができれば、骨粗鬆症の早期発見や診断のためのバイオマーカーとして利用することが可能になります。さらに、骨量減少の原因蛋白質の発現を制御する医薬品を開発できれば、骨粗鬆症の予防・治療法への応用が期待されます。

研究論文(Publication)

木村 弥生 KIMURA Yayoi

横浜市立大学 先端医科学研究センター 教授

横浜市立大学大学院・総合理学研究科にて、平野 久教授に師事。理化学研究所 免疫・アレルギー科学総合研究センター(研究員)、横浜市立大学大学院・生命医科学研究科(特任助教)を経て、2014年10月より横浜市立大学先端医科学研究センター 准教授、2024年 教授(現職)。 質量分析装置を中心としたプロテオーム解析技術を用いて、タンパク質翻訳後修飾の網羅的な解析技術の開発や機能解析、癌や骨粗しょう症などの診断に有益な新規バイオマーカーの開発、それを応用した新たな診断法の開発などを行っています。

国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
有人宇宙技術部門 きぼう利用センター
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